第6話 魔女の日曜日
「おはおは〜、
「おは〜、
日曜の今日、アタシは友達の百合の家に来ていた。前々から約束していた、百合の手伝いをするためだ。
黒く艶のある髪のセミロングで、大きな瞳をした童顔の少女。体格はかなり小柄で、百四十センチくらいしかない。ただ、おっぱいだけは大きくて、なんと脅威のFカップ。ぐぬぬ……羨ましい。まぁ要するに、ロリカワ巨乳美少女ってやつだ。おいおい神様、設定盛りすぎじゃないですかね?
ちなみにアタシのメガネも、魔法具だったりする。効果は、付けた人の視力に自動で度を合わせてくれる。しかも、乱視や老眼にも対応可能。おまけに、フレームは曲がらないし、レンズは曇らない傷つかない汚れないの優れものだ。さらにブルーライトカットも付いている。
まさにメガネ人にとっては、最高の一品なのですよ。
「モナもおは〜」
「おはにゃ〜」
次いでにモナも一緒に連れてきた。
留守番させていてもよかったんだけど、今日のことをモナに話したら、着いてきたいって言ったから連れてくることにした。まぁ、何かの役にたつかもしれないしね。猫の手も借りたいってやつだ。
あれ? 意味違うっけ? う〜ん、まぁいいか。
「それで? 今週はどうだったの?」
「うん。今週も最高だったね」
「そりゃよかった」
アタシの毎週日曜のルーティン。プリティでキュアキュアのアニメとスーパーヒーロータイムを見ること。これだけは外せないんだよね。
「まぁいいや。とりあえず、早速始めよっか」
「うん。そうだね」
「あ、モルモットはちゃんと連れてきた?」
「もちろん」
ポケットから小さなボールを取り出して、真ん中にあるボタンを一回押してから、ひょいっと軽く投げる。地面にボールが落ちると、中から猿轡をされ椅子に縛られた、お父さんが出てきた。本日の可愛いモルモットちゃんだ。
「やっぱり、これ便利だねぇ」
「当然。だって私が作ったんだから」
「一応、アタシも協力したでしょ」
「分かってるってば。感謝してるよ」
アタシと百合が協力して作った魔法具の一つだ。名前は捕獲ボール君。
拘束魔法、縮小魔法、保存魔法の三つの魔法をボール状のカプセルに付与してある。
まぁイメージとしては、あの有名なゲームのあれみたいたものだね。使い方もあれとほぼ一緒だ。
五年くらい前に、警察に依頼されて作ったもので、本来の使い道は犯罪者を捕まえるためのもの。一応、警察以外は使用禁止なんだけど、開発者のアタシと百合だけは、特別に使用を許可されている。
「あれ? もう百合のお父さんは?」
「ん? あぁ、あそこ」
「おぉ、気が付かなかった」
工房の隅の方で、椅子に縛られた百合のお父さんが居た。アタシのお父さんとほぼ一緒の格好だ。違いがあるとすれば、猿轡じゃなくて黒い袋を被せられているってことかな。
「相変わらず大人しいね。うちとは大違い」
「まぁ、うちのモルモットは慣れているからね」
「なるほど」
ま、よく付き合わさてるもんね。
うちのお父さんも見習ってほしいもんだ。暴れたり、うーうー唸ってて結構うるさいんだよね。あのくらい諦めがあってもいいのに。
「んで? 今日は何するんだっけ?」
「瞬足シューズだよ」
「あー、警察からの依頼のやつね」
「そそ」
履くだけで、速く走れるようになる魔法具か。足の速い逃走犯を捕まえるために依頼されたとか言ってたな。
「で、一応試作品は出来たんだよね。あとは、高速魔法をかけてほしいんだ」
「それは構わないけど、これだと履いてる人がもたないんじゃない?」
「それは分かってるよ。だから、いくつかの段階を付けてほしいんだ」
「なるほどね。分かった」
「とりあえず、五段階くらいからお願い」
「了解」
百合に言われた通りに靴に魔法をかける。
「んじゃ、実験開始っと。最初はうちのお父さんからでいいか」
百合はそう言って、百合のお父さんに靴を履かせて、椅子の拘束を解く。
「逃げないでね。姫乃、いつも通り場所移動お願い」
「了解。転移、ホワイトルーム」
