第10話 生放送には魔物が潜んでる
そして遂に本番直前。
「それではこれから番組が始まります!音楽が鳴り終わりましたら、おにいさんたちが出てきますので拍手出迎えてくださいねー。分かりましたか?」
パチパチパチパチパチ!!!
観客達は拍手で答える。
スタジオに来ている半分は子供達。残った半分は子供達と一緒にやってきた両親。だが、明らかに来ている子供達より大人達の方が盛り上がっている。
「はい、えっと、それでは皆さんよろしくお願いしますね!!」
アナウンスが終わり、番組開始まで残り1分を切った。
「いよいよね」
「ええ。今日も何とかなる事を祈るだけですよ」
モニター室でスタジオの様子を見守る霧島と間宮達。
「プロデューサー」
「ん?」
「さっきアイツ来ましたよ」
「そう……」
「良かったんですか?会わなくても」
「会いに行ってどうすんのよ?私には謝ることしかできない。そんなことしたって」
「そうですね。アイツもそれはきっと望んでない。そんな気はします。だけど、」
「だけど?」
「いや、なんでもありません…」
「時間がないわ。言いたい事があるならちゃんと言って」
「それでも貴方は謝りたいと思ってる。でもそれは私の勝手な妄想です。忘れてください」
「…………」
「本番まで10秒前!!……5秒前!3、2、…」
音楽がスタジオに鳴り響き<いっしょにラ・ラ・ラ つきにいっかいのとくべつへん!!みんなでもりあがろう!!なまほうそうスペシャル!!>が遂に始まった。
一度音楽流れ終わると、それを合図に次の音楽流れ始めキャスト達が現れる。
「みんなーーー!!スーパースターひろあきおにいさんだよ!お待たせ!!」
観客とカメラに向かってウインクすると、観客達は大盛り上がり。
「よし、そのまま観客映せ」
間宮の指示をを受け映像が観客側に切り替わる。
するとそこに映っていたのは、神道のファンである大人達だけが盛り上がる様子だった。
子供達は皆死んだ魚の様な目をして番組を見守っていた。
「ヤバっ……すぐ戻せ!!」
すぐに映像はスタジオの様子に切り替わった。
「みんな〜〜!!なおみおねえさんだよ!今日は来てくれてありがとう!一緒に楽しもうねー!!」
なおみおねえさんが来たことで更に現場は盛り上がるが、子供達の様子は変わらないまま。
「さぁ、まずはこのコーナー!!みんなで一緒に歌って盛りあがろうぜ!!」
曲が流れ始め、本格的に番組が始まった。
「よし、これで取り敢えず終盤まではなんとかなりそうですね」
「うん……」
「どうしたんすか、そんな浮かない表情して」
「これでいいのかな〜って思ってさ……」
間宮の問いかけに歯切れの悪い返事で返す霧島。
「仕方ないですよ。今のこの番組はアイツのファンがいるお陰で成り立ってるって言っても過言じゃないんですから」
「それはそうなんだけどさ……」
「だったらしょうがないでしょ。こればっかは」
子供向け番組向けられる大人の事情。それを知ってる彼らだからこそ分かる悩みがそこにあった。
「もしかして、アイツがいたらなんか違ったかもって思ってます?」
「別に。そんなことないわよ」
「へぇー。俺はてっきりそうだとばかり思ってました」
「私だって、ただの新人にそこまでの事は期待してないわよ」
「だったらこんなタイミングで新メンバーなんて入れるわけないでしょうが…」
間宮はぼそっと呟く。
「なんか言った?」
この距離で聞こえてない筈がない。
「いえ、別に。これも忘れてください」
「分かった。忘れるわ」
「……青柳。この流れのまま最後まで行くぞ。準備できてるよな?」
インカム越しから問いかける間宮。
「もちろんですよ!何から何までバッチリですよー」
「マジで頼むぞー」
そんなこんなで番組は中盤まで順調に終わり終盤へ。残すところは神道のスペシャルワンマンショーだけとなった。
「この後はこの俺によるスペシャルコンサートだ!!皆見逃すなよーー!!」
「お楽しみに!!」
キャーーーーーー!!!
ワーーーーーーー!!!
観客達の声が響き、番組はそのまま最後のCMに入った。
「CM入りましたーー」
キャスト達は一度裏に戻り最後の準備に取り掛かる。
最後に1番目立てる神道も準備に抜かりはない。メイク直しを済ませ、後は着替えるだけだ。
「後はアレだけ。今日も無事になんとかなりそうですね」
「ええ」
番組も終盤に近づいた事で余裕が見える間宮達。
「CM明けまで残り3分です!!」
スタッフの声が聞こえ、間宮は最後の確認をする。
「青島。もうすぐCM明けるぞ、神道含めそっちの準備は出来てるよな?」
………………。
一向に返事は返ってこない。
「青柳!!おいっ!!……」
それでも返事は返ってこない。
「アイツなにしてんだよ……」
「ちょっと私見てくるわ」
「あ、俺も行きます」
様子が心配になった2人は急いで現場へ向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます