第2話 水?も滴る良い美少女

 「ふぅ、やっぱりこれは疲れるなぁ……」

 

 ダンジョンに潜り初めてはや1ヶ月。

 そろそろ慣れてきたとはいえ、生き物の死体を掻っ捌いて中のモノを取り出すという作業は肉体的アンド精神的に結構な疲労が貯まる。

 新入生の中にはこの作業でギブアップしてしまう人も中にはいるとかいないとか。

 俺には友達がいなくてその手の情報はネット頼りなので実情はよく知らないのだが。


 短剣に付いたコボルトの血と脂肪を、持ってきた使い捨ての布っきれで拭いとる。


「この第一階層のコボルトなら複数相手でも余裕そうだな」


 そろそろ探索する階層を変えても良い頃合いかもしれないのだが、ソロだと少々怖いという気持ちがある。

 これで覚醒したスキルの中ひとつでも有用なスキルがあったらまた話は変わるんだけどねぇ……。

 いや、そもそもの話だが有用なスキルを持ってたら色んなパーティーから引く手数多でソロなんてやってないか。

 

 『スケベ』『絶倫』『デカチ*ポ』、一応インターネットや学校にある資料を読み漁ってどんなスキルかはだいたいの把握出来ている。

 そしてどいつもダンジョン探索に有用そうなスキルではないことが判明している。

 どれも超レアスキルらしいのにな……。

 唯一調べるのに苦労した『スケベ』スキルには将来性が見込めそうなのだが、現状では役勃たずだ。


 え?絶倫とデカチ*ポはどうなんだって?

 夜の戦闘でしか活躍しなさそうだよ。

 あ、絶倫はでも有用かも。

 ていうか実際この一週間の中で少し活躍している。

 えへへ。


 デカチ*ポの方は、まあ、なんだ。

 ちょっとデカくなりすぎて邪魔である。

 ……だってサツマイモくらいの凶悪サイズになっちゃったんだもん。

 

「さて、次の獲物を探しますかね」


 そんな独り言がダンジョンの中に消えていく中。


「きゃああああっ!!!」


 前方から聞こえる悲鳴。

 モンスターじゃなさそうな、ちょっと可愛らしい感じの女の子の声だ。

 

 俺は駆け足で声のする方向へ向かった。


 「や、いやっ!来ないでくださいっ!」


 向かった先では、1人の女子がコボルト4匹に囲まれていた。

 悲鳴はあの女子のものだろう。

 しかもウチの学校のジャージを着ている。

 眼の前の女の子はあまり戦闘慣れしていなみたいだ。

 無闇やたらと小振りの剣を振り回してはいるが、その攻撃は一向に当たる気配が無い。

 ゆっさゆっさ揺れるたわわな胸だけがけっこう目立つ。


 ソロでダンジョンに入る技量じゃないなぁ、なんて思いながら顔をよく見てみればなんと隣の席の玉橋さんだった。


 ふむ、おかしいな。

 たしか普段の玉橋さんはクラスメイトの女子数名とパーティーを組んでダンジョンに入っているはずだ。

 なんで1人でダンジョン内にいるのだろう。

 なにか訳アリだろうか。


 なんて事を考えていると、玉橋さんはコボルトににじり寄られてあっという間に壁際に追い詰められてしまっていた。

 ぼーっと見ている場合じゃないな、すぐに助けなきゃ。


 彼我の距離は15メートル程度。

 手前のコボルトから順にA、B、C、Dと名前をふっておく。

 攻撃の優先順位はもちろん一番手前のコボルトAだ。

 メイスを持つ右手にグッと力を込めつつ、

 

「うおおおおっ!」


 まずは声を張り上げて敵の気を引く。

 本当なら不意打ちをしたい場面だったが、今まさに玉橋さんが尻もちを着いてしまったところだった。

 コボルトのヘイトを俺に向けなければ玉橋さんが危ない。


「ギャギャギャッ!」


 コボルト共が一斉にこちらを向いた。

 その顔は醜悪な笑みに満ちていた。

 俺が来たところで4対2だ。

 未だに自分たちが有利だと思っているのだろう。

 なんなら良いカモが増えたなんて考えてるのかもしれない。


 その驕った思考をへし折ってやろう。


「らああああッ!」


 声を張り上げながらコボルト共に迫る。

 そして右手に持つメイスを振り上げる……と見せかけて、左手に握りしめた砂を目の前のコボルトAの顔面に投げつけた。

 ソロ冒険者御用達、必殺『目潰し』である。


「グギャアアッ!!!」


「隙ありッ!」


 目潰しを食らって無防備になったコボルトAの脳天にメイスを一振り。

 クリーンヒットした一撃は、簡単に敵の命を刈り取った。

 

 まずは1匹目。

 敵は残り3匹。

 数の上ではまだこちらが不利だ。

 玉橋さんは加勢してくれそうかな?と思い、ちらりと玉橋さんの方を見やれば尻もちを着いたままブルブルと震えている。

 そして地面には玉橋さんの局部から放出されたと思わしき謎の液体による水たまりが。

 

 ほほう……。


 そんなこともあるよね、モンスターって怖いもん。

 心の中で玉橋さんをフォローしつつ、ついでにクラスメイト美少女のあられもない姿を目に焼き付けておく。


 おっとっと、戦闘中に余計なことを考えてこちらの股間も反応しては一大事だ。

 なんたって『スキル:デカ*ンポ』である。

 通常サイズでも持て余しているのに、固く大きくなってしまうと非常に邪魔になってしまう。

 戦闘中ならなおさらだ。

 場合によってはズボンが突っ張ってちょっと痛くなったりしたり。


「心頭滅却」


 メイスを縦に振り下ろす。

 コボルトBは簡単に死んだ。


「無念無想っ!」


 メイスを横に薙ぎ払う。

 コボルトCもポックリと死んだ。


「明鏡止水ッ!」


 不利を悟り背中を見せて逃げ出そうとする相手を後ろからメイスでドツキ回す。

 コボルトDも無事、死んだ。


 あっけなく戦闘終了である。


 いいね。

 この調子ならしばらくはソロでもやってけるかなぁ。

 スキルは使えないエロ系だが、フィジカルとテクニックだけで浅い階層はなんとかなりそうかも。


 まあでも、やっぱり、ボッチは寂しいよ……。


 そんな事を考えながら、未だ尻もちを着いたままのお漏らし美少女玉橋さんに向き直った。

 

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