瓶詰の告白

澁澤弓治

第1話 一本目の瓶詰の告白

 何もできず、生きているだけ時間の、全ての無駄だと。生きていて、迷惑をかけてごめんなさいと思うことがありますけれども、人にそれを悟れないようにするには、完璧な演技が必要です。なぜ悟られてはならないかというと、こんな私にも心配してくれる人がいるからです。そのせいもあって、私は生きていて申し訳ないとは言えません。迷惑をかけれないのです。

 そして私はこの演技が発覚し、要らぬ心配をかけるという事も避けねばならず、必然的に私はやる気がないという演技をせねばならないのです。

 しかしながら何もしなかった(出来なかった)からこの立場にいるのです。この立場にいなかったら演技は必要ないのです。いうならば自らの首を絞めながら、やる気がないを演じることにより、どうしようもない堂々巡りへと陥りながらゆっくり首を締める手に力を入れているのです。

 極め付けにこのやる気がないを演じるというのは何よりも後から生まれ、私を騙すのです、というのも私が何もできないと悩むうちに編み出された甘い毒のようなこの論理は次第に私自身を騙し私を中毒者にしたのです。そうする事で自分を守り、状況はさらに悪くなるのです。(当然、中毒者であることも私の持つ殻の一つです)何かを達成出来なくとも、やる気がないと自分に言い張れるのです。(他人に向けて放つ言い訳が自分の為だということぐらいはわかっています)

 もうお分かりでしょうが(もしこれを読んでいる方がおりましたら)私は既に、いやもっと前からどうしようもない下り坂を知らず知らずのうちに降っていたのです。

 

 この手紙を書いて私は気づきました、私はこの文書が私の知り合いの元に届き、あわよくば、幸いにも私を知ってくれている人の元に知れ渡り、私を心配するという恐ろしく私を苦しめる物がなくなることを願っているのです。私は秘密裏に、無責任に恩を仇で返せることを望んでいるのです。

 ここまで読んだらわかるでしょう、私は最低な人間です。もはや人として生きてはいけないのです。そしてどうしようもなく無責任な私は自分で書いておいて涙が出るのです。

 何か偶然、誰も悪くない事故で死ねたらと願ってやまないのです。

 思えば昔からそうでした。しかしもうこの紙にはもう余白がありません。

 もしこれが届いた方がいらっしゃりましたらお手数をお掛けしますがどうか焼き捨ててください。


 

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