第26話 現状3

『すまねえ、ヘマした』


本を開いて最初に書いていた文字に、開いた口が塞がらなかった。

書き殴ったような文字。

彼女?彼?の日記のようなものだというのが分かった。

名前を言うこともできない。

ただ、契約神としか。


『まずは、謝罪させてくれ主さまよぅ』


いつの間にか、シトゥルが僕の隣の席に座り9巻を見ていた。

その手には、カップが握られていて時折口に含んでいる。

僕も左手でカップの取っ手を掴み、口に含む。

ん?コーヒーじゃん。

コクが深くて、酸味が少ない僕好みのコーヒーだった。


「あー、このカップも魔道具ですよ。

水かお湯を注ぐとイメージした飲み物になるみたいです。

便利ですよね」


なるほど、僕がコーヒーが飲みたいと思ったその時にコーヒーになったと。

でも、もっと冷たいほうがよかった。

氷でも入れたらよかったのだろうか。

どう考えても、常温。


「んで?シトゥルは、読めてる?」

「ええ、読めてますよ…あいつがヘマしたんですね」


契約神は、プレイヤーの言わば半身。

神に課せられた呪いは、プレイヤーにまで及ぶということだろう。


『神界協定で、俺は神呪封印になった。

ちょっと、マジで悪いと思ってるからさ。

俺のマブダチのイシュバル・グスト・ニースの所に行ってほしんだわ。

頼むよ。主さま』


こいつは、謝りたいのか押し付けたいのかどっちなんだろうか。


「なるほど、ご主人様がこっちにきたのはあいつが神呪封印されたからこっちの世界に引っ張られたってことですね」


僕が、この世界に来た理由も契約神と関係があるってことか。


「もしかして、僕がLV1からレベルが上がらないのって」

「十中八九この神呪封印の影響でしょうね」


つまりは、低レベルの状態で旅をしろということか。

イシュバル・グスト・ニースって誰だ?


「この行先ってどこ?」

「太古の火の塔じゃないですか」


太古の火の塔。

別名『イグニス』。

ラテン語の『原初の火』を指す言葉である。

よく考えると、イシュバル・グスト・ニースってイグニスのモジりか。


「それって確かアシュタータ大火山の火口にあるって言う塔?」

「そうですそうです。

火竜の巣みたいなとこです」


行きたくねぇ。

低レベルで行くようなとこじゃないだろう。


「そういえば、ご主人様。クソ雑魚でしたね」

「ああ、まあレベルリセットにスキルリセットまで食らってるからな。

ほとんど、新規プレイヤーだわ。

シトゥルだけが、頼りだ」

「そこまでいうならこのシトゥルちゃんにお任せです」


彼女は、エッヘンと声を漏らしながら胸を張る。

あまり大きくない双丘がちょっと揺れた。

うん、なんとなく揺れた。

きっと揺れた。

たぶん。


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シトゥル…Cカップ

大きくもなく、小さくもない

ちょうどいい大きさ

彼女の容姿は、18歳くらい

実際は、生まれてから1年も経っていない

早熟で、ある程度の知識は親から共有されている

エンシェントドラゴンのリーシェと『猫竜の因子』から誕生した

実は、父親と呼べる存在はいない

どちらかと言えば、聖がそれにあたるがシトゥルとしては…。

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