第4話 アドリブ☆ドリフト
「それじゃあ、始めるぞ。本番まで、3、2、1」
愉快な音楽が流れるとそれを合図に番組が始まる。
「テレビの前のちびっ子たち!!お待たせ!みんなのスーパースターあきひろおにいさんだ!そして、」
「なおみおねえさんだよ!実は今日みんなに紹介した人がいるの。私たちの新しい仲間だよ!出ておいで〜!!」
いよいよ我の出番だ。
2人は素晴らしいビジネススマイルと拍手で我を迎え入れる。
普段は着慣れない派手な衣装を身に纏い我は姿を現す。
「テレビの前の少年少女よ。我が名はまおおにいさん。魔王である!さぁ、テレビの前の子供達よ、我の前にひれ伏すがいい!!」
……………………。
「カット!!」
間宮の声が聞こえ、カメラが止まる。
「おい青島、お前オレの知らないところでまた勝手に台本変えやがったな?」
「え、いやいや、私そんな事してませんよ!」
「じゃあなんで、初めましてのアイツがあんな事言っちゃってんだよ!!!このコネ入社が!」
「だからコネ入社じゃないですって!いくら私でも怒られたいからってそんなミスはしませんよ〜」
「じゃあ、あれはアイツの」
「アドリブですかね〜」
「マジかよ……思ったよりヤバい奴が来やがった」
「ふふっ。想像以上ですね」
「笑ってる場合か…おい魔央!!」
間宮は怒りながら我の所へやって来る。
「どうしたのだ、急にカメラを止めて。何か問題でもあったのか?」
「問題大アリだよ!このバカ!!」
「な、なんだと!!……」
「お前なに勝手に台本に書いてない設定付け加えてんだよ」
「いや我は渡された台本通りやったぞ」
「どこがだよ」
間宮は呆れる。
「台本には自己紹介って書いてあったではないか。だからこうして我の事を我なりに紹介したのだ。そのどこが間違っているというのだ?」
「全部だよ、ぜ・ん・ぶ!!自己紹介って書いてあるんだから名前だけ言えばいいの」
「そ、そうなのか?」
「そうだよ!!」
「だったらちゃんとそうやって分かりやすく書いてくれればいいではないか?」
「誰もなあんな事言うなんて普通は思わないの!何勝手に魔王とか変な設定付け加えてんだよ」
「変な設定とは無礼な。我は別に嘘など、」
我が魔王だと理解できないのは仕方ないとしても、嘘つき呼ばわりだけは解せぬ。
「いいか?お前の役割は魔王なんていうふざけた役柄じゃない。大体なんで子供番組に魔王がいるんだよ、おかしいだろ!?」
我の頭を持っていた台本で叩く。
「そ、そうか?…」
いいではないか。魔王のどこがいけないのだ。別に我はお天道様に顔向け出来ない行為はした覚えなど全くないぞ。
「勘違いするなよ。あくまでもお前はあの2人のおまけみたいなもんなんだからな」
「ならば我の役割はなんなのだ?」
再び間宮は呆れた様子で我を見る。
「お前な、台本くらいちゃんと読んどけよ。新人なんだから」
間宮は台本を開き出演者が書いてあるページを我に見せつける。
「ほら、ここに書いてあるだろ?上から順によーく口に出して読んでみろ」
「あきひろおにいさん。なおみおねえさん。……」
そして少し間が空いてい下の方に。
「2人の陽気な仲間、まおおにいさん…。な、なんなのだこれは!!」
「驚く事じゃないだろ。お前は主役はじゃないんだから」
「それは分かっているが……2人の陽気な仲間は流石にないではないか!これじゃあまるで我がオマケのようだぞ」
「だからさっきからそう言ってるだろうが!」
再び間宮は我の頭を豪快に叩く。
「……っ」
別に我だって主役になりたいわけではない。仕事さえ出来て給料が貰えるならなんでもいい。
だけどせっかく出るなら少しくらいは目立ちたい。
そう思って楽しみにしていたのに……やはりこの世界でも我はとことん嫌われているらしい。
そういうもんなのかもしれないが、こうも思い通りならんとはな……。
「後でお前の部分だけソロで撮り直しだからな。その時はちゃんと台本通り余計なことすんなよ、いいな!」
だからってクビになるわけにもいかない。魔王の我がオマケ扱いなのは釈然としないが仕方ない。
「分かった……」
「よし、じゃあ次はダンスパートだ。準備急げ!」
間宮はスタッフ達に指示を出し次の撮影準備に取り掛かる。
「なんなんだあの男は……」
神道はイライラと愚痴を言いながら、一度スタジオを後にする。
それに連なるよう奈緒美もスタジオを後にした。
「…………」
そんな様子を遠くから見ていた霧島1人だけが遠くで笑っていた。
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