第5話 上位種も困惑
「援護するから行って!」
「頼む!」
短いやりとりの後、奏斗はスピードを上げる。見えて来たのはオーガ、普通のものとは見た目が大きく乖離している。すぐさまアレが
グシャッ
と肉を切る音が鳴る。どうやら腕でガードしたようだ。それを見た奏斗は横に飛び、襲われていたであろう女の子の元に行く。
・うぇぇぇぇ!?
・元がAの魔物の上位…S行ってるんじゃね!?
・本格的に怪しくなってきた
・流石の二人も推定Sランクには勝てんて!佳奈ちゃん連れて逃げて!
「大丈夫か!」
「っ!はい!助けてくれてありがとう!でも早く逃げて!こいつはただのオーガじゃなくて
「知ってるよ。俺達も配信してるからな。コメントで
「さっきの刀の腕前、並の実力じゃないことは分かってる。だったら尚更、この場から逃げてSランク相当の探索者を連れてきて!こいつは人外案件!私が囮になれば逃げる時間くらい…」
「それは駄目だ。救える人間がいるのに手を差し伸ばさないのは俺の信念に反する。それに逃げなくても目的は達成してる。ここに人外が二人も居るからな」
「ねぇ〜奏斗ぉ〜!何話し込んでんの〜!さっさと倒さないと〜!」
「てことで、アイツ《オーガ》は俺達に任せて貰おう。あいつの所まで下がっててくれ」
奏斗はそう言って後ろにいる葵を指差した
「………分かった、あなた達に任せる。…絶対死なないで」
佳奈が引いたのは、逃げるとか押し付けるとかそういう訳では断じてない。本当は討伐隊が来るまで耐久してあわよくば生き残れれば良いと思っていた…はずなのに。佳奈は奏斗から任せてと言われたとき、何か異質なオーラを感じた。なんとも形容しがたい、だが表現するとすれば…まともな人間とは思えない殺気と強大な責任感。その2つが混ざったもの…だろうか。
そんな異質なオーラに、気圧された。任せていいと本能が告げていた。
・奏斗君が戦うのか…
・ガチで誰も死なないでくれ!
・耐えれば勝ち!耐えれば勝ちだから!
・俺は奏斗がズバッと両断すると思ってるよ
・流石にハードル上げ過ぎじゃない?ちゃんとそのハードル超えれるか?
奏斗は刀を鞘に収め、オーガに話しかける。
「よぉ、再生は済んだか?ま、そのために話してただんだから、再生してなきゃ期待外れも良いところだけどな。」
煽るように思ったことを口にする。
オーガはグルグルと怒ったような声を上げ、
そのまま棍棒を振り上げ、奏斗を潰さんと襲いかかる。
…が、その瞬間。遠くから矢が飛来し棍棒を持つ手を撃ち抜く。流石にオーガも後ろに飛び退き、矢の飛んできた方向を見る。
ーーーーーーーーーーーーー
「す、凄い…この距離から正確に手を撃ち抜くなんて…しかもあの硬い身体を…」
「まあこの程度なら余裕だね〜ってか佳奈ちゃんだよね!私ちょーファンなの!後でサイン頂戴!!」
「えぇ…もう勝った後のこと考えてる…サインくらいなら全然ケド、逆に命の対価サインで良いの?」
「良いの良いの〜奏斗なら助けに行くのが当然だから!私はそれに付き合ってるだけ、大きな見返りなんて求めてないよ〜」
「ふふっ!じゃあ後でサインだね!了解!」
・なんでこの二人はこんに和んでるんですかねぇ…
・あれ?さっきまで上位種と戦ってたはずなんだけどな…
ーーーーーーーーーーーーー
これにはオーガも困惑していた。俺だってしている。なぜ命を賭けた戦場でこんなにもほんわかした雰囲気が流れているのか。てか葵…お前佳奈チャンネルのファンだったのか、一応後で俺も貰っとこ。
…気を取り直して、オーガの方を向く。オーガもこちらに視線を飛ばし、今にも走り出しそうだ。どうやら葵が既に弓を構えていないのを見て、無視を決め込むようだ。賢い。魔物でも関わりたくないやつは分かるらしい。オーガって意外と知能高いんだな。
グォァァァァァァァァァァァッッッ!!!!
突然オーガが咆哮を放ち、その衝撃が体に伝わる。そして棍棒を再び持ち、地を蹴った。
距離は20mと少し、あのオーガなら数秒で詰めてくるだろう。
その瞬間───
流れ込んでくる。ここからどうすれば良いか。どこを狙えば良いのか。
「…こい」
奏斗は冷静に刀を握る。魔力を全身に巡らせる。オーガが選んだのはただの振り下ろし攻撃。愚策、悪手極まりないワンパターン攻撃に、最も初速の速い居合切りで迎え撃つ。
「我流居合──」
時間の流れが遅く感じる…後一歩。
オーガが間合いに入った…瞬間。
「―──
一閃。風を切る音と地面がえぐれるほどの踏み込みを全員が認識した頃。
既にオーガの頭と胴体が真っ二つに切り裂かれ、オーガは切られたことすら認識出来ないまま一瞬で命の灯火を消した。
ーーーーーーーーーーーーー
「え?」
「わ〜お、奏斗また速くなってる?やっぱ道のりは遠いねぇ…」
「い、一撃…」
・えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
・うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
・すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
・カッケぇぇぇぇぇぇぇぇ!
・エグいエグい!!
・拡散しろ!拡散!
・『我流居合─瞬!!!!』かっこよ過ぎ…
・刀はロマンだよなぁ!!
