第3話 瓶詰めの告白 一枚目、幼少期
私がこんな手紙を書くのは実は二枚目です、というのも一枚目を書き、色々と思い出が蘇ったりしましたので、この手紙に思いの丈を詰めて私の代わりに捨て去りたい、と思ったからです。
私は手紙を書き、ちゃんと瓶も閉めるにも関わらず、運良く深い海の底に沈む事を願っています。もしこの手紙を読まれる方がおられましたらどうか焼き捨てて下さい。
思えば昔からそうでした。幼い頃から周りの人の顔ばかり伺い暮らしておりました。年齢を聞かれたらわざと考えこむふりをしたり、わざと間違えてみたり、周りが喜ぶことばかり繰り返しました。そして遂に私は両親にぶりっ子と呼ばれたのです。両親は笑って言いました、恐らく冗談だったのでしょうが私は4歳なのにも関わらず、とても理不尽に感じました。
それから、私も小学校に上がらならない年齢になりました。当然です。私はそこで四つの人格を使い分ける異常な日常を送る必要に迫られました。一つは家で、一つは教師、一つは友達、一つは本当の自分という具合です。
元々、親という最高権力者がいましたが新たに教師が加わり、私は頭が二つある生き物になり、更に友達という横のつながりと、その中の縦のつながり、そして本当はどこにも見せたことがない、面白くて黒い本当の私。四つの頭を持つ怪物のようです。
それぞれの人格が生まれた経緯がありますが、全てに共通する原因は頭の中が覗かれているという妄想からくるのです。これだけだとまるで私が精神に異常をきたしているのではと思われかねないので弁明しますが(本当かもしれませんが)一人っ子の私には幼い頃、周りの大人とは、両親しかおらず少し経ってからは幼稚園教諭という大人しかおらず、両親は自分の血を引いた子供の事をよく知って、幼稚園教諭はその道の人ですから、幼い私の考えなど簡単に見透かせたことでしょう。そのせいか私は他人に思考を覗かれていると思うようになったのです。それと自分で書くのもどうかと思いますが、私は周りの園児よりも随分と賢く、子どもの考える事など簡単に推測できたので、頭の中を読み読まれというのが当たり前だと思うようになっていきました。
頭の中を覗かれていると思うようになると、人の前で悪いことを考えようと思わなくなります、覗かれるからです。つまり本心を抑え込み、人前で善良な思考をする。いうならば思考の中でまで演技をすることになるのです。
思考の中まで演技するようになり、時間をかけ私の脳内に確固たる地位を築き上げた私たちがいつしか私の中の四つの人格となったのです。
元々、妄想癖とでも言いましょうか、想像力豊かだった私は、幼稚園児の時には自分の前世が土星の大統領で今は地球に来ているとさえ確信していました。私の頭には前世の光景がありありと浮かんでいたのですが、本当は米国の牧師とそこに集まった群衆をどこかで見た記憶でした。勘違いをする想像力は私に、人工衛星が宇宙から私の脳の中を覗くとか、部屋や街に機械が仕掛けられ、私の様子を監視し、私が何か失敗するごとに笑っているのではないか、とたまに思わせるようになりました。ちなみに笑っているのは大概、友達です、皆で私をだましている、この世界そのものが私をだます実験場、私を外で監視する研究者が存在する。そんな有り得ない(と書きつつも今でも少し信じています)事を小学校1、2年のころ特に強く信じさせました。異常としか言いようがありませんが、私をだます存在しか世の中には存在していないので誰も頼れず、監視されている考えてしまったら監視者に私が監視されている、と気が付いていると気が付かれる、と思い意識的に考えないように暮らしていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます