第4話 接敵したね?やばいね? side 柊 佳奈

登録者200万人超えDtuber佳奈チャンネルの配信。既に2000人以上が待機していた。

佳奈がこんなにも登録者を伸ばせたのには理由がある、その理由というのが…


「皆さんこんにちは〜。今日は軽く渋谷ダンジョン潜って行きますよ〜」

・こんかな〜

・こんかな!

・親の顔より見た渋谷ダンジョン

・もっと親の顔見ろw

・『コメントは削除されました』

・もう削除されてる…

・セクハラコメはやめろとあれほど…

・てか前回大丈夫だったの?w

・あ〜キノコのやつなw

・あれは放送事故だったww


「いや〜前回はさんざんだったねぇ…まさか腹痛になるキノコが紛れていたなんて…今回はこうは行かないよ!注意していこうねっ!」

・底なし沼

・笑いキノコ

・苦み草

・通常運転だな!

・これだけのやらかしがぽんっと出るのヤバいんだよなぁ…

・この子ほんとにいつか大きなやらかししそう…


「だぁぁぁぁ!!!!うるさいうるさい!今日はちゃんと気を付けるから!じゃあさっそく行くよっ!」

・ほんとに気をつけてな

・体に気を付けるのよ

・困ったら帰ってきて良いからね

・オカンかw

「オカンかっ!!」


そう、このリスナーとの掛け合いと本人の圧倒的なまでのトラブル体質である。

コメントでもあった通り、あるときは底なし沼にハマり、近くの探索者に助けて貰うまで1時間奮闘した、あるときは笑いキノコを誤って食べて、配信終了まで笑い続けていた。

苦み草は本当に配信事故なので割愛しよう。

この体質といじられキャラが多くの人にウケ、佳奈は大人気Dtuberの仲間入りを果たしたのである。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


中層36階。佳奈はそこそこ長いと自負している探索者の経験から、その異変を感じ取っていた。


「うん?なんか今日モンスター多くない?嫌な気配する…」

・そうか?

・言われてみれば

・嫌な気配?

・なんだろ

・またトラブルじゃね?

・またか!佳奈ちゃんそのトラブル体質しまってきなさいって言ったでしょ!

・草

・草w

・トラブル体質ってしまえるんかw


「今日はちゃんとしまってきたもん!多分…押入れに入ってるよ!…ってやば、ゴブリンの群れ来てる…」

・ゴブリンかぁ…

・あいつら謎の臭いするし嫌いだわ〜

・無駄に知恵あるしな〜

・ゴブリン…知恵…💡

・通報した

・『コメントが削除されました』

・また削除されてる…

・こいつブロックした方がいいだろ…


「そんなこと言ってる場合じゃないよ!えーっと魔法…『我焔求む、絶望の象徴となりて顕現せよ!獄炎!!』」

・キタぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

・厨二詠唱!!

・この厨二詠唱にはなんの意味が…

・しっ!本人はかっこいいと思ってるんだから!

・【注意】本人の趣味です。暖かく見守りましょう

・強いから良いんだよ!力 is パワー!

・威力だけは本物だぁ…

・ふっとべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!

・wwwwwwwww

・もう笑うしかねぇよ

・これが上位の魔法使いか

・なのにトラブル体質だからなぁ…

・探索者適正はありませんでしたと…


ちなみに、この厨二詠唱も人気である理由の一つである。中高生にウケる厨二な詠唱から放たれる魔法!年頃の学生が好きな要素が人気となっている。


「あれぇ!?かっこよく倒したのにひどい言われ用!?かっこいいって言いなさいかっこいいって!」

・わーかっこいー(棒)

・ほっぺ膨らませてんのかわいいw

・かわいい〜

・『コメントが削除されました』

・なんでこの流れでセクハラコメなんだよw

・セクハラニキは捕まって、どうぞ


「かわいいって…もういいよ!勝手に先進んじゃ…っっ!?」


その瞬間佳奈が踏んでいた地面から魔法陣が展開される。佳奈はとっさに後退ろうとするが、佳奈が身を引くより魔法陣の展開の方が早く、魔法が発動する。


「…っ!この模様…もしかしてワープ罠!?っ!きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

・罠!?

