第2話 説明とステータス

 ———聖皇と呼ばれた爺さんの長ったらしい説明は省かせてもらうぜ。


 爺さんの話を纏めると、大体こんな感じ。


 今、この国———正確には人族と亜人と呼ばれた種族が住むリーゼス大陸———は、魔王による侵略を受けているらしい。

 そんで更にお仲間の間でも色々と駆け引きがあって、中々人々が一致団結しないせいで結構押されているんだとか。

 

 だから、数百年前と同じ様に勇者を召喚して人類の団結の象徴としたい、とのこと。


 それに魔王軍の上級軍以上は一部の者しか対抗出来ないので、強力な力をもって召喚される勇者で戦力の増強も兼ねているらしい。

 寧ろ爺さんの口振り的にはこっちの方が比率が大きそうだった。


 そんな感じの話を聞いて。


「……やっぱ俺ら何も関係ないじゃん。巻き込まれただけじゃん」


 俺は誰にも聞こえないほどの声量で呟く。


 それに勇者なら、絶対戦わないといけないんだろ?

 仮に魔王を倒せば元の世界に帰れるんだとしても、1つしかない命が掛かってるんじゃ割りに合わんよ。


 しかししかし。

 そんな俺の考えとは裏腹に、意外にもクラスメイト達の雰囲気は勇者として協力する方に傾いていた。


「……馬鹿なんじゃね?」

「一言多いわよ、天。いつも五月蝿いくせに妙な所で冷めてるわよね、アンタ」

「おっと、五月蝿いじゃなくてムードメーカーと呼んでくれよ、美琴」


 俺は尚も話を擦り合わせている柚月を見ながら、横に並んで呆れた様な視線を向けてくる美少女に言葉を返した。


 一条いちじょう美琴みこと

 腰まである柚月よりも更に黒くて艶のある髪に、端正に整った顔立ち。

 女子の中では高い方の165センチで、スラっとしたモデル体型であるが、胸の双丘は男なら二度見してしまう程に素晴らしいモノをお持ちになっていた。

 俺と柚月の幼馴染で、皆んな頼りになるのお姉ちゃん的存在である。


 そんな彼女は……物凄く難しそうな顔をしていた。


「……む、ムード……やっぱり無理ね」

「拒否反応強過ぎない!? そんなに俺を認めたくないの!?」 


 そう、このお方は俺にだけは普通に軽口を飛ばしてくるのだ。

 しかも結構トケトゲ。


 まぁ俺も美琴がお姉ちゃん感出してきたら全力でイジるんだけど。

 てか、俺だけ軽口飛ばされるのって……異性として見られてないってことぉ!?

 や、柚月がいるから当たり前か。

 

「俺も結構顔は悪くないと思うんだけどな」

「……何言ってるの? まぁでも確かに……うん、柚月がいるとアンタは霞むわね」

「よな? だから俺ってモテないわけか」


 超絶イケメンの親友を持つと、ただのイケメンの俺の立場なんてないぜよ。

 毎度毎度『柚月君の好きな人って知ってる?』とか聞いてくる奴らばっかだし。

 柚月がモテるのは嬉しいけど……もっと俺にも興味待てよバカちんがぁ!


「それだけじゃ……まぁ良いわ。というかあっちで恭平と茉莉奈が待ってるわよ」

「ん? おー、アイツらも平常心を取り戻したんだなー。んー……わりっ、先行っててくれん?」


 俺はにへら、と笑みを浮かべてへこへこと頭を下げる。

 美琴はそんな俺の様子に不思議そうにしていたが、またいつものことかと言わんばかりにため息を吐いて2人の下に戻って行った。


 やっとこさ1人になると……俺は周りを確認したのち、小さく呟く。


「———【ステータス閲覧】」


 同時、目の前の虚空に青っぽい半透明のステータスボードが現れた。


—————————

朝夢そら

◯職業

暗躍の勇者(成長補正、職業スキル獲得)


◯ステータス

【魔力】B(S)【身体能力】C(A)

【知力】S(S)


◯スキル

【EX】《万能道具庫》

【SS】《影使い》《鑑定》《看破》

【S】《魔力操作》《強化》《変装》《分身》

【A】《偽装》《器用》《奇術》《威圧》

【B】《交渉》《誘惑》《冷静》

【C】《恐怖耐性》《状態異常耐性》

【D】《馴染》《柔和な雰囲気》

【E】《酒酔い耐性》《睡眠耐性》

—————————


 お、おう……中々に個性的なステータスですな……てゆーかスキルクソあるのに戦闘系ほぼ無くね?

 しかも職業が『暗躍の勇者』って何よ。

 暗躍とか勇者に1番似合わん言葉じゃん。

 確かにカッコ良いけどっ!

 寧ろ暗躍なら魔王軍の方があるだろ……もしかして俺は魔王に遣わされたスパイっ!?


 ———と、軽く巫山戯ながら感想を言うのはここまでにして……ちゃんと考えよう。


 暗躍の勇者。

 まぁ暗躍がメインだからか、軒並みスキルが非戦闘系なモノばかりだ。

 戦闘系は2つか3つと言ったところ。

 

 これで戦場の中、柚月と美琴、恭平や茉莉奈……あとはクラスメイト達を助けながら戦うと言う選択肢は消えた。

 なら、戦闘以外で俺のすべき事は……。

 



「———するか、暗躍」




 俺が、勇者達の裏方を勤めよう。


 クラスメイトもそうだが、この命を賭けてでも、柚月達4人は護らなければならない。

 そのためなら汚れ役だろうと何だろうと買って出ようじゃないか。

 だってアイツらは———いや今はそのことについては考えないでおこう。


「まずは別視点からの情報と……」 


 俺はブツブツと独り言を呟きながら、今後の動きを組み立て始めた。


—————————————————————————

 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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