第27話 旅支度1

「あー、シトゥル…これとか買取してもらえそう?」


僕は、ウェストポーチからアンブロシアを取り出す。

ストレージカードは、シャツの胸ポケットに基本仕舞っておくことにした。


「アンブロシアですね…どれほどありますか?」

「色違いが99本ずつ」

「ぶっ!ちょ、これ1本だけでも霊薬の素材で大変なことになりますけど」


く、売れないのか。

宝の持ち腐れじゃん。


「取り敢えず、ギルド連合へ行きましょう」


ギルド連合…冒険者・傭兵・商業・錬金など各ギルドが集合した総合庁舎である。

この世界では、町・街に1つは必ず存在する。

なお、村にはない。

まあ、維持費的な意味で。

現在いるのは、大陸中央に栄える王都。

ハルクラウム魔導王国の王都ハルクトラムである。

この国では、主に魔法・魔術・魔道・魔導の4つと錬金術が国力を支えている。

ステータス上に適正としての魔法があるとするならば、それが魔力を行使可能な免許である。

魔術は、行使可能な呪文…アビリティである。

魔道は、身体に刻まれた魔術回路で、魔導は魔術回路から具現化するイメージを補助するための媒介。

つまり、魔法適正を持ち、アビリティを持つ者が、魔力を杖やアクセサリーを用いて行使する総称を一般的に『魔法』と呼ぶ。

まあ、シトゥルの適正である魔法が『風』と『光』(『聖』)であるのは行使可能であるとだけで、アビリティがなくては使用することもできない。


「じゃあ、ご主人様行きましょう」


僕は、重たい腰を上げて椅子から立ち上がる。

テーブルに広げた本もカップも一度ポーチの中に仕舞う。

もちろん、カップの中身は空だ。


「あー、この家も解約しないとな」

「そうですね…長旅になると思うので馬車とかも必要でしょうか?」

「ああ、確かに。まあ、路銀次第だな」

「そうですね…まあ、買い叩かれない様に頑張ります」


そういうシトゥルは、少し嬉しそうだった。

何がそんなに楽しいのだか。

自宅であるボロ小屋から出て、しばらく歩くと中央広場へと出る。

王都は、外周でなら馬車での通行が許されているが街の中心部は乗り入れが規制されている。

その為、ギルドや商会は街でも外周寄りに立ち並んでいる。

中心街は、主に住宅街が多い。

僕らが向かっているギルド連合は、街の北西にある。

ちなみに、北には王城、北東には教会がある。

中央広場から北側は栄えているが、南側は…とてもこの国は貧富の差が激しい。


「あのさぁ、シトゥル」

「はい、何でしょうか」

「尻尾がとっても涼しいんだけど」


シトゥルは、僕の腕に抱き着きながら歩いているのだが彼女の真っ白でピンクの差し色のあるモフモフとした尻尾が左右に活発な動きをしている。

抱き着くのは、この際いいけど…童貞にはとても毒だが。

腕に柔らかい感触が…しないな。

ああ、ブラストアーマーの所為か。

折角なら柔らかい胸を押し付けるくれるくらいのサービス精神が僕は欲しいと思うんだ。

贅沢を言えば、揉ませてくれてもいいんじゃないかな。


「なんのことですか?」


僕らは、外套は纏ってはいない。

その為、彼女の尻尾は露わになっている。

といっても、シトゥルが猫竜だとは気づかれないだろう。

寧ろ、白猫獣人だと思われるのが妥当だ。


「はぁ、僕と散歩できるのが嬉しいの?」

「さあ、なんのことでしょう」


とぼけたことを言っているが、言葉以上に尻尾が素直なことに気付いてほしい。

まあ、可愛いから許す。

うん、シトゥルは可愛い。

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