第5話 後二匹
酒場で待っていると(ニャロは四杯目に入る頃)例の彼女がやってきた。
「来たよ。あの人」
「なら私に任せなさい。昼間は悪かったわね。夜は私のターンよ」
「あの人、酒入ってないと人が全然違うけど良いの?」
彼女は人差し指を左右に揺らしながら「みんな同じよ」とか言った。
「こんばんは。ネローナさん。」
話しかけられた彼女は案の定お酒が入っていないため不審がっている。
「昼間のゲロ女...」
「喧嘩売ってるわけ?」
「事実だろうが!!」
「私は優しいから今の発言、見逃すわ。」
彼女はニャロの発言に振り回されているからか仕事疲れが悪化していそうだった。
「はぁ、ウチに何のようがあって話しかけてくるんだ。」
「覚えてないの?一緒にお酒飲んだこと。しかもここでね。」
そうそうそれで良い。
「悪いがお酒を飲みすぎると記憶がなくなるんだ。」
「そう?じゃあ...大将、私と彼女、昨晩はお熱かったわよね?」
「ん?」
ニャロは彼女にバレないよう大将に殺意の目を向けている。目からナイフが飛び出しそうだ。
「あ、ああ!一緒に酒飲んでたしな!」
「ほら。大将も見てるのよ?」
「嘘だ嘘だ嘘だ...ウチが実は女性が好きで昨晩大将にお熱いところを見られながら...?確かに恋愛をしたことがなければ同期にもそういう目で見たことがない...」
何だか話が拗れてきたなぁ。おい。
「もう分かるわよね?」
「やめてくれ。もう何も言わないでくれ」
彼女は震えすぎてチワワか生まれたての子鹿のようになっていた。
「それに...貴方、私の
「ひいいいいい」
誰もペットになるなんて言ってねぇよ。てか俺もペットになるだろ。それじゃあ。
「何が目的なんだ、頼む。上官たちにはやめてくれ、今日もパワハラされたんだ...」
「ついてねぇなおい」
「簡単よ。このお酒を飲んで?」
「そ、それは店で一番高いワイン?!」
いつのまにそんなの仕入れたんだ。てかこれ用意するあたり大将もノリノリだろ。
「良いの。嫌なこと忘れて?飲んじゃって?」
「な、何がしたいんだ?」
「これを飲んで欲しいだけ」
「毒が入っていてもどのみち死ぬしかない...」
どんな覚悟だよ。
「う、うまい?!」
「だから言ってるじゃない。わ・た・しは美味しいお酒を飲んで日頃のストレスを忘れて欲しいだけ」
「女神か...?」
この人も充分アホだろ。酔うにしても早すぎる。
「これ全部ウチにか?」
「ええ。当たり前。大将!ぼけっとしてんじゃねぇぞ!ツマミ持ってこいや!」
「へへい!ただいま!」
キャラ変わりすぎやろ。大将も大人しく従うんかい。
「それ、俺も少し味見して良いか?」
「殺◯ぞ?」
「は?」
「あんたはやっすい水でも飲んでなさい」
「酒すら飲めねぇのかよ」
彼女がボトルを全て飲み切ると後はもう無双、いや無敵状態だった。
「めがみぃーー!アンタのペットになるからぁ!お酒ちょうだい!」
「だめよ。お手」
「にゃん!」
カオスすぎて俺もお酒を飲まないとやっていけなさそうだった。
「じゃ、さっそくサインしようか。」
「にゃにこれぇー?」
「サインよサイン。偉人がするような」
「ウチの名前書けばいいだけ??」
「そうよ?ほら!書きなさい!はやく!」
「ほーいっとな!でぎだ!」
書かれたサインを見ると汚さよりも内容に目がいってしまった。
ちっちゃく「契約書 私はニャロ様のペットとなるためドラゴンぶっ倒しパーティーに参加させ、終わった後正式にペットとなります。ps酒代は全て払います」
えぐいものにサインしてしまったにも関わらず彼女は有骨頂そうだ。これも人生なのかもしれないな。
酒場の裏にて:
「彼女と仲良くしてるのは誰だ?」
「さぁ?でも見る感じ男の方は剣を携えてるわね。」
ネズミが通ることができるか怪しい程の隙間から二人の人物は彼らを見ていた。
「変異体には?」
「なりえないだろうな。あんなマヌケ共」
「...どうかしら」
吸っていたタバコを足元のネズミに擦りつける。
「悪趣味ね」
「お互い様じゃないか」
「そうしたらあと二匹は必要ね」
「もうターゲットに決めたのか?」
「ええ、魔力の流れが以上ですもの。」
神殺しの姉を追い求めて アリサ眠 @akumeme
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