第11話 来襲(3)

ユストゥス様は父様に任せよう。なんというか率直に邪魔だし、足手まといだし、うざいし――心配だし……。


この戦いが終わったら慰めてあげよう。楽しく生きることで見返してやろうと、力づけたい。なんなら腹いせに王になるように説得する?それもアリだな。私は王妃は嫌だけど。


「き――貴様、その魔力は何だ⁉王族である私を凌駕する――いや、そんなわけはない!祖竜シェーシャ様の血を引く我らより大きいなど!」

「へへへ~、私はうちの中でも特別に多いんだ。うらやましい?しかもさ、これまだ全力じゃないんだよ?驚いた?」

「あり得ない!」


あり得ないなんて失礼だ。

でも魔力が多くても父様には勝てないし、兄様達にも子ども扱いされているし、母様には勝てる要素がない。ベルヘンケでは半人前だ。魔力があれば良いってもんじゃない。


魔力を解放して、威圧を放つ。怯んだので、背の低さを利用して下から殴ろうとしたら、跳んで避けられた。

ナイフが数本飛んできた。なかなかやるなと魔力で弾く。その中の一本は通り抜け正確に急所を狙ってきた。素手で受け止めると、手が焼けた。真っ青な刃をもつナイフだ。


竜を滅する剣ドラゴンスレイヤー?」

「その手は使い物にならなくなるぞ?」


嘲笑を上げながら敵が魔法で攻撃してきたので、そこは相殺するために魔法を放つ。

その間私の手は、腐っていく。

なんというか顔に似て嫌味ったらしい剣だ。しかも――こんちくしょう。痛いじゃないか!

だがここで痛い顔をしたら敵が調子にのる。父から修行不足だと怒られるし、ユストゥス様を心配させてしまう。


強気な表情を作り、力をいれると、バキッと音を立てて竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーは壊れた。繊細なナイフに見えるのに頑丈だ。この程度で竜を殺せるわけがない。


手が元に戻った。

ふむ、原理はわかった。竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーが体を腐敗させる媒介のようだ。


「お前の剣は壊れたぞ〜。ば〜か」

あっかんべ〜とからかったら、ナイフが数本飛んできた。

あれ?竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーが数本混ざってないか?


竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーは物体じゃない。魔力なんだ。彼の魔力がなくならない限り出現するんだ!」ユストゥス様の助言がとんできた。


「ずるい!羨ましい!」

飛ぶことでナイフを避けて、敵に接近しようとしたが、奴は後ろに再び跳んだ。どうやら接近戦を避けたいようだ。奴が投げたナイフが弧を描いて戻ってきた。物理的な攻撃力と、魔法のような機動力。

避けながら、考える。


これは本当に羨ましい。魔力では弾けない。

武器は持ってない。母に「必要ないでしょ?」と言われてるので、持ち歩いていない。


さてさて、なかなかいやらしい武器だ。どうしよう。さっき手が腐った時、めっちゃ痛かっし、もう二度と味わいたくない――とまではいかないけど、折るのに力を要したのも事実だ。正直、面倒だ。

ユストゥス様の細身の剣もこんな風に――。あ!そうだ!


木の枝に立つ、ユストゥス様と父の元へ降り立つと、驚いた顔をする彼と目が合った。水色の綺麗な瞳に思わず安堵する。


「まったく、リュエナは詰めが甘い」

父が大きく結界を張る。


結界を張ることで、やつの竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーを止まっている。だが侵食するように徐々に刃が刺さっている。急がなくては!


「ユストゥス様!竜を滅する剣ドラゴンスレイヤー貸して!」

「え――そんな……良いのかい?でも君は……」

「いいから!早く!!出して!」


ぐだぐだうるさいな!御託は良いから、はよ寄越せ!誰の為に戦っていると思ってるんだ!


ユストゥス様の手に顕現した竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーをひったくるように奪う。父が結界を解除したと同時に飛んできたナイフを、ユストゥス様の竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーで弾く。


敵の竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーが氷のように砕けて消えた。

やっぱり思ったとおりだ!竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーには竜を滅する剣ドラゴンスレイヤー!私、天才!


「まさか、なぜ⁉︎私の竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーより、ユストゥスの方が強いと言うのか!」


敵は動揺しつつ、次々と竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーを投げてくる。

でも怖くない!私の手にも竜を滅する剣ドラゴンスレイヤー

どんどん切っていくよ!やばい!めちゃくちゃ切れる!しかも軽い!なんて最高な剣だ!これ欲しい‼︎


これでもかと大量に竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーを投げつけてきたので、魔力を付与して一気に横に振る。


やばーい!

衝撃波が走り、木々がスパって切れた!そのまま空に向かった衝撃波は美しい水色だ!

気持ち良い〜!今ならなんでもできそうだ!


「化け物め!」

このやろう、刺客のくせにかわいい私に向かって化け物だと!お前もスパっとキレちゃえ!


身体を両断しようと上から下に竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーを振るうと、小癪にも刺客は避けた。

反す剣で肩から腕を切り落してやった。血が飛び散る。こんな悪党でも血は赤いらしい。


「きさま―準王族の私を――。王族の誰よりも濃い血を持つ私を!」

「濃くても意味ないでしょ?だってあんた王様じゃないもん。だもんね!」

「この――――!!」


どうやら彼の琴線に触れたようだ。

どす黒い魔力がほとばし、腕がずるっと生えて戻る。

「あ――やっぱり人間じゃなくてトカゲなんだ?」

「私を――王族を蜥蜴呼ばわりするだと――――」


刺客の竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーが再び顕現する。だけど少ない。魔力が減っている証拠だ。


こっちの竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーはまだまだやる気に満ちている。


更に私の魔力を付与すると、竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーに光が迸り、悦ぶように刀身が震える。


なんか――気持ち悪いな。この剣。


刺客の竜を滅する剣ドラゴンスレイヤーが上から降って来たので、剣を薙ぐことで弾き、更に破壊する。キラキラ光る礫は青くて綺麗だ。

もう、終わりにしよう――そう思った瞬間、奴の目に濁りが現れた。

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