第6話 魔物討伐①

「———俺は反対でーす」

「黙れ、斬るぞ」

「待て待て、素人相手に剣向けるのはダメでしょ!? そもそもアンタが馬鹿なこと言うから俺が声を上げてるだけじゃん。俺の言葉はクラスメイトの過半数が思ってることだから!」


 レナとかいう女騎士が頭のおかしなことを宣った次の日。

 まだ太陽が登りきっていない朝焼けの頃から俺達は全員揃っていた。

 そして俺は、魔物討伐とかいう頭のおかしい訓練に反抗の狼煙を上げていた。


「てか何で急に魔物討伐に舵を切ったんですか?」

「平和な世界の生まれは、本当の戦いを知らない。だから……まずは知ってもらおうと思ってな」

「思ってな、じゃないですよ。普通に死ぬんですが、何の抵抗も出来ずに死んじゃうんですけど」


 幾ら俺達が勇者とは言え、あのおっかない女の言う通り、俺達はまだまだ雑魚に過ぎないわけで。

 多分ちょっと強い魔物が来ただけで俺等皆んな一瞬でおじゃんだぜ?


「そこは安心しろ、私達騎士団が勇者1人につき最低1人は護衛に入る」


 白銀の甲冑に身を包んだレナが言うと、同じ様な甲冑を着込んだ騎士達がゾロゾロと現れる。

 数は……ざっと俺達勇者より少し多いくらいか。

 重たそうな鎧を着ているのに、それを感じさせない動きにクラスメイト達から感嘆の声が上がる。


 ……ちぇっ……何か俺は噛ませになった気分だな。

 ま、あの女に嫌われるのは俺1人で十分よ。


 何て思いつつ、すごすごと下がる俺に。


「お疲れ様、天。君のお陰で皆んなの不安が減ったよ、ほら皆んな顔が強張ってないだろう?」

「ま、それなら良かったよ。俺は自分が気になっただけだけどね!」


 思惑が完全に見抜かれていることに恥ずかしくなって言い訳をする俺に、柚月の後ろに隠れていた愛護小動物こと茉莉奈ちゃんがひょこっと顔を出す。

 童顔の美幼女のような見た目の庇護欲を唆られる茉莉奈ちゃんは、俺を上目遣いで見ながら言った。


「あ、ありがとうございますっ、天さん」

「茉莉奈ちゃーん、マジでキュートっ! もう君のお礼だけで俺は魔物に特攻できちゃう! 茉莉奈ちゃん最強、茉莉奈ちゃんこそこの世の正———あたっ!?」

「騒がないの。ほら、レナさんがアンタをめっちゃ睨んでるわよ?」

「いや別に頭を叩かなくてもいいじゃん……」


 頭を押さえて、呆れたような表情を浮かべる美琴を睨む。

 しかし、後ろから物凄い視線を感じて反射的に後ろを振り向くと。

 


「———死にたいのかお前は?」

「死にたくありません、イエスマム!」



 怒りのオーラを纏ったレナが俺を睨んでいたのだった。

  

 







「———……怖くね?」

「当たり前だ。ここは魔物の巣窟だからな」

「ねえ馬鹿なの、こんな所に素人の俺等を連れてくって馬鹿なの?」


 馬に乗る騎士の後ろで騎士に抱き着いて走ること数時間。

 俺達は魔物が沢山住んでいるという森にやって来た。

 森というだけあり……十数メートルを裕に越える程の巨大な木々が、それはもう元気に枝を伸ばして青々と葉を付けている。

 お陰で地面付近は大して光が当たらず、ちょっと薄暗い。


 余談だが、レナとかいうおっかない女の後ろに誰も乗りたがらなかったので、1番ビビっていない俺が乗ることになった。

 恐らく1番悪手なコンビだと思うが……案の定口喧嘩しか生まなかった。


「誰が馬鹿だ、貴様よりも頭は良い自信がある」

「おっと舐められてますね、やんのかコラ」

「本当にヤるか?」

「ごめんなさい、100%俺が死ぬので止めてください」


 剣の柄に手を当てたレナの姿に俺は速攻で謝る。

 今度からこいつを揶揄うのは控えようと思いました、まる。


 そんなことをしていると、先頭を走っていたレナが止まり、後ろを振り返って吐き捨てた。


「さっさと降りろ、次私の身体に触れたら殴る」

「どんだけ俺が嫌いなんだよ、てかアンタに掴まってないと俺は死ぬんだよ!」

「気合で耐えろ」

「この脳筋女が」

 

 俺は最後の最後までレナと口論をしながら降りる。

 地面に俺が降り立つと、続いてレナが馬から降り、次々と他の騎士やクラスメイトが馬から降りていく。


「ふぅ……意外と馬って乗り心地悪いのね」

「そうだね、僕もちょっとお尻が痛いよ」

「ガハハハハハ、俺は昔爺ちゃんに乗せてもらったことがあるから余裕だぜ!」

「い、痛いですぅ……」


 柚月達は恭平を除いて皆んなお尻を擦っている。

 茉莉奈ちゃんには今直ぐ最高級のソファーに座らせてあげたい。


 ん、俺はどうなのかって?

 俺はあの女が異様に馬に乗るのが上手くて全然痛くないが?

 それだけは唯一の救いってところかな。


「おーい皆んなー、あんまモタモタしてたらおっかねー女騎士に吠えられるぞー」

「貴様は本当に私を愚弄しないと気が済まないようだな?」

「違いますやん、皆んなを急かしただけですやん」

「アンタ、もう少し考えてから口に出しなさいよ……」


 肩を竦めて呆れたように言う美琴。

 彼女は俺の近くにやってきて、軽めに俺の脇腹を小突いた。

 それと同時に、レナが声を張り上げる。




「———これより魔物討伐のため、森に入る! 騎士達よ、担当の勇者に付いて陣形を作れ!!」




 その言葉に、クラスメイト達の顔が少し強張った気がした。


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 どうもあおぞらです。

 ちょつとスランプ気味で書けてなかったんですけど、無事復活しました。

 次の更新は0時です。


 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

 モチベで執筆スピード変わるので、続きが読みたいと思って下さったら、是非☆☆☆とフォロー宜しくお願いします! 

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