記憶の断片 再会

「やっと会えたね。と、その前にこれで顔を拭きなさい、顔がグショグショよ」

 と言って優しい声の主はハンカチを渡してくれた。


 私はそれで勢いよく顔を拭く。


「自分のことについては思い出した?」


「思い出したく…なかった…です」

 あんなに記憶なら、忘れたままが良かった…


「きっとそうよね。でも、今のあなたは違う、一人ぼっちなんかじゃ無いはず、その証拠に貴方はここまで来た」


 私の頭の中には二人のことが浮かぶ。


「うん…」


 声の主は少しの間笑っていたが、急に改まったようになりこう告げた。

「貴方には申し訳ないけど、実は私はある事を貴方に告げるためにここに呼んだの」


「…へ?」


「あの世界のよ」


 私は思わず言葉を詰まらし、彼女の話に耳を傾ける


「結論から言うと、あの世界は、ある元凶が貴方たちを永遠に閉じ込めるため

 ののようなものよ。だから、今からでも元の世界に帰る事を

 お勧めするわ…このままじゃ彼や貴方も危なくなる」


「どうゆう事ですか…!?」


「もうほとんど時間がない…!あの世界に帰ったら、彼が使ってる部屋に

 彼が貴方にのために作ったブレスレットがあります。

 その石の部分に触れてください。そうすれば、全ての事が分かるでしょう」


「えぇえっ!!そうなんですか…、分かりましたそうします!」

 彼女の事を完全に信用したわけじゃないけど、彼とミヨちゃんに

 危険が迫っているなら、動くしかない!!


 それにしても、まさか…彼が私のために用意してたのが、ブレスレットだなんて


 自分の顔が熱くなっていくのが分かる。


「最後に一つ…」


「…はい、ナンデショイ…」

 そう言うと声の主は私にハグをしてこう囁いた。


「…頑張ったね、露理」


 …何で、私の名前を…


 その瞬間、私の顔から涙が溢れる

「露理、露理頑張ったんだよぉ…頑張ったんだからぁ」


 …あぁ…誰でも良い、私はただ認められたかったのだ。別に帰るとか帰らないとか

 どうでも良い…自分は頑張ったんだぞって認められたかったんだ。


 私は気が済むまで神社の境内でただ一人、泣いていた。


 ーーーーー


「露理、彼と一緒に逃げて。あの世界の王 ヨミから…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る