第9話 男の人はこういうのが好きだってネットに書いてありました!

 とりあえずコボルトの魔結石は回収しておく。

 大量なので中々の重労働だ。

 こんな大変な作業ではあるが、玉橋さんもナイフ片手に頑張って手伝ってくれた。


 そこから一息付く間もなく、玉橋さんと一緒にダンジョンを出た。

 この生徒用の中央ダンジョンには門限が定められているからね。

 それはともかく、ここで玉橋さんの素敵な下着ともしばしのお別れである。

 ここは『安全ダンジョン』なので、ダンジョンから出るタイミングで身体の傷や装備の破損等は元通りになる。

 玉橋さんの汚れてしまったジャージもキレイになっていた。

 さすがに玉橋さんをお漏らしした姿で出歩かせる訳にはいかないので助かる仕様だ。


 ダンジョンを出てしばらくしてから、玉橋さんがおずおずといった感じで話しかけてきた。


「あの、江口君。連絡先を交換してもよろしいでしょうか……?」


「連絡先?ああ、そうだね」


 玉橋さんとは今後パーティーを組んでダンジョンを攻略していく。

 連絡先の交換は必須だ。

 ということで玉橋さんと連絡先を交換する。


「えへへ、江口君の連絡先ゲット……!」


 玉橋さんが何やらニマニマと普段は見せないような笑い方をしているが、なんだろう?


 まあいいやと気にせず自分のスマホを見てみれば、連絡先一覧の中にはばっちりと「玉橋 鈴香」の4文字が増えている。

 そういえば玉橋さんの下の名前は鈴香っていうのか。

 隣の席なのに全然知らなかった。

 

 しかしまさか、自分のスマホに女の子の連絡先が増えるなんて。

 感動もひとしおです。



 

 ――――――――――




 玉橋さんと別れの挨拶をしてから帰宅の途に着いた。

 帰宅といっても俺は寮生なので、帰る先は学校からほど近い男子寮だ。

 ちなみに玉橋さんも女子寮暮らしの寮生らしい。

 

 寮はそこそこ金がかかってそうな外観の建物で、エントランスは開放感に溢れて広々としている。

 設備としては談話室や大型ホテル並みの大浴場、ちょっとしたスポーツジムまで揃っていてとても便利。

 

 この寮は基本2人部屋なのだが、なんのめぐり合わせか俺は相方がおらず1人で使っている。

 最初の頃は羨ましいなんて良く言われたが、今はそもそも話しかけてくる人間が居ないのでそういう事は無くなった。


「ふわあー……、疲れたなぁ……」


 自室へ戻った途端に疲れがどっと出てきた。

 やはり徘徊者、あの強敵との戦闘でだいぶ疲労が溜まっていたらしい。

 今日は大浴場へは行かずに、備え付けのシャワールームで済まそう。


 シャワー、食堂で夕飯、部屋に戻って歯磨き、などを順番に終わらせてさぁ寝るかと思ったところでスマホに通知が来る。

 誰かからのメッセージだ。


《江口君、今日は本当にありがとうございました》


 玉橋さんからだ。

 俺は短く《どういたしまして》と返す。

 コミュ強ならここで気の利いた言葉の1つや2つでも送るのだろうけど俺には無理ゲーだ。


《明日から連休ですけど、ダンジョンに行きますか?》


 そういえば明日からゴールデンウィークか。

 スキルが発現してからの1週間、精神的に色々ありすぎてすっかり頭から抜けていた。


《いいよ。何時集合にする?》


《混むと大変なので、9時くらいにしませんか?》


《OK。9時に中央ダンジョン前ね》


 特別感のない、至ってシンプルなやりとり。

 俺もそうだが、たぶん玉橋さんも異性とのこういうやり取りに慣れていないのだろう。

 お互い陰キャっぽいからなぁ。

 さて、おやすみを言って明日に備えてそろそろ寝ようと思ったが玉橋さんはまだ何かあるらしい。

 いいよいいよ、美少女の為なら睡眠なんていくらでも削れます。


《あの、少しお時間を頂いてもよろしいですか?》


《いいよー》


《ありがとうございます。長くはかかりませんので》


 一体なんなんだろう。

 コップに注いだ水を飲みながら玉橋さんのメッセージを待つ。


 ピロン。


「お、きたきた」


 通知音がしたのでスマホを手に取り内容を確認する。


「画像ファイル?えーと……、ブフッッッ!?」


 俺は口に含んだ水を盛大に吹いた。

 玉橋さんから送られて来たのは写真、しかもいわゆるだった。

 ただの自撮りが送られて来るだけでもビックリだが、これはただの自撮りではなかった。


 場所は部屋に備え付けのシャワールームだろうか、男子寮と女子寮で内装は同じらしい。

 って、そんな事今はどうでもいい。

 これはシャワールームの鏡に写った自分を撮った写真のようだった。

 

