第3話

お昼休み。


机を寄せ合って8人で昼ごはんを食べる。


デュラハン以外、誰が誰かよくわからない。


誰かが提供した話題を皆で広げてまた誰かが新たな話題を提供する。


こういうガヤガヤと話す場は嫌いではない。

むしろ好きだ。


しかし、どこかテレビでも観ているような感覚になってしまう。

そのせいで会話に入るのも相槌を打つのも忘れてボーっと眺めてしまうことがある。


チャイムが鳴って昼休みが終わる。


皆で机を元に戻して授業の準備をする。


「ねえ陸くん」


まことが振り返って話しかけてくる。


「みんなで話すのは苦手?」


突然のことで言葉に詰まった。


「え?いや、そんなことはないけど…」


しどろもどろ。

気の利いた台詞は出てこない。


そっか、と言ってまことは前を向く。


スマホは使っていなかった。

それなのに気を遣った苦笑いが見えた気がした。


午後の授業。


集中しようとしても気が散ってしまう。


ずっとさっきの問いかけにどう答えたら良かったのか。

どうしてあんなことを聞かれたのか。

もっと楽しそうにしておけば良かったのか。


些細なことをずっと気にしている。

ずっと正面の何もない後頭部をじっとみてしまう。


そのまま授業が終わる。


荷物を片付けているとホームルームが始まる。

なんのこともなく連絡のプリントが配られ終わる。


「ではまた明日、さようなら」


担任の先生の挨拶で教室内はまた騒がしくなる。


陸も帰り支度をする。


「デュラ子〜、あのさー」


相変わらず人気者のデュラハンは早速友達から話しかけられている。


楽しそうに話しながらデュラハンは帰っていく。


陸も荷物をまとめ帰路につく。


廊下に出る。


一歩一歩家に近づいていく。


一歩一歩胸の内のモヤモヤが増していく。


みんなで話をするのは嫌いじゃないよって言いたかった。

ちゃんと楽しいよって知って欲しかった。

口下手でごめんって謝りたかった。


また明日って言って欲しかった。

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