第30話 旅支度4
「さて、まずは登録お疲れさまでした」
そう切り出したのは、商業ギルドマスターキアナだった。
お疲れさまと言われても記入しただけなんだけど。
「さて、それよりも本題はこちらになります」
僕の前に、預けたアンブレシアが置かれる。
全色揃うとちょっと華やかだな。
「こちらは、お幾つ下ろせるのかしら」
キアナの背後からゴゴゴゴゴっと音が鳴りそうな黒いオーラのようなものを感じた。
目が、すげー怖い。
竜種の威圧にさえ思えてしまう。
「こらこら、キアナちゃん。新人を威圧するんじゃないよ。
ねぇ、聖君。このアンブレシアって花はね。
花も茎も根も葉も全てが薬になるんだよ。
是非、僕としては欲しいんだけど」
ケイアスからもどす黒いオーラが噴出しているような錯覚を覚える。
片や、ハイネスやラルクからはそこまで感じない。
「えっと、各種99個までなら出しますよ。
どうせ、僕には扱いきれませんので」
「本当かい?助かるよ…じゃあ、キアナちゃん。僕らは、あっちで決めようか」
「そうですね、ケイアスさま」
うーん、この2人の関係性が分からない。
ケイアスが圧倒的な年上ってことでいいのかな。
「じゃあ、次は冒険者ギルドから行かせてもらおうかな。
いいよな、ラルク?」
「ああ、いいぜ。おっさん」
「アンブレシアの採取ということでだ、ランクを最下位のFからというわけにはいかなくなった。
精々、Dランク…俺の権限じゃ2階級までが限界でなぁ」
たぶん、かなりの好待遇だと思う。
アンブレシアで貢献度を上げれたということだろう。
「んでだ。こっからは、傭兵ギルドの事なんだが。
白迅と聖はコンビってことでいいんだよな?」
「はい、そうですね」
ラルクは、腕を組みながら僕を値踏みするような視線を向ける。
「隠蔽か、何かのスキル持ちって感じだろうな。
力量が読めない…まあ、白迅の実力はまあ分かっているからコンビ・パーティーでなら傭兵ギルドでもDランクにしようと思うんだが、どうよ?」
契約神の作った装備には、もしかすると鑑定に属するスキルを阻害する『隠蔽』が備わっているのかもしれない。
僕は、隣に座るシトゥルを見る。
彼女は、頷いていた。
「ええ、じゃあそれでお願いします」
「おし、わかったぜ」
そういうとラルクは部屋を退室していく。
結構あっさりとしたものだ。
「全く説明もせずに行きおって…すまないね、聖殿。
冒険者ギルドは、採取やダンジョンの管理が中心で傭兵ギルドはモンスターの討伐や指名手配犯の捕獲なんかを請け負っている。
冒険者ギルドに、卸してもらった素材を商業ギルド・錬金ギルド・薬師ギルドへと卸す役割も担っている。
それが、あの現状だな」
ハイネスが、部屋の奥を指差す。
そこでは、キアナとケイアスが言い合っている。
「あの2人の話し合いが終わらないとちょっと買取金額が読めない。
ここ数十年で初めての取引…それも状態もかなりいいとくれば」
「あー、聖殿は商業ギルドでは銀等級にさせてもらうよ」
部屋の奥から、大声でキアナがそういった。
銀等級…商業ギルドだとランク付けが違うのか。
「ご主人様、商業ギルドの等級は鉄・銅・銀・金・白金・金剛ですよ」
なるほど、こちらも2階級特進か。
「銀等級なら露店を出すこともできます。
金等級だと個店舗経営が必須で年加盟料もそこそこするらしいです」
キアナとケイアスが、元の席へと戻ってくる。
「シトゥル殿の言う通りです。
ただ、銀等級にも年加盟料は発生しますが…今回はこの取引から頂戴したく」
「おっと、そこからは僕から説明するとするよ。
今回の査定は、どこの部分をどれだけの金額とするかに焦点を充てた」
僕の前に、ケイアスから1枚の紙が広げられる。
『アンブロシア明細7色
花 1500
茎 500
葉 500
根 1500
1本 4000
』
そう記載されていた。
とても、綺麗な文字で。
「といいたいんだけど…状態がいいから1本5000リジェでどうだろうか」
えっと、つまり1本5千円ということだろうか。
花にしては、破格な気もするけど。
隣に座るシトゥルは、凄い勢いで首を縦に振っている。
たぶん、妥当…むしろかなり好条件だということだろう。
「では、それでお願いします。
あ!そういえば無色のアンブロシアもあったの忘れてました」
そう僕が告げた時。
右隣のハイネスが、机に突っ伏した。
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初見1本500リジェ
全部で7色
99本ずつ
693本と思っている
全部で8色
無属性を忘れられている。
346,500リジェとハイネスは予想していた。
実際は、3,960,000リジェとかなりの高額になる。
1リジェ=鉄貨
10リジェ=銅貨
100リジェ=大銅貨
1,000リジェ=銀貨
10,000リジェ=大銀貨
100,000リジェ=金貨
1,000,000リジェ=大金貨
10,000,000リジェ=白金貨
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