第4話 せいぜいわしを楽しませろ

 この日は、スサノオさんにたっぷりと小言を言ってから修行が始まった。


「今日はスサノオさんと修行ですか?」


「そうだね、でも僕は今君に教えてあげることができない。」


「なんでですか?この前助けてくれたじゃないですか。」


「あれは本来やってはいけないんだ。その結果僕は今罰を喰らっている。」


「罰?」


「そう。神格が使えない。この子が鞘から抜けないんだ、。まあ神の仕事が不自由になるってところだね。」


 この子とはスサノオさんの肩にかかっている大きな剣のことだ。


「大変なんですか?」


「大変だよ、、朝からみんなに仕事を助けてもらっていじられて、、現世にも少なからず影響しちゃうし。」


「まあそんなことは置いておいて、今日はこの人に来てもらった。」


 前から水無月さんと、オモイカネ?さんがやってきた。


「少年よ、此奴はしばらく使い物にならん故我々がきてやった。ほっほっほっ」


「やめてくださいよ、オモイカネさん、。」


「すまんすまん、お前が弱っているとついのぉ」




「オモイカネ様、進めさせていただいてよろしいでしょうか。」


 水無月さんが話をする。




「まずは間宮様に、祈りの力をお教えします。この世界の基本です。」


「祈りの力?昨日言っていた。」


「そうです。我々は、神の子として、災害を止めにいきます。その際に自分を選んでくださった神の力を使用します。それが祈りの力です。」


「そして祈りの力には序列があり、常具・名具・幻具・宝具・神器の5段階で、戦闘により進化していきます。」


 


「そして、今まで神器を持つことができた人は6つの国で100年間たったの10人です。」


「我々の高天原では、現在玲香様が宝具の天之瓊矛を持っております。その他の皆様はそれ以下の階級になります。」


「私の持つこの錫杖は階級では名具となります。」


「まぁまずは出してみましょうか。祈りの仕方はたった一つです。手を合わせて目を瞑るだけ。」


 


「随分簡単なんですね、」


 


「はい。何も難しいことはありません。やってみましょう。念の為私は少し離れさせていただきます。」


 


「わかりました。」


 促されるように手を合わせる。


 (これでいいのかな、)


 


 (お前か、私に力を願ったのは)


 真っ暗な空間で大きな大蛇の目がこっちをみている。


 (はっ、、、はい、、多分)


 (気弱そうなガキだな。スサノオは貴様を選んだのか)


 (スサノオさん、、そうです。僕を選んだと、多分)


 (煮え切らないガキだな。まあ良い。それで貴様は何を望む)


 (望みですか?そうですね、力ですかね、なんか2日後に怪物を倒さないといけないらしく、)


 (舐めてるのか?わしに向かって?野望だ野望。)


 (滅相もないです、、、。野望ですね、、)


  野望などない、


 (死にたくはないです、)


 (つまらんやつだな。死なないために力が欲しいと?)


 (はい、、死にたくはないので、、)


 (まあ良い、あいつの驚く顔さえ見れれば、わしが力をかそう。わしで良いな?)


 (はい。お願いします)


 (では決まりじゃ。目を開ければ、お主の前に剣がある。せいぜいわしを楽しませろ)




 目を開けると、そこには光り輝く剣が。


 早速手にしようとすると、スサノオさんがこっちに走る。




「ダメだ。それだけは柄を握ってはいけない」


 何かを言っているが聞こえない。なぜか声が届かない。


「もう遅かったか。そうか。そうなるのか。これは大変だ。」


「何がですか?スサノオ様」


「大輔、下がるのじゃ。巻き込まれるぞ。これはいかん。」


「オモイカネ様までどうしたというのですか。」




 手が剣に触れて、柄を握ろうとする。


「ダメだ。速太。ダメなんだそれだけは待ってくれ。」


 スサノオさんが何かを叫んでいるが、剣を握った。


 途端に刀身が見えてきた。


 日本というより剣に近い。




「ダメだと言ったのに、あいつめ。僕の子に手を出したな」


「あれはなんですか、オモイカネ様、スサノオ様」


「あれは神器。大輔。貴様も知っておるだろう。」


「名は天叢雲剣。三種の神器の一つである」


「あれが、でも彼は今日祈りの力を知ったばかりなのですよ。神器を出すなんて。」


「本来であればありえないよ。でもこの子が眠っている今。そうなるのか。」




 剣を持つとみんなの声が聞こえるようになった。


「スサノオさん、これが祈りの力ですか?」


「そうだよ、速太。でもね、それは、僕のものではないんだ。」


「えっ、じゃあ誰のですか?」


「とりあえず、姉さんのところに行こう。あの人に怒られないようにしないと。」


「姉さんって?」


「天照大神様だよ。ごめんねオモイカネさん、水無月君。一度あの人のところに行くよ。一緒には、、きてくれないよね。」


「ほっほっほっ、わしゃ嫌じゃ。」


「同じくです。」


「そうだよね、ごめんね速太。早速危険な目に遭うかもしれない、、」


「えっ、、嫌ですよ!」


「大丈夫じゃ少年。スサノオだけじゃおこられるのは。」


「そんなぁ」


「仕方ないじゃろ。貴様の管理不足じゃ。」


「スサノオさん、すみません、、」


「いや、速太のせいじゃないよ。僕が悪いんだ。」


「でも。」


「少年よ。スサノオは怒られるだけで済むが、貴様は業を背よった。あのお方に話を聞き、そして学ぶのじゃ。その力の使い方を」




 そう言われると、スサノオさんに手を引かれて、祭壇の方に向かっていく。


 歩いている間。スサノオさんが怒っているような、焦っているような顔で。




 多分僕はまずいことをしたのだろう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る