第7話 手紙

 これはお別れの手紙です。

 このような勝手をどうかお許しください。


 私は病気を患っています。でも皆さんに感染する病気ではないので安心してください。私の膵臓はインスリンという物質を生成できません。インスリン注射をしないと生きていくことができないⅠ型糖尿病という病気です。


 お医者様が言うには自己免疫によって起こるそうです。不便ですけど、注射さえすれば普通に暮らすことができます。でも、この校舎に来たとき肌身離さず持っていた、注射器の入ったポーチを失くしてしまったようです。注射を打たなければ私は意識を失い、1日で死んでしまいます。


 自分がもうすぐ死ぬと分かったとき、不思議な気分になりました。怖くは有りません。なぜなら神様と天国の存在を信じているからです。


 インスリン注射が物珍しいのか、学校の人たちからはバカにされたり、揶揄われたりすることがたくさんありました。注射を打つのも本当は嫌でした。そういったものから解放されると思ったら気持ちが軽くなりました。


 皆さんに黙っていたことを謝ります。ポーチ探しを手伝ってもらうと迷惑になると考えてしまったのです。だからどうか私のことは気にしないでください。これは私が選んだ結末なのです。


 一生懸命育ててくれたお父さんとお母さんには申し訳ないことをしてしまいました。私のことをいつも心配してくれた二人にはとても感謝しています。だからどうか、ここにいる皆さんのことを間違っても責めないようにしてください。 


 私は皆さんが無事に校舎から出られることを祈っております。



 追伸:暴力に堂々と立ち向かった羽川さんのこと、とても尊敬しています。どうかそのままの羽川さんでいてください。


 真壁マリアより

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