お前を寝取ったのは俺の兄だった...だから俺はお前らに復讐してから幸せになる(超改稿版)

アキノリ@pokkey11.1

第一章 END

1、絶望の始まり

第1話 歪む感情と差す日差し

そもそも俺、用場徹(ようばとおる)はそこまで頭が良い奴では無い。

そんな頭の回転も良く無ければ...実際、運動音痴だ。

だからこそ俺は付き合っている彼女を兄に取られたのだろうとは思う。


実家に学校から帰って来るなり俺の彼女である筈の里島めぐる(さとしまめぐる)と俺の兄の用場和彦(ようばかずひこ)が性行為をしていた。

独り暮らしの用場和彦が実家に...帰って来ている時点でおかしいとは思ったが。

まさかそんな真似をしているとは思わなかった。


何が起こっているか理解に苦しんだ。

正直喘ぎ声を聞いてからというもの思考の全てが今を否定する。

五感の全てを否定する。

俺は短髪の髪を触りながら怒りと憎悪を膨らませてからそのまま踵を返した。

胸糞が悪い。

吐き気がする。



その事件から1週間が経過した。

俺は近所にある賃貸アパートに引っ越した。

そこは築40年という古ぼけたアパートの清水壮。

まあそんな事はどうでも良い。

俺はこの場所で再起するつもりで居た。


あのクソ馬鹿達を倒す為に。

血が滾って仕方が無い。

兄もそうだが彼女もぶっ殺したい。

今直ぐにでも。


だけど俺はそんな屑どもの情報をネット上に公開したりはしない。

じわじわと全てを苦しめていきたい。

正直、実家でそのまま生活した方が良かったかもしれないが。


今回の件を考えて...多分。

アイツ。

和彦は俺をおちょくっている。

だから俺は(そんな底辺の考えに乗るかよ)と思いながらそのまま家を出た。

それに近所に高校がある。

近くなったしな。


「...」


そう思いながら俺は壁を一回殴ってからそのまま。

ちゃぶ台、座布団、汚い台所。

それから古いテレビを見た。

独り暮らし、か。

別の意味で不安しか無いが...だけどあの屑を仕留める為に。

我慢しないと。


思いながら俺は部屋に残されている(思い出)と書かれた段ボールを見ていると。

インターフォンが鳴った。

俺はまさかの事に大慌てになる。

そしてインターフォンに駆け寄ってから「誰だ」と聞いてみる。

すると「お隣の者です」と声がした。


「...!」


俺は慌ててノブを捻ってドアを開ける。

するとそこに可愛らしい姿の少女が立っていた。

髪はゆるふわウェーブ。

黒の髪の毛だが...滅茶苦茶に似合っている。


そしてスタイルも抜群で顔立ちも目鼻立ちがかなり整っている。

美少女。

究極の美少女だった。

俺は赤くなってから見惚れていると彼女はクスッと笑った。


「おすそ分けに来ました」


と言いながら俺を見てくる。

俺はその言葉を受けてからようやっと現実に帰って来る。

それから「あ、ああ。すまない」と言いながら頭を下げる。


「えっと。この前、入居の挨拶をしに来ましたよね。そのお礼です」

「あ、ああ。そうなんだ...っていうかそんなの良いのに」

「いえいえ」

「...長友さん、だよね?」

「はい。長友華凛(ながともかりん)といいます」


その名前を聞いてから俺は長友さんを見る。

やはり究極の美少女だ。

アイツと違う。

そう思いながら俺は紙袋に入ったお菓子を見てから長友さんにまた頭を下げる。


「有難う。君の優しさのお陰で...何とか保てそうだ」

「...え?保て...?」

「あ、いや。こっちの話だよ。ゴメンな」


それから俺は柔和になってから彼女を見る。

すると彼女は何かを見ていた。

俺の手を見ている。

よく見ると拳が出血していた。


「その。どうされたんですか?」

「い、いや。気にするな。ちょっと武道の練習、みたいな事をしていた」

「あ、そうなんですね...あ。私、今カットバン持ってます。付けますね」


そう言いながら彼女は俺の手を優しく握る。

俺はまさかの行動にビックリして汗が噴き出す。

アイツ以外の女の子に手を触られたのは滅茶苦茶、久々だった。

俺は真っ赤になる。


「はい。これで完成です...あれ?どうされました?」

「な、何でもない。すまない」


俺は恥じらいを隠す為に手を引っ込める。

そこには可愛らしいキャラクターもののカットバンが貼られている。

それを確認してから前を見ると長友さんは恥じらっていた。

それからモジモジする。


「こ、子供のころから使っている絆創膏です...」

「長友さんは趣味が良いね」

「...え?本当ですか?そう言われたのは...初...あ。違います。あの男の子以来ですね」

「え?あの男の子?」

「あ...い、いえ!こちらの話です!」

「???」


赤くなる長友さん。

しかしそうか。

長友さんは好きな人が居るんだな。

ちょっと残念だが仕方が無い。

運命だろう。


「...ねえ。長友さん」

「...はい」

「貴方がもし...憎い人が家族に居たらどうする?貴方なら復讐するかな」

「...え?」


何を聞いているんだ俺は。

そう思いながら俺は首を横に振る。

それから直ぐに「何でもない」と言った。

そして笑顔になる。

長友さんは「そうですか?」となってから顎から手を離す。


「...じゃあ立ち話もなんだ。解散しようか」

「そうですね...あ。その。用場さんですよね?」

「ああ。自己紹介がまだだったな。俺は用場徹だ。宜しくね」

「はい。是非とも。...それで用場さん。先程のお言葉ですが」

「...あ。ああ。復讐の?」

「はい。私だったら何発か平手打ちはします」


何故か冷めた言い方をする長友さん。

俺は「?」を浮かべながら彼女を見ていると彼女は数秒してから「すいません。忘れて下さい」と笑顔になった。

そしてそのまま踵を返す。


「...では。失礼します」


それから彼女は柔和に手を振る。

ドアノブを握ってからぱたんと閉めた。

残された俺は紙袋を見る。

中身と外側に書かれているものは違うものだった。

だけど。


心が暖まる感じがした。


しかしあの冷めた真顔は...何だったんだろう。

そう考えてしまうが。

彼女の事だ。

触れたらいけない気がする。

忘れよう。

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