第12話 まだこれは通天閣です

 玉橋さんのレベル上げは順調だ。

 

「どう?自信付いてきた?」


「えっと、多少は……」


 俺が敵を一通り行動不能にした後で玉橋さんがトドメを刺していく。

 レベル上げの方法が所謂パワーレベリングなので成長スピードも結構早そうだ。

 

「モンスターを倒すペースが前のパーティーの何倍も早いですし、江口君はやっぱり凄いです」


「いやあそれほどでも」

 

 玉橋さんがキラキラした目をしながらそんな事を言ってくる。

 女の子に褒められると思わずデレデレしてしまう。

 

 それにしても、他のパーティーのペースは結構控えめなんだね。

 それともやっぱり女の子オンリーだったからだろうか?

 俺はボッチソロでしかダンジョンに入っていなかったから他所様の事情に疎い。


 ともかくだ、玉橋さんは身体能力が徐々に上がってきたのか戦闘にも参加できるようになってきた。

 もちろん俺の『スケベ』スキルの効果もあるとは思う。

 ただ見た感じ、俺が受けるスキルの効果量よりも玉橋さんの方が数段落ちているようなんだよね。

 これはスキルの仕様なのかもしれない。

 それを踏まえると、やはり玉橋さんは成長してるんだろうね。

 剣を振る様もしっかりとしてきている。

 敵が残り1体になった時、俺が相手を引き付けている間に後ろから攻撃もしてくれている。

 たまに運動音痴な面を見せる事はまだあるけれど、これは数をこなしていく内に良くなっていくだろう。

 多分ね。


 ただし。


「やっぱり玉橋さんは武器を変えた方がいいかも」


「そう、ですね。剣で戦うのはちょっぴり怖いです……」

 

 剣といえば対モンスター戦闘における定番武器というイメージがあるけど、実はあんまり初心者向きではない。

 敵との距離を詰めなければ攻撃出来ないし、剣を振って敵を斬るにはある程度の技術が必要だ。

 それなりの練度が必要になってくる。

 

 初心者には距離を取って戦えて、さほど技術の要らない武器がオススメだ。 

 近接武器なら槍。

 あとは遠距離武器か。

 弓は使いこなすのが難しいし、威力を出すには付与魔法なんかを使わなきゃいけないから却下。

 銃はライセンスを取れば使うことができるけど、すぐには無理だ。

 攻撃系の魔法が使えるようになったら長杖で良いんだろうけど。


「そういえば江口君はなぜメイスを使っているんですか?その、他ではあまり……」


「ああ、使ってる人少ないよね。ま、理由は単純だよ」


「そうなんですか?」


「うん。ただ敵を殴るだけで済むからね。剣なんかは血や脂肪で切れ味がすぐに落ちるし、刃こぼれの心配もあるから」


「なるほど……」


 玉橋さんが納得したような表情で頷く。


「コホン、これは一応姉の受け売りなんだ。学校入る前にそう教えられて、それを実践しているだけだよ」


「あ、江口君はお姉さんがいらっしゃるんですね」


「うん。まあ血が繋がってない、義理の姉だけどね」


 義理ではあるのだが、姉にはかなり気に入られてると思う。

 小さい頃は一緒にお風呂へ入ったり、同じベッド寝たり。

 昔からだいぶ傍若無人で、常に圧が強いけど。

 その辺は他所の家庭の実姉弟でも同じ事だろうし、そう考えれば実の姉弟同然の良い関係を築けていると思う。

 

「姉さんは何年も探索者をやってるからアドバイスをいくつか貰ってるんだ」


「やっぱり経験者のアドバイスに沿うと上手く行きますか?」


「だいぶね」


 実際はアドバイスというよりほぼである。

 言われた通りにしないと後が怖いもん。

 姉と弟のパワーバランスなんてそんなもんである。


「江口君の、お姉さん。私もいつかご挨拶に伺わないと……!」


「うん?」


 何やら玉橋さんが真剣な表情で独り言を呟いているがよく聞こえない。

 まあいいか。


 さて、そろそろ良い頃合いになってきたかな。


「ところで玉橋さん」


「はい、なんでしょう?」


「ここらでいっちょ階層ボスに挑んでみない?」


 今日のダンジョン探索の締めに入ろうか。





 ――――――――





 ダンジョンの内部は幾つもの階層に分かれている。

 先の階層に進む為には『ポータル』と呼ばれる入口を探し出してそれに入らなければいけない。

 しかしポータルには近づくのも一苦労だ。


 ダンジョンの内部は、通称『魔力』と呼ばれる神秘エネルギーが多く漂っている。

 一応ダンジョンの外、つまり俺達の住む一般世界にも魔力は存在しているらしいがダンジョンと比べると数分の一だとか。

 あとは俺達人間の体内にもある程度存在している。

 ちなみに魔力は魔法やスキルを発動する為のエネルギー源でもある。

 まあその話は置いておくとして。

 