・ワープ罠じゃね!?

・おいおい飛ぶ位置によっては洒落にならんぞ!

・ヤバい!大丈夫か!


佳奈はハッと目を開く。目の前には中層と変わらない青空が広がっていた。


「っスマホ!今何階!?」


佳奈がスマホを開き階層が分かるアプリを開く、結果は…

【下層52階】

「52階か、とりあえず深層じゃなくて安心だけど…やばいな、今日はガッツリ戦う予定じゃ無かったから装備が…っ!また嫌な気配!」

・52階か良かった

・佳奈ちゃんの実力なら戻れるな

・あ〜装備が

・今日メンテナンスで予備の装備なんだっけ?

・ん?嫌な気配?

・またなんか感じ取ってる…


ゾワり

空気が変わったのを肌で感じた。

後ろに、何かいる。下層の魔物じゃない。そんな存在とは比べものにならない何かが背後で殺気を出している。こんなに近くに接近されるまで気づかなかったのは、背後に来るまで気配をほとんど感じなかったからだろうか。確かに佳奈は何かを感じてはいた。だがその正体がこんな化け物だとは露ほども思っていなかったのだ。死─その言葉が頭をよぎる。後ろを振り向けない。恐怖で足が動かない。だが動かないと死ぬ。

死にたくない。ただそれだけの思いで後ろを振り向いた。そこには…


血に濡れたような紅い髪、まるで鍛え抜かれたボディビルのような、3mをゆうに超える大柄な身体、体の半分はあるであろう棍棒、般若の様な鬼の顔。


オーガの上位種ウワズミが、今にも佳奈の命を奪わんと棍棒を振り上げていた。


瞬間、ぶんっ!と棍棒を振り下ろしてくる。速い。この巨体のどこから出ているのか疑問が残るスピードだ。それを佳奈は、本能に従って避けた。


ドォォォォォォンッッッ!!!


という爆発音に似た音が鳴り響き、体を吹き飛ばすような衝撃波が伝わる。当たっていたら致命傷…で済むかも分からない威力。


「じ、地面が割れた…なんて威力…」


更に運の悪いことに、オーガ種には魔法がすこぶる効きづらい。佳奈の全力の魔法でも倒し切るまで行かないだろう。つまり佳奈が生き残るためには、という、無理難題を達成しなければならない。


「はは、無理ゲー過ぎて笑えてきた。てかよく初撃避けれたな、私。」

(混乱が一周して逆に冷静になってきた。恐らくこのスピードでは逃げ切れない。出来ても他の人に押し付ける形になる。討伐隊は呼んであるっぽいから、私がやるべきは出来るだけ時間を稼いで討伐隊が着くのを待つこと!)

「よし…」

・ヤバいヤバいこれはまじで洒落にならん!

・もう通報したから!すぐ討伐隊くる!

・死なないでぇぇぇぇ!!

・スプラッタ配信とか見たくないよ…

・終わった…流石の佳奈ちゃんでもオーガの上位種ウワズミは無理だ。本気で相性が悪過ぎる…

・ん?なんか佳奈ちゃん覚悟決めてね!?

・まさか…


「私は出来るだけ時間を稼ぎます!コメントも非表示にするね!わんちゃん死ぬけど戦闘データは残るから!死んでも後は頼むよ!」

・いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

・逃げてよぉぉぉぉぉぉ!

・まじか…

・討伐隊くるから!死ぬとか言わないで!

・本当に無理、もう吐きそう

・とりあえず余裕ある奴は渋谷ダンジョンに潜ってる奴に避難するよう警告コメしてこい!今は非常時だからマナー違反とかは多少見逃せ!


「いや〜ガチで死にたくないな〜『我炎求む……」

そうして、佳奈の戦闘時間稼ぎは始まった。



────────────────────

ども!配信者の人が襲われる話のはずなんですけど思ったより長くなっちゃいました!

僕はこんな状況直に逃げて死ぬのがオチですね…冷静な判断出来るようになりたいです…


それではまた

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