第7話
風になびくカーテンの裾に
頭をパタパタと叩かれて
つっぷしていた机からむくっと起き上がる
黒縁メガネをかけて
教科書とノートを出すと
移動教室の準備を始めた
少し離れた席の佐々木と杉田は
文月さんの可愛さはヤバすぎる
と放心状態で話している
魂でも抜かれたか
僕は少し肩を伸ばして
教科書を雑に束ねて持つと
廊下へ出た
1人は気楽だ
誰の顔色も伺うこと無く
偽りの笑顔をする事も無く過ごせる
そんな事に費やす
時間も言葉も脳みそも
卒業をして関係の無い人になれば
無駄でしかない
誰にも関わらないで1日を終える事に
何よりも達成感を感じる
「あー!次、移動教室だ!ヤバっ」
慌てて教室に戻ってきた
文月菜々と葉月夜子と
バタバタと廊下ですれ違う
無色無臭だった世界に
花のようなクラクラする香りが舞い込み
その風は一瞬だけ世界を綺麗に色づけて
消えた
「花でも生えてるのかよ」
落ちそうなノートを整えて
黒縁メガネを少しあげると
振り返った
教室に入ろうとしている
笑顔の菜々が
ふっとこっちを見て
すぐに目を逸らし
教室に吸い込まれて消えた
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