3話
ついに始まる大学生活はオリエンテーションからスタートをする。講義の取り方や学科・コースの説明といった、そんなものからスタートをすることだろう。
あまりの期待と不安のせいか早めに目が覚めてしまい、定刻の時間よりも随分早く講義室に来てしまった。しかし、時間までは一時間近くあるというのに、数人がすでにぽつぽつと講義室に座っていた。自分と同じような気持ちで来ているのだろうかと思うと少し安心を覚える。
前よりの先に座る勇気はないので、真ん中の列の少し後ろよりの席に座る。こうして大学の講義室にいると前の世界のことを思い出す。途中で投げ出してしまう形になってしまった前の人生だが、あの頃の家族や友人達は今頃何をしているのだろうか。
座った後にそんなことを考え、それとなく講義室の入り口を見ると、見知った顔が入ってくるのがわかった。
入り口から部屋を見渡している彼女と目が合うと、笑顔を浮かべながらこちらに近づいてきた。
「城間くんおはよう!」
「おう、おはよう。」
俺のところまで来て挨拶をしてきたのは高校生の時に三年間同じクラスであった
肩ほどの綺麗な黒髪と、清楚と言える雰囲気を持つ、どこかネコ科動物のような愛らしさを持つ彼女とは、仲の良い友達と言って良いだろう。なにせずっと同じクラスだっのだ。少なくとも、俺は親友と言っても差し支えない友人だと思っている。
「来るのが随分と早いな。」
「今日が楽しみで昨日は早く寝たんだよ。そしたら目が覚めた時間も早くなっちゃった。」
彼女は照れくさそうにそう言う。なるほど、彼女も今日が楽しみだったらしい。
「入学式では驚いたよ。新しい出会いも大事だけど、見知った顔が多いのはこういう時には心強いな。」
「そうだね!私も少し驚いたよ。」
彼女が同じ大学を受験するのは知っていた。しかし、先週の入学式で気づいたが、他にも高校の同級生が多く入学しているようだった。
同じ大学に同級生がいるのはわかる。地元であれば学部に見知った顔がいくらかいるのもまだわかる。しかし、学科やコースにも複数人知り合いがいるのは、割と珍しいのではないだろうか。
「佐久間の友達も多いし、一緒に受験の勉強をしたりしてたのか?」
「やってなかったわけじゃないけど…どうしたの?」
友達と一緒の大学に行こう!と思ってその大学に行けるほど大学受験は簡単ではないし、佐久間を含めた彼女達はそのような雰囲気で受験をするような感じではなかったはずだ。まぁ高校から少し離れてはいるが、地元といってもいい場所ではあるし、気にするほどのことでもないか。
「いや、別に何でもないよ。」
「そう?ならいいけど。」
佐久間は確かに仲の良い友人だが、お互いの中に青春の1ページを刻むような出来事があったわけでない。俺は多少意識したこともあるが特別な間柄ということはない。きっと彼女にとっては俺は数ある友人の一人だろう。
「まぁ、とりあえずまたよろしく頼むよ」
「うん、よろしくね!」
その後、講義室に見知った顔が数人来るのを横目に眺めながら、オリエンテーションが始まるでの間、彼女と他愛も無い会話を楽しんだ。
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