第29話

葉月夜子の部屋で過ごした時間は

俺の今までの人生は何だったんだというくらい

刺激的な時間だった


杉田とこっそりタバコを吸ったり

彼女に内緒で合コンに参加してみたり

彼女と身体を重ねたり


刺激的だと思っていたこれまでの全てが

おままごとのように思えた


2年も付き合って

あんなに可愛いと思っていた彼女でさえ

ただの女の子にしか見えなくなっていた


俺は葉月夜子に夢中になっていた


あの葉月夜子の艶かしい身体を

俺は手に入れたんだ


杉田には言わなかった

軽はずみな事をして

夜子を失いたくなかった


しかし...

もしかして杉田も既に...


居てもたってもいられなくなった俺は

杉田に電話をしていた


一通りくだらないいつものやりとりをして

話を切り出した


「そういえばだいぶ前に遊ぶ約束してたじゃん」

俺はなるべく平常心で聞いた


「ん?誰?」

「...ん、葉月さん」


「あー、そんな事もあったな」

「どうなったの?」

俺は身体が熱くなったり

血の気が引いたりを繰り返し

ドキドキしていた


「何も無いよ、彼女に悪いしなあ」


いつも様に振る舞い明るく電話を切ると

俺はほっとして目を閉じた


あの日から俺と夜子とは

教室で目が合うことも無い


話しかけてもいない

何を考えているのか分からない


明日、夜子と話したい

俺は夜子にとって何なのか

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