第8話 ワガママな奥の手
翌日。
我はリハーサルに挑むためスタジオに向かった。
「おはよう、諸君。今日はよろしく頼む」
「お前、来たのか」
我を出迎えたのは間宮だった。
「ああ。霧島さんに泣いて頼まれたからな」
「バカ言え。あの人が泣くわけないだろ」
「そうだな。彼女はそんなに弱くない」
「……来たって事は覚悟してるって事だよな」
「それなりにはな」
「そうか…。じゃ、昨日は悪かった」
「謝るな。我が惨めになるだけだ」
「それが嫌なら昨日みたいに無茶すんな。黙って台本に従ってれば何とかなる。いいな?」
我に釘を刺す間宮。心配してくれているのか。だが生憎我は男に興味が無い。
「言われなくても分かっておるわ」
「…なら頼むぞ」
「ああ」
霧島さんには恩があるからな。これ以上迷惑をかけるつもりはない。
そしてリハーサル直前、あの男が満を持してやって来る。
「あれ何でお前がいるんだ?」
「仕事だからな」
「それをお前は昨日辞めたんだろ」
「我にも事情があるのだ。お前もプロなら黙って付き合え」
「ッ、お前な、言わせておけば……」
「はいはい、そこまで。リハーサル始めるわよ!!皆位置についてちょうだい」
霧島が半ば強引にリハーサルを始めさせる。
「ッ!!……」
奴の舌打ちが聞こえる。
気まずい空気のままリハーサルは順調に進んで行った。
「まおおにいさん。このままなら明日も大丈夫そうですね」
「ああ。このまま何事も起こらなきゃいいんだが……」
「いーや、無理でしょ」
「やっぱお前もそう思うか?」
リハーサルを見ていた青柳に同意する間宮。
「あの人がそのまま黙ってるとは私思えないんですよね」
「頼むから何も起こらないでくれよ」
そんな間宮の想いは届くことはなく青柳の予想が的中した。
リハーサル終了後。
「プロデューサー。いや、霧島さん」
「珍しいわね、貴方が私を呼び出すなんて」
霧島を人目のつかない会議室に呼んだのは神道だった。
「明日の生放送、あの男を出演させないで欲しいんだ」
想像通りの用件に霧島は顔色一つ変え無かった。
「それは無理」
「どうしてだ」
「もう決まった事だから。悪いけど話がそれだけならこれで失礼するわ。私も色々と明日の準備で忙しいのよ」
問題事を避けるため逃げるようにその場を去ろうとする霧島。
「待て!!」
霧島の手を掴む神道。
「そっちがその気なら、こっちにも考えがある」
「…………」
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