第3話 友人との会話

「おいっす。総司そうじ!」

「ん? あぁ、かけるか」

「いや、テンション低くね?」


 朝っぱらから、やたらテンションの高いこいつは、高木翔たかぎ かける。俺の友人だ。

 赤髪リーゼントという訳の分からん髪型をした変なやつだ。


「疲れてんだよ」

「あー、もしかして花咲関連?」

「まさしくそれだな」


 あのクソアマと一緒に住むことになって、一週間が経った。結論から言うと、最悪の一言に尽きる。嫌いなやつと同じところに住むってのは、とんでもないストレスだ。もはや拷問と言っても過言じゃないな。


「にしても、まさか総司と花咲が許嫁になるなんてな。しかも、今は同居中とかまじで笑えるわ」

「笑えねぇよ、バカ」

「いやいや、俺らからすれば中々面白い出来事だぜ」

「ちっ」


 他人事だからって面白がってんじゃねぇよ。それもこれも、あのクソ担任が口走ったせいだ。

 流石に高校生同士が同じ家で暮らすってのは、多少問題があるから、母さんとおばさんが学校に報告したらしい。そしたら、あの担任……何をとち狂ったのか知らんが、朝のホームルームで暴露しやがった。まじでありえんだろ。

 ちなみに、俺の体質とクソアマが魔女であることは、学校のやつら全員が知っている。


「つーかさ、前々から気になってたんだけど、何でそんなに花咲のこと嫌ってんだ?」

「何でって、嫌いだから以外の回答はないな」

「いやいや、何か理由くらいはあるだろ」

「ねぇよ。ただ単純に嫌いなんだ」

「意味わかんねぇ」


 と言われてもなぁ。理由らしい理由はないんだよなぁ。


「あーそうだ。あれだ」

「ん?」

「翔。お前、ゴキブリは好きか?」

「いきなりだな。まぁ普通に嫌いだ」

「何でだ?」

「何でって……特にこれといって理由はないかな。まぁ強いて挙げるなら、見た目がキモイから?」

「つまりそういうことだ」

「は?」

「特に理由もなくゴキブリとかを嫌うのと同じように、俺はあのクソアマが嫌いなんだよ。無理矢理理由を挙げるなら、存在がウザイそんな感じだ」

「お前……とんでもないこと言ってる自覚あるか?」


 まぁ、自分でも中々酷いことを言ってるとは思うけど、これが真実なのだから仕方ない。


「まぁいいや。総司と花咲が仲悪いのは今に始まったことじゃないしな」

「まぁな」

「とにかくあれだ。今度遊びに行くからわ。ゲームしようぜ」

「おう」

「んじゃ、俺はホームルーム始まるまで少し寝るわ」

「また徹夜でゲームしてたのか?」

「ま、そんなところだ」


 やれやれ……あいつも毎日毎日よくやるわ。たまには早く寝ればいいのに。あの見た目で、生粋のゲーマーだからなぁ。

 ま、遅刻しないでちゃんと登校してる辺り、まだましな方か。

 つーかこいつ、徹夜でゲームして眠いのにこんなにテンション高いのかよ……。


 ――――

 ――


 学校が終わって帰宅する。今日はクソアマと一言も話すことなく学校を終えることが出来た。うん、実にいいことだ。この調子で、一切関わらなければ最高なんだけどな。

 まぁ、家ではお互いに極力干渉しないが、ルールになってるから大丈夫だろう。

 とりあえず、さっと飯作って、風呂に入って、部屋でゴロゴロするとしよう。


「ソージ。おかえりにゃ」

「ん? おぉ、モナか。ただいま」


 モナ。クソアマの使い魔である黒猫だ。基本的には普通の黒猫なんだけど、特別な魔法がかかっているとかで会話が出来る、ちょっと不思議な黒猫だ。


「ヒメノは一緒じゃないのかにゃ?」

「当たり前だろ」

「にゃははっ! まぁそれもそうにゃ」


 クソアマのことは嫌いだが、モナのことは嫌いじゃない。むしろかなり好きだ。猫だけど友達みたいなもんだ。


「にゃー、ソージ。ワガハイにもご飯作ってくれにゃ」

