第15話 ツンツンなあの子と朝ご飯

「きゃあっ!」


耳元の悲鳴で目が覚める。


「ん...?」

「な、なんで冬流がここに居んのよ!」

「え?」

「え?って...不法侵入!?」


良からぬ勘違いをしている愛を落ち着かせ、事情を説明する。


「な、なるほどね...引き止めちゃったのに私が寝ちゃったから...。」

「いや、こっちこそ近くで寝ちゃってすまん。どこで寝ればいいかわからなくて。」

「ま、まぁ、勘違いならいいわ。」

「あぁ、それで?体調はどうだ?」


近くにあった体温計を愛に渡す。

しばらくすると、体温計がピピッとなった。


「何度だ?」

「38.5分...まだ熱はあるみたい...。」

「せっかくだから朝飯でも作るけど、何か食べたいものは?」

「特にないかも...あ、ゼリーとか...?」


ゼリーが冷蔵庫に入っているか確認したが、入っていない。


「ゼリー無いみたいだから、コンビニでも行って買ってくるわ、他に食べたいものあるか?」

「う~ん...アイスとか...冷たいもの食べたいかも。」

「分かった、バニラとかで良いか?」

「うん、ありがと。」


愛の家を出て、すぐ近くのコンビニに入る。


「これと、これと、あとは...」


わざわざ愛の家で俺だけの朝飯を作るのは少し申し訳ないので、自分用の軽食もいくつかかごに入れてレジに向かう。

会計を終わらせ、愛の家に戻る。


「戻ったぞ~、って、寝てるのか。」


すやすやと眠る愛の様子を見ながら、冷蔵庫にゼリーやアイスを入れる。


「さて、朝飯でも済ますか。」


自分のために買っておいたサラダチキンとカ〇リーメイトを食べ始める。


「サラダチキンって久しぶりに食うとやっぱ美味いな。」

「ん...。何食べてんの...?」

「お、愛。起きたか。」

「ん...。サラダチキン...?」


サラダチキンが気になっているのか、ずっと見つめている。


「気になるか?」

「うん、見たことあるけど、食べたことないから...。」

「一口食べるか?あんまり食べると戻すかもしれないし。」

「いいの?」


愛が不思議そうにサラダチキンを口に運ぶ。


「ん、美味しいね。でも、不思議な味というかなんというか...」

「美味しいならよかった。アイス食べるか?」

「うん、食べる、ってかいつもそんなのばっかり食べてるの?」

「別にいいだろ?体に悪いわけじゃないし。」


冷蔵庫のアイスを愛に渡す。


「体に悪いとかじゃなくて、栄養がしっかり取れないでしょ?」

「そうなのか?俺はいつも通り動けてるから大丈夫だと思うけど。」

「ほんとバカ。」

「えぇっ。」


サラダチキンとカ〇リーメイトでも栄養を取り切れないのか...初めて知った。


「ん、やっぱりバニラアイス美味し。」

「なら良かった。俺そろそろ一旦帰るけど、何かあったらすぐ連絡しろよ?」

「ははっ、あははっ。」

「なんだよ?何が面白い?」


お腹を押さえながら笑う愛を見つめる。


「いや、だって...心配性すぎでしょ。」

「もし悪化したら危ないだろ?」

「大丈夫だって、昨日はありがと。あと今日も。」

「おう、じゃあ早く治せよ。学校でな。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る