第51話 ゴミ捨て場の宝物
遂に訪れた別れの日。外は大雨土砂降り。
まるでこの世界が我を去ることを悲しんでるみたいだ。
「さらば日本。案外悪い世界じゃなかったぞ」
この世界に別れを告げると目の前に男が現れ行くてを塞ぐ。
「話題の魔王さまがこんな雨の中傘もささず何してんだよ」
「お前は確か……霧島さんの同期でとにかく面倒くさいやり手プロデューサーの辻。だよな?」
「ほぉ。俺のことを知っているのか。ま、この業界にいるんだから売れっ子プロデューサーである俺の事を知ってて当然か。少々覚え方だけは不満だがな」
直接話すのは初めてだがどうやら噂通りのめんどくさそうな奴だ。
それに覚え方も間違ってなかった。
「…そんな売れっ子が我になんのようだ」
「ちょっとな。ずっとお前と話がしてみたかったんだ」
「悪いが我は忙しい。それに話す事など何もない。…待ち合わせがいるんでねこれで失礼する」
辻を無視して勇者との約束の場所に向かおうとすると、
「お前、俺の番組に来ないか?」
辻の一言に我は思わず足を止めてしまう。
「なんだと……」
「お前の無茶苦茶っぷりは話に聞いてる。今時これほど尖っている奴はお前くらいだ。だから気に入った。俺と組むならお前を俺に負けない売れっ子大スターに変えてやる。お前はうたのおにいさんで終わっていい器じゃない」
「スカウトしてるのか?」
「ああ。お前となら最高に面白い番組が作れる。断言してもいいぜ」
この男、確かに見る目だけはあるようだな。
「ギャラだって上がるし知名度だって今と比べ物にならない。あとこれはおまけ程度だが、めちゃくちゃモテる」
「なに!?……」
しまった……。モテるの一言に思わず食いついてしまった。
魔王だってモテるの一言にはどうしても弱い。
だって男だもの。
「どう考えたってチャンスでしかない。それなのにまさか断ったりはしないよなぁ?」
辻はニヤケ顔で手を差し出す。
「そうだな……」
辻の手を思いっきり叩く。
「!……」
「モテはしたいがお断りだ。今の我にはやるべき事がある。それにどうせやるなら彼女がプロデュースする番組以外はあり得ない。そう決めている」
「ふん…大した忠誠心だな。気が変わった」
すると近くに路上駐車していた辻の車から大量の段ボール箱を持ってくる。
「コレやるよ」
「なんだこの荷物は?」
「今となったらただのゴミ」
「ご、ゴミ!?」
強引に押し付けると清々した顔をする辻。
「アイツが捨てられずに困っていたから代わりに捨ててやると持ってきたんだが俺の代わりにお前が捨てといてくれ」
「アイツって誰だ。って中身はなんなんだ?分別は!」
「見たら分かる。…じゃあ達者でな」
「おい待たんか!!」
そのまま車に乗り込み颯爽といなくなっていった。
「なんなんだアレは……。ゴミを人に押し付けて帰るとはなんて無礼な奴だ」
文句を垂らしながら渋々中身を確認する。
「コレは……!!」
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