中間テスト優秀者順位

 中間試験は当たり前だが終わり、成績優秀者が掲示板に貼り出された。

 学年ごとに、三百名中五十位まで総合成績優秀者の名前がわかる。また科目ごとに上位五名の名前も貼り出される。

 総合順位が低くても何か得意科目があれば名を載せることができるので、それを狙って特定の得意科目に特化して頑張る生徒もいた。

りょう、やっぱりすごいね、六位じゃん」せいは羨ましそうに言った。

 掲示板の前にりょうせいは並んで立っていた。登校時のことだ。

「私、百六十二位。真ん中より少し下。微妙……」珍しくせいはテンションが低かった。

 個人の順位は個人ごとに渡される成績表に載っている。結果が帰ってきた日のせいはいつも憂鬱そうにしていた。

せいは頑張っているよ、俺は知っている」

「慰めになってない」せいは頬を膨らませた。「アルバイトは無理だわ。親の年収と本人の好成績維持が必要なんだもの」

「許可がおりないのか……、じゃあファミレスでバイトしていた……あの子、何て名前の子だっけ?」

「相変わらず人の名前覚えないね、小早川こばやかわさんだよ、りょうのすぐ下にいるじゃん」

 星が指す先――七位に小早川明音こばやかわ あかねの名前があった。

「さすがよね、試験期間中にバイトしていて十位以内に入っているんだもの。頭を分けて欲しいよ」と泣き真似をするせいりょうは呆れた。

「じゃあな」

 遼は星と別れた。星のまわりに彼女の友人たちが集まってきたからだ。


 A組教室に入った。席に着くなり小山内おさないが寄ってきた。「香月かづき君、六位とはすごいね」

「部活もしてないし、本を読むか勉強するくらいしか能がないからな」

「いやいやいやいや、それにしたって十傑入りはすごいよ、ボクなんか三十位以内を維持するのが精一杯」

「それほど差はないだろ」遼は他人の成績は自分の成績以上に興味がない。

「でもさ、このクラス、みんな成績にこだわりがある人ばかりだから、順位表が貼り出されるとしばらくはざわつくよ」

「ざわつく?」

「ほら、一位がH組の星川ほしかわだったじゃん。去年の二学期期末試験、三学期試験に続いて三回連続の一位。A組が一位をとれない事態が三回続いているんだぜ。エリート意識のかたまりみたいなのが多いから大変だよ。これで年間総合順位も星川が一位になろうものなら天変地異が起こったような騒ぎになるよ」

「どうでも良い話だな」アホくさい、という言葉はさすがに飲み込んだ。

「おはよ」と声をかけてきたのは高原和泉たかはら いずみだった。

「おはよう」とすぐに返すのは小山内。遼は遅れて「あ、おはよう」と目を向けた。

 すでに遼は席についていたから高原を横目で見上げるような形になった。

「高原さん、四位だね、さすが」小山内は目を輝かせて称賛した。

「ありがと」高原は誰に対しても笑顔を向ける。「なんとか五位以内に入れたよ。ほんとは東矢とうやさん、神々廻ししばさんに負けたくなかったのだけどね」

「高原さんは学級委員もしているし、部活も掛け持ちして忙しいから、それで四位ならすごいよ」小山内の称賛はまない。

 遼はすでに会話から離れていたが、遼を囲んで二人は話を続けていた。

「A組で十位以内に入ったのは五人か……」高原はチラリと遼を見た。

「A組の面目は保てたのじゃない?」小山内は呑気に言った。

「小山内君も頑張って」

「うん、頑張るよ」小山内は高原に励まされて嬉しそうだった。

 高原は朝の挨拶に忙しく、その場を離れた。

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