第4話 安心してください、脱いでますよ

「な、なんとか、しのげた……」


 俺は息を切らしながら、メイスを地面に置いた。

 コボルトを倒すことその数約50匹。

 いくつもの群れが波状攻撃のように次から次へと襲いかかって来るとは思わないった。

 たぶん、玉橋さんの素敵な香りにおびき寄せられたんだろうなぁ。

 コボルト共はどいつもこいつも涎を垂らしたうえ、鼻の下を伸ばしたような下品な顔をしていやがった。

 まったく、とんでもない奴らである。

 そんな奴らも、全員ダンジョンの地面の上でくたばっているのだが。

 辺り一面、コボルト共が死屍累々である。


「え、江口君っ。だ、大丈夫ですか?」


「ダイジョーブダイジョーブ、全然ヘーキヘーキ」


「ほ、本当に……?」


 いや、本当は全然平気じゃない。

 めちゃくちゃ疲れたし、コボルトの攻撃を何度か食らってるから身体のあちこちが痛い。

 でも女の子の前では強がってカッコつけるないとな!


「ピンピンしてるよ、ほら、ピンピン!」


 無理に虚勢を張って無事を装うが、玉橋さんにはお見通しだったようだ。


「ほ、ほんっとうにごめんなさいっ!コボルトを集めてしまったの、私のせいですよね……」


「いやいや、そんなことは……無いよ?」


 そんなことはとってもあるのだが、口には出さない。

 しょぼくれている玉橋さんを一体どうやってフォローしたもんかと考えていると、彼女はいつの間にか覚悟を決めたようなキリッとした表情をしていた。

 いったいなんなんだ。


「安心してください!もう大丈夫です!」


「……何が?」


「脱ぎますから!」


「そっかぁ、それはひと安心……え?」


 俺の脳みそが玉橋さんの言葉の意味を処理しきる前に、彼女は行動に移していた。


 玉橋さんは自分のズボンに手を掛けると、えいやといっきにズリ下ろす。

 そしてそのまま両足を引き抜くと、汚れたズボンをポイッと地面に投げ捨てた。


「こ、これで、万事解決ですっ!」


 見かけによらず、ずいぶんと思い切りの良い娘である。


「ど、どうでしょうか……?」

 

 玉橋さんの腰回りは淡い水色の可愛らしいパンツひとつだけになっていた。

 シミひとつない肌、ほど良い肉付きの太もも、ぷりっと張りがあって形の良い尻のシルエット。

 すべてがさらけ出されていた。

 俺の目線は釘付けである。

 正直めちゃくちゃ興奮する。

 俺の無遠慮な視線を感じて、玉橋さんがモジモジしながら恥じらった。


「あうっ……」


「ふむ……」

 

 これは確かにジャストアイディア。

 臭いの原因となっていたズボンは無くなった。

 もっとも、パンツもおしっこで汚れてはいるが、ズボンを履いた状態と比べたら臭いはマシになっただろう。

 そのかわり、玉橋さんは大事なナニカを失っていそうだが。


「あ、あの、あんまり見られると、さすがに……」


 顔を真っ赤にする玉橋さん。


「ご、ごめん」


 口ではそんな事を言いつつ、玉橋さんの下半身から視線を外せない俺。

 そんな俺の様子から玉橋さんは何を勘違いしたのか、涙目になって、絞り出すように声を発した。


「そ、その、下着は、流石にっ。ゆるしてください……!」


「う、うん。それは、もちろん」


 パンツを脱いでしまったら、そりゃあもう大事なところが丸見えである。

 だが現状でも十分……。

 液体で濡れた玉橋さんの下着はべたっと肌に張り付いている。

 パンツのクロッチの、その背後にあるであろう、うら若き乙女が隠すべき最も大切な部分のシルエットが。

 というかよくよく見てみるとシルエットどころじゃない。

 濡れているせいで布地が、その、透けていて。

 淡い茂みやら、ぷにっとした大変なモノが俺の目にもバッチリ……。

 こいつはヤヴァい。


 ごくりっ。


 思わずツバを飲み込んだ。

 そんな俺を目の前にしているのに、なぜか玉橋さんの両手は自分の下着を隠していない。

 なぜか玉橋さんは自分の目を覆っていた。


「え、江口君っ。その、江口君の江口君が……」


 うん?

 オレのオレがなんだって?

 なんとなく自分の下半身に目を向けると、大きくテントを張った股間がデーンと自己主張をしていた。

 さすが、スキル『デカ*ンポ』。


「おーっと、これじゃあピンピンじゃなくてやないかーい」


 バカか俺は。

 何しょーもない下ネタぶちかましてるんじゃ。

 脳内でセルフツッコミをしつつ、玉橋さんから視線を外してクールダウン。


「あれ?」


 少し冷静になったところで、俺は自分の身体へ起きた異変に気がついた。


「どうかされましたか?」


 玉橋さんが手の指の隙間から俺の様子を伺いながら、心配そうに聞いてくる。

 それに対して俺は短く答える。


「スキルが発動した、多分」


「す、スキル?江口君の?それって……?」


 俺がどんなスキルを持っているのか。

 それは彼女も知っているだろう。


「……どの、スキルですか?えっと……あっ!そ、その!あのっ、デカっ……チ……」


 そこまで言って玉橋さんは俺の股間に視線を向けた後、また「わー!」と顔を覆い隠してしまった。

 すごく可愛い。

 けどちがう、それじゃない。


 


「『スケベ』が発動したみたいだ」


 

 

 全身に、力がみなぎっていた。

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