 ポータルの付近は魔力の濃度が高くなる傾向にあるらしい。

 どうもポータル自体が魔力を放出しているとかなんとか。

 

 そして、その魔力に吸い寄せられるようにモンスターはポータルへと集まってくる。

 どうやら高濃度の魔力とはモンスターにとっては本能的に求めてしまう抗いがたいモノらしい。

 そしてポータルに近づき居座るモンスターの中には、その高濃度の魔力の影響を受けて強力な個体へと成長するヤツが必ず発生するのだ。

 それがいわゆる階層ボス。

 

 今いる中央ダンジョンの第1階層のボスは、コボルトの上位種だ。

 この第1階層自体、コボルトしか居ないからね。


「で、この先に階層ボスの上位コボルトがいるというわけ」


「あうっ、緊張します……」


 俺達はテクテク歩いてポータル、そして階層ボスの居る場所の近くまで来た。

 一応俺はソロで何度か倒した事があるので、まあ慣れたものである。


 他の生徒が居るかもな、とも思ったがその気配はない。

 この中央ダンジョンは階層ひとつひとつの広さが尋常じゃないくらいあるらしいし、ポータルもあちらこちらに複数存在しているからね。


 さて、これからいよいよ階層ボスに挑むわけだが。


 玉橋さんが何も言わずに、頬を上気させながら上目遣いで肌と下着を見せてくる。

 ……この子用意が良すぎやありませんかね。


 俺がそれを目でたっぷりと堪能していると、玉橋さんが不意に一言。


「ぼ、ボス戦ですし、そのっ。……触りますか?」


「さ、触るっ!?いいの!?」


「はい、お触りOKです!」


 なんつー提案だ。

 確かに今までの経験上、過激なえっち行為ほどスキル発動時の効果も高くなる傾向にあった。

 ボス戦前だもんね?

 仕方がないよね?

 

 俺は吸い寄せられるように玉橋さんのブラジャーに包まれた豊満なお乳へと両手を伸ばす。

 で、触るか触らないかのところでピタリと止まった。

 玉橋さんがコテンと首をかしげるたのが可愛らしい。


 ……これ、触ってしまうといよいよ股間がバッキバキのフル◯ッキになって戦い辛そうだよな。


 我慢!ガマンだ杉男!

 

 俺は鋼の意思で両手を引いた。


「え、さ、触らないんですか?」


 玉橋さんが戸惑うように聞いてくる。

 まさか俺が触らないという選択肢を取る事を想像していなかったようだ。

 ある意味で信頼されているようで。


「コホン。玉橋さん。非常に魅力的な提案だけども、その。魅力的過ぎて色々問題がありまして……」


「問題、ですか」


「その、俺の一部が喜び過ぎちゃう可能性がありまして。戦闘に支障が……」


「一部が喜ぶ……?あっ。なるほど!」


 そういうと玉橋さんの目線が下へと移動する。

 そして一言。


「もう大変喜んでもらってるようですケド……?」


 まあ仰る通りで。

 だがしかし。

 俺はキメ顔で玉橋さんに驚愕の事実を告げる。


「あまり俺の全力を舐めない方がいい。これが通天閣108メートルだとしたら、本気モードはブルジュ・ハリファ約830メートルだからね」


 「せ、世界一クラス、ですか」

 

 玉橋さんもびっくり顔である。

 スキル『デカチ*ポ』は伊達じゃないのだ。


「もちろん触れないのは残念だけど……」


「残念……。わ、わかりましたっ。戦闘が終わったら、じっくり触ってくださいっ!」


「え、ま、マジで?」


「はい。それなら、その、おっきくなっちゃっても問題ないですよね?」


 ……うん、まあそれなら問題はないのだが。

 そもそも階層ボス戦が終わったら『スケベ』スキルを発動する必要が無いわけで……。


 戦闘後のお触りはマジでただの性欲だけに基づいたご褒美エロ行為なのですが。

 

 これは天然なのか、確信犯なのか。

 ま、いいか。

 どのくらい、触らせてくれるのだろう。

 ガッツリ揉んでしまっても問題ナッシングなのだろうか?

 生チチはさすがにダメかなぁ……?

 

 ニコニコしながら衣服を直す玉橋さんを眺めながら、俺は早くも戦闘後のご褒美タイムに思いを馳せていた。

 

 

 

 



――――――――――

 ※玉橋さんは江口君が望むなら戦闘やスキル発動とか関係無しにお触りOKな天然モノの江口君全肯定ヒロインです。


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