第2話 瓶詰の告白を拾った少年の日常

 僕は今、中学三年になったばかりです。

 僕はある日、瓶詰の手紙を海岸で拾いました。(あなたの見つけた瓶はその瓶です)それからというもの僕は人に対して不愉快と思うたびに、不意に先日の手紙が蘇るようになりました。自分が手紙に戒められる気がします。多分僕はそんな高尚な人間ではない、と薄々自分自身が気がついているという事でしょう。きっとそうでしょう。

 この手紙を書いている理由は瓶詰の手紙関係です。僕には手紙を書いた人の考え、真意も分かるので、試しに僕も書いてみよう、そうすれば気が軽くなるかもしれない、という意図です。(瓶詰の手紙の内容はほぼ苦しみの愚痴、吐露だったのです)

 そしてあの手紙のような文体を意識して書いてみようと思います。そのほうがいくら深く書いてそんなに苦しくないと思うからです。これ以上、余計なことは書きません。

 

 最悪の一日の事を書きます。

 その日は4限目で英語の中間が返ってきました。23点でした。もちろん、100点満点中ですし、僕が通う中学は普通の中学校です。結果に関して言えば、勉強していない僕が悪いのです、小学校の頃は特に低学年の頃は授業さえ聞いていれば、学級でも上位に食い込めましたが、気がつけば順位は次第に落ちており、今、僕は学級の中で真ん中より数人分は下という立ち位置になってしまいました。頭がいいという自惚れがあったのです。勉強していない僕が悪いのに、僕はその悲惨な現状どうしても受け入れられず、自然と涙が溢れそうでした。涙をこらえるので必死で、誰とも顔を合わせることが出来ませんでした。願うなら便所にでも逃げ込み、個室で泣きに泣きたいほどしたが、泣いた後が残るので選択できませんでした。


 5、6限目は進路学習でした。どの高校に行くか、さらにその先どんな職業に就きたいか、具体的な目標を持たなくてはいけない時期なのです。寧ろ中学生三年になる前に決める事の方が普通で、三年生になってから未来を考えるというのは遅い方かもしれません。

 友達(といってもただよく話すだけ)がよってきました。授業中ですが彼を含め皆立ち歩いています、立ち歩くのは三種類の動機から成り立っています。

 一つ目はやる意味、必要がないです、既に全てが決まり、わざわざ学校でする必要がないのです。彼、もしくは彼女らは大概、いつでも良い成績を納めます、当然です、彼らは進路は既に決まり、中にはで高校の内容まで手をつけているのですから。

 二つ目はやる気がないです、これは実は二つから成り立っていて、やらないをやっている、つまり俗世的な言葉を使えば厨二病です、その中には周りが不真面目であることによる恥ずかしさの色合いが存在しているのは言うまでもありません。もしくは未来が漠然としすぎて、何をどうすれば良いのかてんで分かっていやしないです。羅針盤のない航海に似ています。

 そして三つ目、これは目の前で僕に永遠と興味のないの話をするこのと同じで何か別のことがしたい、というそれ以上でも以下でもない単純な動機です。

 この退屈な話というのが不思議で休み時間ごとに話しかけてくるのですが、彼の話は一向に話が尽きないのです。まさしく間欠泉です、僕はただ少し距離をおきながら頷き、時には少し驚いたような反応をして見せるやるのです。僕の反応の中には興味のなさ秘密の毒のように少しを潜ませます。僕のそんなくだらない演技を彼が見抜けているかどうか定かではありませんが彼はずっと僕に話しかけます。

 僕に碌に友達ができないのは彼が足を引っ張っているのではないか、と思えてなりません。(彼は僕を唯一の友達だと思っている)この男がいるせいで他の人達が誰一人として寄って来ないのです。学校に通ったことある方ならわかるでしょうでしょうが、生徒たちはいつもそのものの属する階級を正確に見極め、それによって自分の立ち位置を決めるのです。どうしてこの男が僕の足を引っ張ていないと言い切れるのでしょうか。

 そして僕が進路学習に対してやる気がない理由は少し特殊です。何故かというと、幼い頃から自分が長く生きないと確信していたからです。小さい頃は小学生になる前に死ぬ、小学生になっったら中学生になる前に、そして今は高校で死ななくともあとちょっとで死ぬ。そう確信しながら生きているからこそでしょう。死ぬのであればどうでも良いという虚無主義(意味が合ってるか分かりませんが)なのです。

 担任は自由に歩き回る生徒たちの現状に対し何も言いません、何も施しません。所詮、高校なんてそんなモノなのです。どこに行ったて変わりません。

 僕はこんなにもくだらない文章を書いて何を望んでいるのでしょうか。

 きっと、この前に僕のいつもの散歩道に漂着した瓶詰の手紙と一緒なのです。僕もどこまでも無責任なのです。


 追伸

 僕は漂着した瓶の手紙だけ抜き取り、どうしようもない自分の愚痴を書き連ねた手紙を代わりに瓶に詰めました、あなたが手元に元の手紙がないのはそのためです。元々入っていた手紙は僕の部屋の最深部で保管することにしました、なぜ手紙に背き(手紙には焼き捨てほしいと書かれていた)保管するのかと問われれば困りますが、もしかしたら誰かの秘密を保持していたいという浅ましく、嫌らしい思考からですが、これを書くことで僕の気持ちはとても軽くなってしまいました。これでは僕も立派なかもしれません。

 あり得ないほど我がままなことだと分かってはいますが、どうかこの手紙は焼き捨ててください。

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