「別にいいけど、クソアマからもらってんじゃないのか?」

「あんにゃろ、猫缶しか寄越さにゃいのにゃ」

「猫缶じゃだめなのかよ?」


 何か知らんが、最近の猫缶は美味いって聞いたことがあるぞ。実際に食ったことあるやつ見たわけじゃないから知らんけど。


「いや猫缶は別にいいんだにゃ。問題は、ヒメノのやつが、蓋を空けてくれにゃいのにゃ」

「まじで?」

「まじにゃ。そのまま寄越されて終わりにゃ」


 それは流石に酷すぎだろ。どう考えても、モナじゃ空けられないってのは分かるだろ。

 ったく……モナが可哀想だな。


「んじゃ、ここ数日は飯どうしてたんだ?」

「ヒメノが食べてるコンビニ弁当を奪ってたにゃ」

「なるほどな」

「メガネにワガハイの必ず殺す技、猫パンチをくらわせてやったにゃ!」

「わぁ〜お、それは痛そうだな」


 てか、何で必ず殺す技って言っちゃったのかな? 普通に必殺技でよくね?

 それにあのクソ魔女殺せてないっすよ。うざったいくらいピンピンしてるよ。しっかりと仕留めて下さいよ。頼むからさ。


「毎日壮絶な戦いを繰り広げたにゃ! もちろん、ワガハイの勝ちにゃ!」

「そりゃよかったな」


 やれやれ……どうりで、飯時になると毎日毎日、ドタバタと大騒ぎしてたわけだ。あれ、クソうるさかったんだよな。

 でもまぁ、そういう理由なら仕方ないか。悪いのはあのクソアマだし。


「分かったよ。んじゃ、今日からは俺がモナの飯作ってやるよ」

「にゃは〜、ソージありがとうにゃ!」

「何か食いたいものはあるか?」

「ワガハイは何でも食べられるから、ソージにお任せするにゃ」


 何でもねぇ。それが一番困るんだよなぁ。

 ちなみにモナは、ガチで何でも食べられる。普通の猫が食ったらアウトなやつでも大丈夫だ。それも魔法の力なんだとか。まじで魔法って何でもありだな……。


「ん、了解。今から作るから待っててくれ」

「分かったにゃ!」


 ま、とりあえず。今日は急だったし、俺と同じもんでいいか。


 ――――

 ――


「ほれ、出来たぞ」

「にゃは〜、豚のしょうが焼きにゃ!」

「熱いから気をつけろよ」

「大丈夫にゃ。ワガハイは熱いのも平気にゃ」

「そういやそうだったな」


 こいつ、猫なのに猫舌じゃないんだよな。前に熱々のたこ焼きをバクバク食ってったけ。流石にあれにはビビったな。いや、ビビったってよりドン引きした。


「そうにゃ、ソージ」

「うん?」

「体調は大丈夫かにゃ? 見たところ、大分体に魔力が溜まってるにゃ」

「あー……まぁそうだな……」


 確かに結構体が重たい。経験上、この状態を過ぎると、熱を出してぶっ倒れるな。


「そろそろヒメノに、魔力を抜いてもらった方がいいんじゃにゃいかにゃ?」

「……分かってるよ」

「ワガハイからヒメノに言っとくかにゃ?」

「いや、いいよ。自分で言うから」

「そうかにゃ。まぁヒメノも気付いていると思うから、今日か明日辺りにもヒメノから言ってくると思うにゃ」

「そうか」


 まぁどっちにしろ、あいつと顔を合わせなくちゃいけないのか。はぁ……憂鬱だ。


「にゃ、ソージ。気持ちは分かるにゃ、でも大丈夫なことだから、そこはちゃんとした方がいいにゃ」

「分かってるよ」

「分かればいいにゃ」


 やれやれ……猫に諭されるなんてな。まぁモナも俺のこと心配して言ってくれているわけだしな。しゃあない。気は進まないけど、今日の夜にでもお願いするか。


「んにゃ、ご馳走様にゃ」

「あいよ。食器はそのままでいいぞ。あと洗っとくから」

「分かったにゃ。それじゃ、ワガハイは部屋に戻るにゃ」

「おう」


 さてと。んじゃ、さっさと片付けて俺も部屋に戻るとするかな。

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