百三話 いったい何股しろっての?
優親の家から帰った俺は、その夜に電話で栞と話をしていた。舞幸ちゃんと一緒にいたことで起きた出来事を。
だが栞はとくに俺を責めることはなく、むしろ笑っていたくらいだ。
『いやぁ舞幸ちゃんも積極的だねぇ、好透ってばモテモテさん♪』
「からかうなよ。大変だったんだから」
なんと呑気なものだ、彼女はケラケラと笑っている。こっちはヒヤヒヤものだったのに。
まぁ怒られるよりはよっぽど良いけどね。
『今更だけど、なんとなくそんな事になるとは思ってたし驚くほどのことでもないかなって』
「さいですか……」
まぁ、でしょうね……といったところか。
なんだかんだ栞たちは俺を過大評価している節がある。そう考えてましたといわれれば納得だろう。
『まぁいいんじゃない?受け入れてあげればいいじゃん』
「受け入れてって、一体何股させる気だよ」
ただでさえ姉妹と二股しているのだ、そこに舞幸ちゃんまでっていくらなんでもそりゃ軽薄すぎやしないだろうか?確かに舞幸ちゃんはすごくいい子だし俺だって嫌じゃないけどさ……
『うーん五股?』
「あと一人誰だよ」
栞と衣織ちゃんはすでにそうとして、舞幸ちゃんと小春……これで四人、つまり四股だ。
じゃああと一人は一体 誰だというのか?
あんまり心当たりがないのだが……うーん?
『誰って、そりゃ
「なぁんでだよ!」
まったくもって意味が分からない。それはさすがに疾峰への風評被害ではないか。
彼女だって俺とは友人くらいにしか思っていないだろう……と思う。
『え、好透もしかして気付いてない?意外と鈍感?』
「はぁ?」
鈍感なのかも知らないが、それにしたってそもそもの話、疾峰は優親に興味があったのではないか?
だから俺と喋るようになったと認識しているが……え、マジ?
「……マジ?」
『うん、傍から見てたら結構分かるよ』
もはや言葉が出ない。一体俺が何をしたと言うのか?好かれるようなことなど無かったはずだが?
『まぁ好きっていうのは大袈裟だと思うけど、好意の針が振れてると思うなぁ』
「俗に言う気になる人ってヤツか」
『そーともゆー!』
それにしたってマジで心当たりがないぞ。
確かに多少コミュニケーションはあったが、それで好意を持つとなるとさすがに気が多すぎる。
じゃあ何か特別なイベントや出来事があるかといえばそうでも無い。謎だ……
『あはは、余計なこと言っちゃったね。疾峰さんが何も言ってこないなら、とりあえず そっとしとけばいいんじゃないかな?』
「そうだな。わざわざ聞いたりすることでもないか。栞の勘違いであって欲しい気持ちはあるけど」
なにやら考え込んでしまったが、栞の言う通りわざわざ意識することでもないだろう。
この事はさっさと忘れて今まで通りに接しておくのが紳士的だな。
『どっちにしたって五人なのは変わらない気がするけど……と、もう寝るね!おやすみ!』
「おい待て、どういうことだそれ……」
なにやら変なことを言い残して電話を切ってしまった。絶対アイツ楽しんでやがるぞ。
疾峰が俺を好きじゃなくても五人ということは、まだあと一人俺が好きだということになるのだが、マジで心当たりが無さすぎて頭が弾けそうだ。
分からないことをいつまでも考え込んでも仕方ないので、考えるのはやめて寝ることにした。
もう知ーらね!
翌日、特になにがある訳でもなくその日が終わる。まぁ日常ってヤツですよ。
ただ文化祭の出し物が決まった。みんなやる気だったね。
なんとラノベでありがちな物だったが、正直めっちゃテンション上がってる。
でも何をやるのかについては、その日のお楽しみ。
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