アタシは転移魔法で、実験室に移動する。
ホワイトルーム。アタシ達がよく使ってる実験室の一つ。辺りは真っ白で何も無い空間。広さはだいたい三キロくらいの空間になってる。ある程度、ド派手なことをしてもビクともしないアタシお手製の場所だ。
「それじゃ、よろしくね」
さてさて、実験開始だね。上手くいくといいけど、どうなることやら。
――――
――
「うん。こんなものかな」
「これは結構いい出来なんじゃない?」
「そうだね。私の中でもかなり上位にくる傑作かも」
最初の構想と大分変えたことで、思った以上の出来になった。
まず、靴自体に高速魔法をかけるのはダメだった。理由としては、靴の耐久性がもたないってのと履いている人間の体がついて来れないからだ。
次に考えたのは、靴の裏に噴射魔法をかけて、地面を蹴った時に、ジェット噴射の要領でスピードを出すというもの。でも、これもダメだった。一歩目はいいんだけど、二歩目の着地が出来なかった。勢いが強すぎて、着地した瞬間に足が折れる。出力を弱めると着地出来なくはないけど、ブレが出て真っ直ぐ走れないっていう欠点が浮かび上がった。それで色々と調整してみたけど、やっぱり上手くいかなかったから、この案はボツ。
そして、次に考えた案が上手くいった。
それは、影を移動するってものだ。
影潜り魔法。この魔法は自分の影に潜ることが出来る。影の中を泳ぐ感じで、息が続く限りどこまでも移動することが出来る。これを靴だけにかければ潜るのは靴だけ。そうすれば息は無限になる。あとは自分の動きたい方向に足を進めれば、それなりのスピードで動けるってわけだ。
「こっからは、百合の腕の見せどころだね」
「私を誰だと思ってるの? 任せてよ」
「期待してる」
アタシが出来るのはここまでだ。今は、靴に魔法をかけているだけ。つまり、これはまだ魔法具ではない。ただの魔法のかかった靴だ。
これを魔法具にするには、影潜り魔法を式にして組み込むという作業がいる。これには、専門的な知識が必要になる。アタシには出来ない作業だ。
「あ、姫乃〜」
「うん?」
「悪いんだけど、モルモット達に治癒魔法かけてあげて」
「分かってる分かってる〜」
傷ついたお父さん達をしっかり治療しないとね。じゃないとほら、次がなくなっちゃうし。
てなわけで、ほい。治癒魔法っと。
「い、生き返った……」
「ほら、だから言ったじゃないですか。意外と何とかなるもんですよって……」
「いや……割と生死をさ迷ったんですけど……」
「そんなことないですよ。今回は、骨折数箇所と打撲、捻挫が少々で済みましたから。比較的軽傷ですよ。入院もしなくて済みそうですし」
「えぇ……。それは感覚がバグってますよ……」
うんうん。二人とも元気そうでなによりだね。
「じゃ、お父さん。もう要は済んだから、帰っていいよ」
「ねぇ姫乃ちゃん? お父さんの扱い酷くない?」
「そんなことないよ。ほら、帰った帰った」
「姫乃ちゃん。お父さんは悲しいよ……」
うん。別にアタシは悲しくないから問題ないね。
「にゃあ、ヒメノ」
「ん? どったの、モナ?」
「にゃんか、親父殿に恨みでもあるのかにゃ?」
「恨みはないよ。ただね」
「んにゃ?」
「アタシとボケナスが許嫁になって、同居することになった日があったじゃん」
「あったにゃ」
「どうやらその日に、ボケナスのお父さんとお祝いだって言って、飲んでたらしいんだよね。許せないよね?」
こっちの気も知らないでさ。呑気に楽しく飲んでいるなんてさ。
これはこれは何かしらの報いを受けなくちゃいけないよね。じゃないとバランスが悪い。
「ま、そういうことだよ」
「にゃ、にゃはは……。にゃるほどにゃ……」
うんうん。モナも納得してくれてなによりだよ。
「姫乃〜。ちょっと休憩してから始めるから、私の部屋に行こう。甘いもの食べたい」
「うん、分かった。ほら、モナも行こ」
「了解にゃ」
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