第14話

「ねー杉田って彼女といつも何してるの?」


「えっ何を急に」


昼食を終え

ざわざわする教室の中

隣の席の葉月夜子に

突然尋ねられて背筋をゆっくり伸ばした俺は

教室の天井に目を向けて

いつもの彼女との時間を思い出した


「彼女がいつも俺の部屋に来て...」

「ほうほう」

「イチャイチャ...みたいな感じ?」

「それで?」

「...」


中学時代からの彼女は

当たり前のように家に来て

当たり前のように俺の隣でゴロゴロして

当たり前のようにキスをして

身体を求め合う


気も使わなくていいし

居心地がいい


「デートとかしないの?」

「デート...たまにカラオケとか」

「ふーん...いい彼女だねー」


そう言うと葉月夜子は向きを変えて次の授業の準備を始めた


いい彼女...という言葉が杉田の頭に残る


都合のいい彼女

自分にとって都合のいい彼女


なんだか胸がさわさわとし始めたが

葉月の突然の問いは何を意味するのか考えた


もしかして葉月さんの事を聞いて欲しいのかな


「そういう葉月さんは?新田先輩とどうよ?」

「別れた。他に彼女出来たみたい。」


あまりにあっさりと淡々と言うので

自分の耳を疑った

「...え」

「やっぱ年の差あると世界違って難しいね。杉田はずっと彼女を大事にしてて偉いね」


吹っ切れたような

吹っ切れてないような顔で

葉月夜子は寂しげに笑って言った


言葉が出なかった俺の心を見透かしたのか

「ずっと大事にしなよー」と言い残すと

葉月は席を立って文月菜々の所に行った


俺の知らない世界を歩いて傷ついた夜子が

やたらと大人びて見えて

ドキドキした


が、すぐに

彼女の顔を思い出して

次の誕生日には外でデートしようなどと考えた

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