 まず目に付くのは肌色、肌色、アンド肌色。

 そして蠱惑的な曲線美。

 両胸の先はかろうじて腕と手で隠れてはいるし局部はうまい具合でスマホに隠れてはいるが、言い換えれば隠れている部分はそこだけである。

 つまるところ、女の子の全裸の自撮りが送られてきたのである。


「ど、どどどどどういう事だ?」


 あまりの出来事に動揺を隠せない。


「落ち着け……落ち着け……!」


 深呼吸をしてクールダウン。

 少し冷静さを取り戻したところで、ふと疑問を持った。


「こ、これは、玉橋さん自身なのだろうか……?」


 写っているのは口元から下の部分。

 顔のほとんどは見えていないのでパッと見では個人は特定できない。

 もしかしたら、いや多分違うと思うけど、万が一の確率でどこかネットとかで拾った画像とかかもしれない。

 いやそれでもこんな画像を送ってくる意図は不明なのだが、とりあえずつぶさに眺めて検証しなければ。

 もちろん決してやましい気持ちなどこれっぽっちもない。


 とりあえずまずは胸の大きさから見ていこうか。


「デッッッッ……か」


 重力に逆らい綺麗な形を保っている若々しい美巨乳、いや美爆乳か、とにかく素敵なおっぱい。

 何カップだろうか?

 推定でGとかHくらい、もしくはそれ以上あるかもしれん。

 かくいう俺は童貞なので女の子の胸の事情はよく分からないし、比較対象はグラビアアイドルとかになってしまうのだが。

 とにかくたわわでおっきいお胸だ。

 シャワーを浴びた直後なのだろうか、張りのある肌が多数の水滴を弾いていて美しい。

 

 他も見て検証していこう。

 まずは整った顎のライン。

 日焼け跡やシミ1つ無い首筋。

 小さな肩幅。

 大きな胸にを浮き立たせる細めの胴。

 キュッとくびれたウェスト。

 思わずつっつきたくなるような可愛いおへそ。

 魅惑的な腰回り。

 程よい肉付きで形の良いヒップ。

 若干むちっとした素敵な肉付きの太もも。

 そしてバッキバキにフルボ◯キした俺の股間。


 ……最後の描写は余計だが、とにかく完璧で美しく、そしてとんでもなくえっどい女の子の裸がそこにはあった。


 これやっぱり玉橋さんじゃね?

 ぜったいそうじゃね?

 というかそうであって欲しい。

 クラスメイトと思わしき女体に希望を持たせて欲しい。


 画像を舐め回すように見ていて、ふと気が付く。

 首にある2つの並んだホクロ。

 

「あっ、これ。玉橋さんにもあったヤツだ……」


 どうみても本人です、本当にありがとうございました。


 気が付くと、全身に力が漲っていた。

 いつの間にか『スケベ』スキルが発動していたらしい。

 そしてそのタイミングでスマホの通知音が鳴る。


《どうですか?》


 いや、どうですかって。

 どう答えればいいんだよ。

 素直に答えたらガチのセクハラ案件である。

 いや、ちょっと待て。

 異性に急に裸の自撮りを送る玉橋さんの方がセクハラでは?

 最近の世の中では女性から男性へのセクハラも問題視されていると聞くし。

 

 って、違う違う。

 脱線仕掛けた思考を戻そう。

 

 まず、なぜこんな自撮りを送ってきたのかだ。

 「私をえっちな目で見てください……」みたいな意味だろうか。

 いや、でもそれは流石に……?

 確かにパーティーを組んだし、今日は色々なトラブルを一緒に乗り越えた。

 だがまだまだ親密であるとは言えない異性のクラスメイトにこんな画像を送るだろうか?

 しかも俺はエロスキル持ちでクラスからはハブられている男だし……あっ。

『スケベ』スキル絡みか?

 そうとしか考えられない。

 そう考えると彼女の意図みたいなモノも見えてくる気がする。

 ならもっとこう彼女の為になるような。

 率直な意見を送って今後に活かしてもらった方がいいのではないだろうか?

 よし。


《ドスケベえっちTHEセックス濃いのが沢山出そうもう赤……》


 いやいやいや!

 さすがにこれは良くないだろう!

 送りかけた文面を慌てて消す。

 今日ダンジョン内で何かとんでもない事を玉橋さんに言った気がするがそれは置いておく。

 ここは、シンプルに返しておこう。


《とってもえっちです。『スケベ』も発動しました》


 こういう感じの返事が正解なのではないだろうか?

 とりあえず送ってみよう。

 こっちが送ると秒で既読が付いた。

 そして返事も早い。


《良かったです!》


 どうやら正解だったらしい。

 その後もメッセージが続く。


《その、他の人に見せるとかしなければご自由にして頂いて構わないです》


 ほう?

 ほうほうほう?

 もちろん他人に見せるなんて絶対にしないが。

 しかし、ご自由にして頂いて?

 それはどういう意味かな?(ゲス顔)

 沢山使よ?

 ……まあそれは置いておいて、とにかく彼女の真意はなんなんだろうな?


《どうして送ったの?》


 また既読はすぐに付いた。

 返事もだ。




《男の人はこういうのが好きだってネットに書いてありました!》




 玉橋さんには今度しっかりネットリテラシーについて学んでもらおうか。


 その後2人で《おやすみなさい》を送り合ってメッセージのやり取りは終わった。

 明日に備えてすぐに寝なきゃだからね。











 本当にすぐに寝たのかだって?


 濃いのが沢山(以下略

 






 ――――――――――

※設定の変更により玉橋さんの下の名前を変更しました。


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