第2話 長友華凛という名前を付けた人


私の名前は長友華凛という。

凛とした華の様であれ。

そういう意味で付けられた。

だけど名前を付けたのは私じゃない。

歳が離れた私にとってはお姉ちゃんが付けた。


だけど今、一家とかお姉ちゃんは離散しており。

何処に居るのかすらも分からない。

私は...お姉ちゃんに会いたいと思っている。

でも手掛かりは掴めていない。


それから私は何よりも家族が嫌いだ。

父親は一家を洗脳している。

家族に会いたくないからワザと迷惑を掛けない様にしている部分もある。

だからこそ会ってない部分もある。


私はそんな事を考えながら勉強をする。

それから横に有るライトに照らされた写真立てを見る。

親が遮ってしまった為に名前も聞けなかった幼稚園時代の彼の写真だ。

たった一枚の...この2人で写っている写真。

これ以外は記録が無い。


うっすらした記憶しか無いが彼はとても優しかったと思う。

眼鏡でおさげの私なんかに構ってくれて...彼はとても優しかった。

私にとっては初恋に近い感覚があったと思う。

だけど今はそう思っているか...いや。

思っている。


「また...彼に会ったら謝ろう。全てを。そして反省だ」


そう言いながら私は近視が治った目に触れる。

そして髪の毛に触れる。

実は私は近視が小学校の時に全部治った。

それから視力は1.5ある。

おさげ髪も止め私は...花蜜学園というお嬢様場所に通っている。


「...」


成績優秀。

容姿端麗。

そして体育も出来る様になった。

だけど満たされない思いがあったりする。

私は...彼に会いたい。


「まあだけど」


そう呟きながら私は天井を見上げる。

人生は100年もある。

いつかチャンスは巡って来るだろう。

そう思いながら私は趣味のぬいぐるみを見る。

集めるのが趣味だ。

そしてそのままモフモフしてみた。



俺は復讐計画を立てる事にした。

段階的に3段階。

先ず第一にアイツと別れる。

第二に和彦と決別。

第三に思いっきりに復讐。

そういう感じでプランを立ててみる。


まあ言っても俺はあくまで犯罪に長けている人間じゃない。

アイツらを殺すのも納得がいかないから。

こうして苦しめよう。

そう思いながら俺は「...捕まる可能性があるなら...」と将来に関しても考えていく。

設計をしていく。


するとインターフォンがまた鳴った。

俺は「?」を浮かべて「誰ですか?」と問う。

「私です。長友です」と声がした。

その言葉に「!」となって大慌てで復讐を書いた紙を直す。

それからドアを開ける。


「こんにちは」

「ああ。長友さん。どうしたんだ?」

「いえ。...実は田舎のおばちゃんからじゃがいもを貰って...肉じゃが作ってみました」

「...そうなんだ。...料理も出来るんだね」

「はい。...それでおすそ分けで...」

「いつも有難う。長友さん」


「私はこういうのが好きなので構いません」とニコッとする。

俺はその姿を(本当に天使だな)と思いながら見る。

そしてお鍋をゆっくり受け取りながら「何もお礼が出来ない。すまないな。この部屋には何もないから」と苦笑する。

長友さんは「気にしないで下さい。私が...好きでやっているだけですよ」と笑顔になってから俺を見る。


「...そのうち、お礼をするから」

「有難う御座います。でもそれは必要は無いですよ。本当に」

「...そうはいかない。俺は長友さんに世話になってばかりだからな。任せろ」

「...!」

「...どうした?」


長友さんは俺を見たまま硬直する。

それから俺にかぁっと赤面していく。

え?俺なんか変な事言ったかな。

思いながら俺は長友さんに「どうした?」と聞いてみる。

すると長友さんは「い、いえ。何でもないです。...すいません。昔の面影...じゃなかった!すいません」と言う。

え?


「...いや。何でもないです。...じゃ、じゃあお料理で忙しいので失礼しますね」

「あ、ああ」


ペコペコと水飲み人形の様に謝りながらそのまま去って行く長友さん。

後に残された俺は「???」を浮かべながら彼女が去って行った方向を見ていた。

そして俺は鍋を見る。


とっても可愛らしい鍋だった。

何か特殊な鍋の様だがキチンと返さないと。

そう思いながら俺は鍋を台所に運ぶ。

それから中を開けてみる。


「...!」


そこにはほろほろのじゃがいも、白滝、解けている玉ねぎ、甘そうなニンジン、出汁がしみ込んでいる牛肉などが入っており。

めちゃくちゃに美味そうだった。


正直、腹は空いてなかったがそのまま鍋の中身を一滴も残さず食うレベルの美味さ。

塩分が上がるかもだけど構わない。

美味い。


何だこれ、マジに神の味だと思う。

これには流石にご飯が欲しかった感じだ。

白米を用意してなかった。

悔しい感じである。

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