第34話

「えっ別れたの?」

私は小さな声で大きく驚いた


「うん、卒業までは別れる事になった」

「あ、なるほどね」


菜々はつまらなさそうに

サンドイッチをパクッと食べた


お昼休みの教室は

程よくザワザワとしていて

平和な空気が流れている


「あと1年も無いし、すぐだよ」

「うんーでもなぁ...寂しい」


そう呟く菜々だったけれど

夜子から見ると寂しさは感じなかった


たぶん菜々と先生はこのまま終わるだろう

そんな予感がした


放課後


佐々木が

ちょっとだけ話させてと

人目につかない廊下の陰で待ち伏せていた


聞くまでこの待ち伏せが続く気がしたので

私は諦めて話を聞くことにした

「うん、で何?」


「俺、彼女と別れたよ」


私は言葉が出なかった


私と付き合うために?

こっちの気持ちも聞かないで?

どういう事...?


「だから...もう問題ないっていうか...」


その照れた顔は何なんだ

私は無性に腹が立ってきた


2年も付き合った彼女を簡単に捨てて

たった1回寝ただけの女を選ぶの?

ほんとバカすぎる


私は頭の中でため息をついて

儚げな少女のスイッチを入れた


「彼女に悪いから...それは絶対に出来ないよ...」


そう言って立ち去った


一途に愛されて

ぬくぬくと1番を味わっていた

顔も知らない佐々木の彼女に

嫉妬して佐々木を寝とったのに


何で今は佐々木の彼女が

可哀想だなんて思うんだろう

何で佐々木に腹が立つんだろう


自分で自分が分からない


佐々木も彼女も可哀想だ

私は最低な事をしている

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