第33話 旅支度7

「ご主人様、他に必要なものはありますか?」

「え?テントとか野営に使えるものは持っているし…食料とかくらいかな」


ストレージカードの中には、大量の野営道具…いや一部は屋内用も含まれているか…が入っている。

これから、僕らが旅をすることが運命つけられているように。

まあ、完全に契約神の決めた必然だが。


「では、そちらは後でよさそうですね…売り場担当者と話しましょう」


キョロキョロと周囲を見渡す。

スタッフは?と思いながら見ていると視界の端のほうでこちらに向かってくる男性がいた。

彼の左の肩先にはワッペンが付いている。

どうやら、スタッフのようだ。


「ヒジリ様とシトゥル様でしょうか?

私、ギルド職員マルコと申します。

商業長からお話を伺っております」

「はい、僕がヒジリ・ミヤマエ。こちらが、シトゥル・ミヤマエです。

今日は、よろしくお願いします」


もう訂正しても仕方ないと思ってシトゥルをミヤマエという事にした。


「えっと、この馬車を購入したいんだけど」

「畏まりました…商業長からは料金は先払いで貰っているから好きなのを渡してと言われていますので。

馬車を曳く馬は如何されますか?

通常馬2頭引きになりますが、表示価格に2頭の料金が入っております。

また、馬にも種類がありまして」


えっと、要約すると車のエンジングレードアップするってことかな?

そういえば、ゲームでも馬以外の動物や魔物に曳かせていたな。


「ご主人様、少しいいですか?」

「あ、うん。マルコさん。少し失礼します」

「あ、はい」


僕とシトゥルは、マルコから距離を取り小声で話し始める。


「竜種に耐性があるモノでないと無理かと」


そういわれて思い出した。

シトゥルは、竜種だという事に。

竜種の匂いで、基本動物は畏怖するだろう。


「じゃあ、同種か同格ってことだね」


竜種かシトゥルと同格の…えっ、いる?

ドラゴンのプリンセスと同格って。

僕は、マルコの元に戻る。


「マルコさん。ちょっと、火竜の巣の傍に行くことになるんだけど耐えられそうな馬っているかな?」

「なるほど…そうしましたら下位竜など如何でしょうか」


下位竜…レッサードラゴンやリザード種を指す。

馬車だと翼のないリザード種になるだろうか。

リザード種は、二足歩行するイグアナのような見た目の魔物である。


「リザードランナーですか?」

「はい、よろしければ牧場をご覧になられますか?」

「お願いします」

「畏まりました。では、先にこちらの馬車の売買契約を済ませてしまいましょう」


マルコは、どこかからかバインダーを取り出し書類を取り付ける。

そして、僕に手渡してくる。


「では、こちらにご署名をお願いします。

料金は、支払い済みとしています」


僕は、マルコに説明を受けながら署名欄に『宮前 聖』とサインをする。


「はい、ではこちらでヒジリ様の物となりました」


結構あっさりしたものだった。

納期とかあるのかと思ったんだけど。

後で知ったが、この世界では大量生産じゃないので一点物らしい。

似たものはあっても同一のデザインはないそうだ。

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