今後行きつけになるかもしれないファミレス
店はそれなりに混んでいたが、席は
案内されたのは奥のボックス席で、隣には小さな子供が二人いる家族がいた。
その子供がすでに食事を終えてじっとしているのに飽きている様子だった。
「にぎやかだな」
「だからおしゃべりに良いんじゃない」
星は何でも良いようにとらえた。そして八割方
オーダーはタブレットで行い、二人してハンバーグがメインのランチを注文した。
隣の席の幼児が興味深く遼たちに体を向けてじっと見つめた。それに対して星がにっこり笑い、小さく手を振る。幼児は嬉しそうに笑った。
「いくつ?」
星が訊くと、幼児は指で三つと示した。男の子だ。するとその兄らしき子が席に立ち遼と星を見て「五歳」と言った。弟に遅れをとりたくないらしい。
退屈していた幼い兄弟は星のことを相手をしてもらえる優しいお姉さんと思ったようだ。もちろん間違いではない、と遼は思う。どこへ行っても星のまわりに人は集まる。
やがてランチが運ばれてきた。チェーン店の安価なランチはありふれた見映えだったが、星は「美味しそう」と
遼はランチよりもウエイトレスの方が気になった。「ご注文は以上でしょうか?」とうかがう顔がどことなく驚いているように見えたからだ。
他人に興味がない遼でも人の表情の変化に気を取られることがある。今がまさにそれだった。
遅れて「ありがとう」とウエイトレスを見上げた星が目を見開いた。
「あ、たしかD組の……」
「――小早川です、
「喋るの初めてだよね、こんにちは小早川さん、
星に紹介され、遼は軽く頭を下げた。
「知ってる、A組のイケメン」小早川はにっこりと笑った。
その笑顔は
「ここでバイトしてるの?」遠慮なく星は訊く。
「うん、親が離婚して母子家庭になったからね、自分の小遣いくらい自分で稼ごうかと」
「良いなあ、私もバイトしたいなあ」
「お前、家事できないだろ」遼はつっこみをいれた。
「私だってやればできるよ」星は頬を膨らませた。
「学校に申請してみたら」小早川が言った。
「申請しないと駄目なの?」
「アルバイトは原則禁止だから。何か理由があれば許可はおりるのよ」
「そうなんだ」
呼び出し音が鳴った。「じゃあね」小早川は忙しそうにその場を離れた。
「この近くに住んでるのかな」
「かもな。でもよく気づいたな、しゃべったことのない奴だったんだろ」
「いやいや有名じゃん、可愛いし、頭も良いし、たしか遼とそれほど変わらなかったと思うよ、総合順位」
「ん、そうか……」
「遼は他人に興味がなかったよね、知らなくて当然ね」
小早川とコンタクトする機会はそれ以上なかった。ランチを終えてマンションに戻った二人は再び試験勉強を始めた。
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