2話

「怜、なにかあったらいつでも連絡をちょうだい。寂しくなったらいつでも帰ってくるのよ」


「わかってるよ、大丈夫。それじゃあいってきます。」


 そう言って俺は、今まで住んできた家を後にした。

 俺に心配そうに声をかけてくれたのは、母である城間ミナトだ。人工受精により授かった俺をずっと一人で育ててくれた。男性の少ないこの世界では、人口受精で子供授かることは珍しくもないし、それによって親が母親だけという家庭も多い。


 他の家と俺の家の明確な違いは、母が男である俺を産んだことだろう。周りからとやかく言われることもあっただろし、好奇の目に晒されたことも想像できる。どんな苦労があったかなんて俺に推しはかることは出来ない。


 そんな中で、母はの普通の子のように俺を育ててくれた。悪いことをすれば叱って、良いことをすれば褒めてくれる。この世界では珍しくそんなふうに育ててくれた。俺の認知が歪まなかったのは母のおかげだろう。

…それでも最初はこの世界に幻想を抱いていたが。


 大学に行って一人暮らしをしたいというわがままも受け入れてくれた。男性の一人暮らしなんて考えれないことだろうが、俺のやりたいことならばと、悲しいと思ったかもしれないが止めることはせずに尊重してくれた。男性枠を使わずに入試に挑み、大学受験に合格したときは随分と喜んでくれた。母には本当に感謝しかない。


 だからというべきか、大学は実家からある程度近いところに決めた。電車で3時間ほど、気軽に帰ることができるとは言い難い距離だが、何かあればいつでも帰ることのできる場所にしたのは、結局俺が親離れ出来ていないだけだろうか。そんなことを考えながら新居を目指した。





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 新居までの移動中に女性に話しかけてもらった、なんてイベントは発生せず何事もなくたどり着いた。いや、これが日常だ。外に出かけてるとき、たまに他の男性が女性に囲まれているのを見たことはあるが、自分にそんな経験はない。もちろん、ちらっと見られることは多いが何かあるわけでない。

 …悲しいことを考えるのはやめよう。今更なにかを期待するだけ無駄というものだ。


 新たな住む場所は、そこまでするか…?という程にセキュリティがしっかりしているマンションなわけだが、これは一人暮らしをする際の母の意向によるものだ。

 男性が普通に一人暮らしをすることなど最早出来ないと言っても良い世界なので、素直に住むしかない。まぁセキュリティがしっかりしているのは悪いことではない。


 夕方に新居に着いたので、あとはもう寝るだけだ。引越しはとっくに済ませてあるので、片付けなどは今やる必要が無いし、他にも特段やることはない。明日から大学生活が始まり、オリエンテーションがあるので早めに寝ておこう。


「二度目の新しい大学生活か…。一度目は途中までだったけどな。」


 明日の準備を済ませた後、新たな生活と環境に対する期待と少しの不安を抱きながら、俺はベッドの上で目を閉じた。







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男女比の具体的な数字が無かったり、ふわっとした表現が多くて申し訳ありせんが、これは設定を決めかねているからです。

決まった後や書き加えたら追記等いたします。

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