カレーライス

「ミヨっ!!」

 俺は見覚えのある薄暗い場所で目を覚ました


 戻って…来たのか?


 見た感じからして、ここは俺たちが住んでいるで間違いなさそうだ。


「あぁ、そうだったな」

 俺が水虫に食べられそうになった時に、彼女が自分のバッグから出したで水虫を怯ませてくれた隙に逃げてきたんだっけ…思い出した。

 そんでもってここに着いた頃にはボロボロで倒れちまったんだ。

 よく考えてみりゃあ全身包帯まみれだし……

 彼女よりは俺より後にに来たはずなのに……情け無い


 自分の不甲斐なさを戒めていると、部屋の隣から美味しそうな匂いがする


 腹の空き具合からして今は朝だろう。それにしてもここに来てから毎日缶詰ばっかりだもんなぁ…いい匂いだ


 僕は匂いに釣られるまま隣の部屋へと足を運んだ

「何だ…こりゃあ」


 そこには信じられない光景があった。俺たちがいつも使っている長机の上に

 俺の食欲をそそるものが置いてあったのだ


「カレー…?」

 間違いない…カレーだ。思い出した…!俺がこの世で一番好きな食べ物はカレーだ


「おはよう…!!ぐっすりと寝ていたね、元気になった?」

 彼女がよごれたエプロンをつけてまま話しかけてきた


 それにしても、ミヨはいつのまにお姉ちゃんと仲良くなったんだ?

 彼女にくっついているミヨを見て俺はそう思った

 俺に慣れるのにも相当時間がかかったのに…


 男女の差を肌に感じながらも、俺は言葉を振り絞った

「う、うん…それよりもこれは?」


「あっ…こ、これはね、ミヨちゃんが貴方の好きなものはカレーだって言うから…

 ここってデパートでしょ?缶詰とかカレーの素を使って、作ったんだ!!

 ダメじゃないかな?」


 ミヨ…ありがとう…!!


 俺は席に座るとスプーンを使ってカレーを一口頬張った…



 口から抜けるスパイスの香り、

 缶詰のツナが良い塩梅で食感を引き立たせている


 ……美味い


 俺はスプーンでカレーをかき込む。手がズキズキ痛み、額からは水が流れるが

 それでも手を止めない…


「美味い…美味いよ…!こんなに美味いカレーは…久しぶりだ!」


「そ、そんなに美味しかったの?う、嬉しいけど……お代わりならまだあるからね」


「お代わり!!」


「早っ!」


 僕の母は小さい頃よく、こんな美味しいカレーを作ってくれた。



 僕の母は俺に、小さき人を守れと教えた。



 僕の母は私が幼い頃、暴漢に襲われて……死んだ



 けど、俺は約束を今でも守れているよ……ママ






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