雨の章

避難生活

 私が彼のテリトリーに来て数日が経った。

 私もここに慣れたつもりなのだが、彼はずっと部屋の中にこもりっぱなしなので

 正直言って暇だ。

 私の、もの僅かな暇つぶしといったら、三人分の洗濯をしたり

 誰もいないデパートの中でショッピングをしたり

 ミヨちゃんの遊び相手をするくらいである。


「ねえね、あそぼ」


「はいはい…一緒に遊びましょうねー」


 ミヨちゃんは最初に会った時よりも私によく懐くようになった。

 彼によればミヨちゃんはかなりの人見知りで、自分に懐くのには時間が

 かかったらしい…それに比べれば私には、比較的早く懐いた。


「ミヨ、パズルしたい!」


「いいよ!一緒にやろう!!」

 ミヨちゃんは動くのは苦手だが、パズルをするなど、

 頭を使うことが得意らしいのだ

 そして妙に感も鋭い。


「ねえねってさ……にいにのこと好き?」


「グギェエッヘ…ゲホ…い、いきなりどうしたのぉ〜?」

 二人でパズルをやっている時に、

 こんな風にいきなり変なこと聞いてくるので、正直気が休まらない

 おかげで飲んでいたお茶をリバースするところだった。


「に、にいにのことぉ?」

 正直にいうと、いい人だなとは思っているよぉ!体もすらっとしていて、

 顔も整っていて優しいし、人当たりもいいし…………かっこよかったし

 私は水虫から助けてもらった時のことを思い出す


「良いとは…思って…いるよ。うん…」

 あぁ何か、面と向かって聞かれるとあの人のことが気になってきたじゃんかぁ…

 私が悶絶していることを尻目に、ミヨちゃんはこんなことを呟いた


「ねぇねがにいにの事好きで良かったよ!私はにいにとねえねと一緒にいるのが

 好きだから!!」


「ミヨちゃん…」

 私はミヨちゃん達に出会った事は、きっとただの偶然ではいないのだろう

 そんな風に言われると、断言できる。


「あっ…ねぇね、ピース落としちゃったから拾って」

 そう言うとミヨちゃんは部屋の隅の姿見の下にあるピースを指差した


「はいはい!!只今」



 私は……姿見の下のピースを拾う時に見た、鏡の向こうの光景を一生後悔した


 そこには写っていたのは私ではなく、おぞましい姿をした化け物の姿だっ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る