第10話 ツンツンなあの子と体育祭当日
「いや~、体育祭当日か~...」
「そうだな、怪我しないようにしとけよ。」
「お前は母親か、てかお前もだろ?」
「確かにそうだな。」
今日は体育祭当日、生徒たちの親だったり卒業生なんかも来ている。
「9月にしては結構暑いな...」
「だな、リレーとかちゃんと水分補給しないとやばそうだな。」
体育祭の司会が話し始めると途端に辺りが静かになる。
「最初の競技はなんだっけか...騎馬戦か...」
「冬流、俺の馬の部分なんだから頑張ってくれよ?」
「はいはい...」
騎馬戦が始まる。俺は騎馬の馬の部分となり上の健太がはちまきを取れるように協力する。
健太がめちゃくちゃに強く、結果は俺達赤組の勝利となった。
「あっちぃ...」
「だな...」
「健太、お前騎馬戦上手すぎ...プロなれるぞ...」
「騎馬戦のプロって何だよ...」
つまらないことを言いながら席に戻り水分補給をする。
「リレーまで体力温存しとかないとな...」
「結局リレーの選手選ばれてんじゃん。」
「うるせぇ、」
「はいはーい。」
体育祭も終わりに近付いた頃、最後の競技のリレーが始まる。
俺はアンカーの一つ前、結構重要なところだと思う。
「すげぇ、皆速いな...」
「だな...俺負ける気しかしないかも。」
「冬流なら勝てるだろ、一躍有名人になってモテとけよ。」
「なんか拗ねてる?」
健太の口調を聞き、健太が拗ねてると分かる。
「ほら、そろそろお前の番だ。」
「あぁ、行ってくる。」
白線の上に立ち、手を後ろに出す。バトンをもらう準備は万端だ。
「轟!頼んだぞ!」
バトンが来る前に走り出し、バトンを完璧に掴む。ここまでは順調だ。
「さて...」
(((頑張れ~!)))
観客やクラスメイトから応援される。
こういう時だけは陰キャでも目立つ。結構嫌だ。
「後ろの奴速すぎだろ...!?」
俺より後にバトンをもらい走り出した白色のはちまきを額に巻いた男子生徒。そう、サッカー部の英一だった。
「じゃあな冬流、お先!」
俺の横を通り過ぎ、走っていく。
「あー、くっそ...足痛ぇ...」
転ばないように、何とか足を前へと進める。その時だった。
「冬流!頑張れ!」
「...!」
聞き覚えのある声、その主は愛だった。
愛と目が合った瞬間、俺の痛みも疲れも一気に吹き飛んだような気がした。
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