・笑うしかねぇよ
・なんでこんな強いのに名前知らなかったんだよ…
・今日初配信ってマジ?神回過ぎるだろ
・これはヤバい新人が出て来ました〜w
ーーーーーーーーーーーーー
「ふぅ…結構硬かったな」
「奏斗ぉ〜!」
「おぉ葵、倒せたぞ〜…ってか葵?途中から佳奈…さんと話すのに夢中でこっちのこと忘れてたよな?サインまで頼んで…援護するって話はどこいった?」
「えぇ〜っと〜その〜…………ごめんね☆」
「スマホ没収」
「いやぁぁぁぁ!!待って待って!言い訳…じゃなくて弁明!弁明させて!」
「ほう、よろしい。言ってみなさい」
「え〜とまず!オーガの手を撃ち抜いて時間稼いだじゃん?」
「ふむふむ」
「奏斗が戦ってる間配信を盛り上げてたじゃん?」
「なるほど?」
「佳奈ちゃんのことも守ってたし!…私は奏斗なら一人で大丈夫だと思ってたから何もしなかったの!……以上で私の主張を終わります。…後は私の可愛さに免じて…ねっ?」
バチコンッとあざとくウインクをしてくる葵
これは〜
「ふむ、不問とする」
「やったぁ〜!ありがt「ただし」…………えっ?」
「1週間おやつ抜き」
「なんでぇ!?それは不問とは言わないよ!私の至福を奪おうとするなら奏斗でも許さないよぉぉぉぉ!」
「どんだけ信じてたとしても撃つ準備くらいはしとけ!もしなんかあったらどうする!」
「うぐっ………はい。すいませんでした」
逆らわないほうが面倒なことにならないと悟ったのか突然葵は素直になった。顔はめちゃくちゃ不満そうだが。
奏斗はぶつくさ文句を言ってる葵を無視しつつ、助けた女の子、佳奈に視線を向ける。
「えーっと、悪い、放置しちゃってたな。俺は瀬良奏斗こっちの文句言ってるのが浅月葵。なんか言ってるが無視してくれ」
「あはは、はい。改めて、私は柊佳奈って言います!危ないところを助けて頂きありがとうございます!」
佳奈はぺこりと頭を下げ、感謝の言葉を伝える。改めて見ると、後ろで軽く結んだ青銀髪が透き通っていて美しい。目鼻立ちも整っており、薄い黄色の目は髪の色とマッチしていて、まるで人形のようだ。
「確か有名なDtuberなんだよな?」
「そうだよ。登録者は200万人。」
復活したのか葵が問に答える。
なるほど。これは人気になる訳である。
見た目は儚い感じだが、葵曰く配信では元気な女の子らしい。などと冷静に分析していると。
「あの、今回は巻き込んでしまってすいませんでした!!」
何故か佳奈さんが謝ってきた。本当になんで?
「えーっと…なんで佳奈…さんが謝るの?」
「あ、佳奈で良いです…。えっと…なんて説明したら良いかな。めちゃくちゃ簡単に言うと…私、トラブル体質なんです。生粋の」
「……はい?」
「今まで命に関わるようなことは…ちょっとしか無かったんですけど」
「ちょっとはあったんだ」
「でもこんなことは初めてで…」
奏斗は一人考え込みながら唸る。
(う〜ん…これ、俺が近くにいるからとかじゃないよな?俺の不幸体質と佳奈のトラブル体質が悪魔合体したことでなんかやべーの呼び寄せたとか…いつもはもっと深くに潜ってるから干渉しなかった…と考えると。…あ〜駄目だ、荒唐無稽過ぎる説になんでこんな真剣になってるんだ。偶然だ、偶然。)
一人で唸っている奏斗に、葵が少し引いたように話しかけてくる。
「あの…奏斗?何でそんな唸ってるの?急に黙られて佳奈ちゃんめちゃくちゃ不安そうな顔してるよ?怒らせたかもって顔に書いてある。」
「お〜っと悪い。ちょっと考え込んでた。別に怒ってる訳じゃないから安心してくれ。それより、そろそろ配信にも構ってやらないといけないんじゃないか?」
「「あ」」
・やっと見た〜
・完全に忘れてたなw
・皆お疲れ〜
・討伐やべ〜ww
・トレンド入りおめでとう!
・期待の新星キターーーーーーー!
・最後の何!?
・登録しました!
「あはは、皆ごめんね〜忘れてた」
「奏斗!同接10000人超え!登録者も8000人!凄くない!?初回だよ!?」
「まじか…俺の戦闘がそんなに多くの人に見られてたと思うとちょっとハズいな」
「てかトレンド?ほんとに!」
葵はトレンドという言葉を見つけると、すぐツブヤイターを起動して確認する。
「うわ〜ほんとだ!見て見て奏斗!」
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日本のトレンド
1 奏斗
2 上位種討伐
3 新人
4 居合切り
5 佳奈チャンネル
6 爆裂たこ焼きパーティー
………
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「俺の名前1位かよ、まじでハズい」
「頑張ったんだから当然の権利だよ!」
「うん…もう考えない事にした。とりあえず一旦外に戻ろうぜ、討伐隊が来てるだろうし。」
「そうだね了解〜じゃあ視聴者の皆さん!ここまで見てくれてありがとうございました〜次の配信で会いましょう!ばいば〜い!」
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もうだめぽ。やっと終わった…終わり時分からないよぉ〜びぇぇぇぇぇ!!!(泣)
ふぅ、気を取り直して、ここまで見てくれててありがとうございます!とりあえずここで一章は終わりです!短けぇ〜。こんな趣味でやってる小説見てくれて本当に嬉しいです!
この後は掲示板回を挟んで次章に進みます。
もし見てくれるのならばぜひぜひ楽しんで行って下さい!
それではまた
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