第40話

俺の前の席の佐々木健太は

あれから多少は元気にはなったが

笑っていても

どこか諦めのような

投げやりなような感じで

悲壮感が抜けない


その後、彼女の話題は避けて

当たり障りのない話をしてみてるが

愛想笑いはするものの

心ここに在らずのようだ


別れがよほどショックだったのだろう

2年の付き合いか...

俺とゆりはもう5年近くなるな


合コンがバレたりして

別れの危機もあったけど

俺はなんだかんだで浮気はしないし

別れる理由が無い


きっとこの先ゆり以上の人は現れない

恥ずかしい言い方だけど

運命の人なんだろう


なのに俺はなぜ今

葉月夜子の部屋に居るんだろう


「杉田は何飲む?」


「あっ何でも...イイです...」

「あはははっ何で敬語?」


葉月夜子は楽しそうに笑う


制服じゃない姿は

教室で見る葉月夜子とは別人のようで

俺は人見知りする子供のように緊張していた


「よし!ゲームしよっ」


葉月夜子が隣にどさっと雑に座った


ショートパンツから伸びる

長い足の指先には

薄いピンクのペディキュアが塗られていた


葉月さんは緊張してないようだ

男友達と遊ぶの慣れてるんだな…


「ただの男友達」と自分を位置付けた事で

俺は少し落ち着いて

純粋にゲームを楽しんだ


なのに俺はなぜ今

葉月夜子と裸でベッドに居るんだろう


夜子が寝返りをうつと

乱れた髪がサラリと俺の腕を撫でた

悪戯っぽくこちらを見て微笑む夜子


透き通るような頬に手を添えキスをした

罪悪感は無かった

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