第28話 旅支度2

でっかい、建物が目の前にある。

総合庁舎とは、よく言ったものでコストコと言われても疑わないほどの大きさだ。

いや、異世界だからねぇって。


「ご主人様。冒険者ギルドと商業ギルド、傭兵ギルドにそれぞれ登録をしましょう」

「えー、めんどくさい」

「ご主人様が!ニートで!ヒモの!最低!クズ!野郎!って事でいいですか?」


とても、怖い表情をしている。

くっ、これが竜種の威圧か。

ちびりそうだぜ。


「わかった、わかったから…はぁ、エスコートを頼むよ…この世界の事なんもしらんのだから」


ゲーム世界なら知っている。

でも、現実化してしまうと流石に。

それに、僕はテキストフレーバーは流し読みかスキップする派なんだよね。

特に、面白くもなんともない会話は特にさ。


「はい、では参りましょう」

「ちょ、痛い。痛いよ、シトゥル」


彼女は、僕の左耳を摘み歩き出す。


「取れる!取れちゃうよ」


シトゥルの筋力パラメーターは僕の数倍ある。

実に、拷問と言えよう。

ちょっと、涙が滝のように流れてるんだけど。

僕らは、まずは冒険者ギルドに…来たようだ。

シトゥル先導の元、ミッションをこなしていく。


カリカリカリカリ


僕は、書類に署名をしていく。

どうやら、登録だけなら冒険者ギルドでまとめてできるらしい。


「ご主人様、ステータスカードを出してください」

「ん?はい」


僕は、ウェストポーチからステータスカードを出す。

後から知ったのだが、このステータスカードってマイナンバーカードみたいなものらしい。

ステータス値に関しては、本人ないし任意の相手にしか表示することができないらしい。


「では、ご主人様。査定が終わるまで待合所で待ちましょう」


うん、シトゥルが優秀すぎて超助かる。

出来たら、お嫁に来てくれないだろうか。


「え…ご主人様…それって」


どうやら、声に出ていたらしい。

どうしよう。

とても困った。

シトゥルの瞳に、とても熱が籠っている。

頬も赤くなっているし。


「おーい、『白迅』」


シトゥルの耳が、ピクピクと動いた。

ガタイのいいスキンヘッドのおっさんが奥から現れてそう言っていた。


「ああ、ご主人様。私の事ですよ、『白迅』って。

あ、はいはい。ここにいます」


おっさんは、シトゥルの傍へとやってきた。

その手には、布が握られている。


「なんだ、いつもと違う装いじゃねぇか。

別嬪さんが拍車をかけて別嬪で気づかなかったぜ」

「あー、そういうのいいですから」

「へいへい、んでだ。これどうした?」


布の中からアンブロシアが覗く。


「ええ、ちょっとうちのご主人様がダンジョンで見つけたらしくて」

「ほう…あんたが『白迅』の主人か…ちょいと奥まで顔貸してくれや」


おっさんに、不気味なウインクをされた。

僕らは、それから奥…にある個室へと案内された。

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