第7話 ツンツンなあの子の『ありがとう』

愛が熱中症で倒れた放課後。俺は愛が心配で保健室に訪れた。


「失礼しま~す。1-2の轟冬流です。」

「あっ、冬流。」

「お、愛、体調はどうだ?」

「ま、まぁ...てかあんたが運んでくれたんでしょ?あたしのこと」


嫌われたなこれ。と心の中で考えながらも事実なので認めるしかない。


「そ、そうだ、嫌だったか?」

「まぁ...あんたで良かった。変な奴じゃないってのはわかってるしね。」

「そうか、なら良かった...」


嫌われて無いようだ。良かった。


「お姫様抱っことか...バカじゃないの...」

「何か言ったか?すまん、聞こえなくて...」

「何も言ってない、バカ冬流」

「えぇっ、す、すまん...」


愛の顔が妙に赤い。熱中症がぶり返しているのだろうか?


「愛、顔赤いぞ、大丈夫か?」

「あんたのせいでしょ、バカ冬流。」


さっきからバカバカって...結構鋭利なナイフが刺さってくるからやめてくれ?


「お、俺帰るから。家帰ったらゆっくり休めよ?」

「ん。運んでくれてありがと。」

「お、おう」


愛のありがとうに妙にドギマギしてしまった。言われないと思っていたからだろう、結構驚いた。


「あ、健太、先帰ってろって言ったのに...」

「いやいや、一緒に帰ろうぜ?少し話もしたいしな。」

「話?何だよ?」

「お前な。大勢の前でお姫様抱っこはやばいわ。」


うん、自分が一番わかってます。というのは言いたくない。


「そうだけど...じゃあどう運べばよかったんだ?」

「うっ...まぁ確かに...」


お姫様抱っこの話から話を逸らし、色んなことを話して健太と別れた。


「ありがとうか...結構嬉しいもんだな。」


心の中で愛に感謝されて嬉しい気持ちと大勢の前であんなことをしてしまった後悔がぶつかり合うが、愛の感謝の方が勝った。


「少しは好感度戻ったかな...って本当に俺何かしたのだろうか...?」


そんなことを思いながら家に帰る。

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