第16話

女子校に通う彼女は

手作りのクッキーを抱えて

いつでも可愛く整えられた髪に

可愛くてふわふわした素材の服

白くて透き通るような手と足

時々よろける危なっかしさ


さあ抱きしめてと言わんばかりの

完成された女の子


会う度にドキドキするし

可愛いと思う


でも「私のどこが好き?」と聞かれた時

顔以外何も出てこなかった


「全部かな」とニコニコして誤魔化した


好きなのは間違いないのに

何かが違う気がしていた


家族にも友達にも

現状に不満は無い

家は裕福だし

学校も楽しい


可愛い彼女にも不満は無い

卒業して進学して就職して結婚して

きっとこの先も安定した人生が待ってる


待たれている


完成された未来が

なんの不安もない未来が

なんの努力もなく出来上がる


自分の予想どうりの世界が続く


佐々木健太はぼんやりと

口を開けて机を眺めていた


廊下でじゃれあっていた

菜々と夜子の笑い声に目だけを動かした


こんなに近い距離に居るのに

違う世界のように見える


何かが足りない


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