自己犠牲

 あぁ…これで良いんだ。ミヨもあの子も助かって……

 僕は必死の抵抗も虚しく、水虫にその身を喰われようとしていた。


 雨は降り続き、額からは赤い血が流れ落ちる


「思い…出したなぁ……ハハっ。前の世界でも…こんな事あったっけ」


 ----ー

 俺は前の世界ではごく普通の高校生だった。


 ある一つを除いては…


 俺は昔から何かと面倒ごとに足を突っ込む事が多く、

 こんな風に体を張ることも多かった……全ては小さき物を守るために


 そのせいか、他の奴らに気持ち悪がられることも少なくなかったが、

 助けた人たちの笑顔を見るとそんな苦労なんてどうでも良くなった。


 ある時、俺は道に迷っている女の子を助けた事があった

 その子はどうやらお母さんと喧嘩してしまい、その時にはぐれてしまったのだ。

 俺はその子の親を見つけるために街中を駆け巡り、やっとこさ、そのお母さんを見つけた。これで一見略着かと思った。


 人攫い…それが我が子を見つけてあげた恩人に対する最初の言葉だった


 その後俺は警察を呼ばれ、結局は親を交えた話し合いの末に注意喚起だけで済んだが、その噂が学校に広まり、俺はその日を持ってクラスメイトから、友達から、かつて俺が助けてあげた人から人攫いの目で見られることになる。



 罵詈雑言を言われ、机は毎日滅茶苦茶、帰り際にボコボコにリンチにされ、金を奪われることもあった。しかし、俺は抵抗しなかった。あの子の母親から言われた言葉によって、すでに俺の心は砕けたいたからである。

 あぁ…こんな事になるなら


「人助けなんて…しなきゃ良かったよ……」


 ----ー


「でも…出来なかった、俺には…ミヨや彼女を見捨てるなんてこと……」


 ミヨや彼女を助けた時…自分の心が二つになったような気がした…心の奥底でこいつらなんかどうでも良いと思ってしまう自分がいた。

 けど…どうしてだろう。そう思う度に俺の心が締め付けられるような感覚に陥る。

 もう一人の自分がそうするのを拒否しているように……


 まぁ…どうせ俺は今から死ぬんだ。そんなこと、もうどうでも良いさ……


 このまま俺はパクッと食われるかと思った

 だが…そうはならなかった。によって

「おい!!白虫!その人を離せぇぇーー!」


 何と彼女が俺のことを助けに来てくれたのだ


「もういい!!俺のことは…ミヨとと二人で逃げろ!!死にたいのか!?」

 俺は苛立ちのあまり思わず声を荒げてしまった。いいんだ…

 これは俺の自己満な自己犠牲なのだから。


「だって…だって貴方がいなくなったら私もミヨちゃんも悲しいよ…!

 もうこの先どうやっても生きていけないよ!!諦めないでよ!!!必死に抗おうよ!!!!」

 そういうと彼女は自分の鞄からある物を取り出した。


「最後にできることと言ったら…これしか無い!これでもくらえぇ!!」

 するとペンの先から光が差し、水虫を照らした。

 ペンライトだ、高校生が学校でよく貰うが使い道がわからない物第一位、ペンライトだ!

 水虫は光を浴びた瞬間、俺の拘束を解き、ものすごい勢いで暴れ出した


「一か八かだったけど、うまく一体みたい…さぁ、いきましょ!!」


 俺は彼女に導かれ、もっと明るい光がする方へと掛けていった

 その時の彼女の姿はまるで光の中にいる天使のようだった。


 自分の頬を雨は額をただひたすら落ちていった。











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