48 シナリオ崩壊
「“ええええ”と驚きたいのはわたしの方ですよっ、
「え、いや、あたしは何も……」
していない、とは言えないが。
かと言って
「ちょっと
「ひいっ!!」
すると今度は憤怒の表情で
ドンと机に手をつきながらあたしを睨めるその圧の強さと言ったら……ぶるぶる。
「ち、千冬さん、机を乱暴に扱うなんて品格に欠けていらっしゃ――」
「黙りなさい」
「――はい、すいません」
落ち着いてもらおうと思ったが失敗した。
あたしに発言権は許されていない。
「私はこの状況がどういう事かと聞いているのよ」
「いやぁ……これはあたしも状況が掴めていないと言いますか……」
自分からこんなカオスを生み出す訳がない。
「はいっ!」
そこに明璃ちゃんが手を挙げてカットインをしてくる。
「羽金さんは“楪君と相談した結果、この形がベストだという判断に至ってね。申し訳ないけれど詳しい事は話せないんだ”と、わたしに言っていましたよ!」
は、羽金先輩……この混沌の渦のどこがベストなのでしょうか……。
「なるほど……? 楪、どう聞いても貴女が関係しているようだけれど?」
「い、いや、あたしは良かれと思って……」
「へえ……貴女は、私が羽金会長とのリアンに関して思う事があるのを知りながら、その判断が良いと思ったのね?」
「え、あ、いや……」
や、ヤバすぎる。
“羽金麗と小日向明璃”の組み合わせでもお怒りだろうに。
“羽金麗とあたし”になってしまったら火に油でしかない。
しかも、昨日の相談ありきでこの行動をとっていると思われたら、あたしは完全に情緒不安定ムーブをかましている。
千冬さんを煽っていると思われても仕方がない。
「ユズキとハガネが……リアン? 何の話?」
すると、近くにいるルナがその話題に反応。
い、今はカオスだから来たらダメぇ……!
「それ以上でも以下でもないわよ、羽金会長と楪がリアンになると言っているのよっ」
「いえ、そもそも柚稀ちゃんとわたしがリアンになるはずだったんですよっ! それがどうしたらこんな事になるんですかっ!?」
現状を聞いたルナに対し、二人は声を荒げて説明する。
だが、対するルナはかなり冷静な態度だった。
「みんな必死だね、そんなユズキに思いがあるの?」
「なっ……」
「そ、それはですね……」
ルナの一言に、千冬さんと明璃ちゃんが言葉を濁す。
ま、まぁ……確かに、千冬さんと明璃ちゃんにとってあたしは裏切り者と思われても仕方ないのは前提として。
そこまで声を荒立てるような事かと言われたら疑問は残る。
しかも相手はあの羽金先輩だ。そこには間違いなく彼女の意向も絡んでいる。
それでも尚、反抗するって相当な覚悟だとは思うけど……。
「言いたい事があるなら、ちゃんと本人に言うべき」
「だから、こうして私は楪に直接意見を言って……」
「そ、そうですっ。だからわたしも柚稀ちゃんに直接言ってるんですっ!」
反論する二人だが、ルナは全く動じる素振りを見せない。
「リアンの承認はハガネが担当しているのにユズキに聞くの? それって意味ある?」
「「……」」
沈黙。
二人はルナの問いに明確な答えを持っていない。
……いや、と言うより思う事はあるようだがそれを伝えるのを躊躇っているようにも見える。
その奥底にあるものはあたしには分からないが、とにかくルナだけが達観していた。
「もうみんな慌て過ぎ、そもそもユズキが認めているのならその意見は尊重すべき。……だよねユズキ?」
「る、ルナ……!」
何だかよく分からないが、とにかく二人の猛攻から守ってくれた。
その事には素直に感謝したい……!
「うん、だからルナはママにお願いしておくね」
……ん?
「え、なんの話?」
「リアンとか言う意味分かんない制度を廃止にして? って」
優しい微笑みを浮かべながら、学院の根底から覆ようとしているヒロインがいますよ!!
「ななっ、何がどうしたらそうなるのっ!」
「日本は制度や秩序の順守に厳しいから、下手にルール違反はしちゃいけないって聞いた」
「話が見えないよ!?」
「じゃあルールそのものを変えたら誰も文句言えないよね?」
百点満点の笑顔に反比例した黒い発言をするヒロインがいますっ!
「それは生徒の範疇を超えてるし、どうしてそこまでするのかなっ」
「え? ユズキが誰かと一緒に暮らすとかルナ許せないから」
「それにしてもやり過ぎじゃないかなっ!」
あたしに意見を聞いてくれた明璃ちゃんと千冬さんの方がよっぽど譲歩してくれていたっ。
ルナの方が圧倒的にぶっ飛んでいる……!
「と、とにかくですねっ、わたしに理由を教えてくださいっ。どうして羽金さんとリアンになったんですかっ」
「い、いや、むしろ羽金先輩と明璃ちゃんがなるべきだと思ってたんだけど……」
「その意味も分かりませんけど、それがどうして柚稀ちゃんになっているんですかっ!?」
それはあたしも聞きたいのよ、明璃ちゃあああんっ!
「楪、貴女本当は私の事を嘲笑っているのでしょう……?」
「そ、そんな事してませんよっ!?」
千冬さんの黒髪がしな垂れ、暗黒面のオーラが解き放たれている。
こ、怖い……!
「友達アピールの次は、生徒会長からの
「お、おお、思ってませんって!!」
千冬さんがダークサイドに堕ちてしまっているっ。
あたしはこんなにも千冬さんの事を尊敬しているのにっ。
「大丈夫だよユズキ、安心して」
「る、ルナ……?」
あ、安心できるのか……?
聖母のような柔和な笑みをルナは浮かべているけど、あたしは本当に安心していいのか……?
「この学院を無かった事にして二人だけの学院を作るからね。そうしたらリアンなんかいらないもんね?」
やっぱり安心できないぃぃっ。
うおおおおお、知らないよおっ。
あたしはこんなフルリスを知らないよおおおおっ。
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