百二話 秘密のお部屋

 あれからずっとお兄さんにアピールし続けていたことで、彼はすっかりヘトヘトになっている。

 とても可愛くて、もし良ければ私の部屋で休んで欲しいくらい。


「大丈夫?」


「疲れた」


 ヘトヘトになったお兄さんを見た優親お兄さんが苦笑いで聞いているけど、疲れたみたい。我慢するから。

 キス以上のことは全然できていないけれど、何度もなんども脱ごうと頑張ってみた。止められたけどね

 お兄さんも男なんだから我慢しなくていいのに。


「お兄さんが堕ちるまでやりますからね」


「やめて」


 私は全然物足りないしもっと凄いことをしたいけど、当のお兄さんが受け入れてくれなければ何も出来ない。

 もどかしいなぁ……


「今日は帰るよ、二人ともありがとう」


「いえいえ、こっちこそ来てくれてありがとね」


「ありがとうございますお兄さん」


 挨拶とばかりにお兄さんに抱き着くけど、なんだかんだ嫌がらないお兄さんが凄く可愛い。大好き♪



 そうして帰ってしまったお兄さんを見送って、優親お兄さんと私の二人きりになった。

 私たちは揃いも揃ってお兄さんが大好きだ。


「やっぱり好透はガードが堅いでしょ」


「本当ですよ。あれだけ迫ってもダメみたいで脱がせようとしてもガードされちゃいました」


 まぁ誰彼構わず欲を撒き散らす男よりはずっといいけどね。でも私は欲張りだから、好きな人には欲をぶつけて欲しいとも、ぶつけたいとも思う。難しいね。


「まぁやっぱり長名さん姉妹があまりに強すぎるから、仕方ないんじゃないかな」


 そういえば小春さんもお兄さんが好きだったっけ。あの人もかなり美人だったし、栞お姉さんに衣織ちゃんにまで好かれていることを考えると、やっぱりお兄さんはすごい人なんだね。



 そんなやり取りをして暫く、私は自分の部屋でスマホを開いて、そのトークルームにメッセージを送った。


" お兄さん帰りました、キスまでしか出来ませんでしたガード堅すぎです "


" ちょっとまってまゆきちゃんキスしたの? "


 私のメッセージに衣織ちゃんが反応してくる。

 このルームには他にも人がいるけど、まだ既読にもなっていない。


" うん、でも脱いでくれなかった。お兄さんあんなにエッチなのに真面目だね "


" うーんこれはお説教案件 "


 衣織ちゃんとメッセージを打ち合っていると、既読の数字が増える。


" 好透は私と衣織の彼氏だからね。舞幸ちゃんも小春もそう簡単にはヤれないよ? "


" ウチももっとグイグイ行こうかな "


 皆で思い思いにお兄さんへの想いを綴る。

 好きだったり手を出したがったり、そう簡単にはいかないと色々。

 お兄さんは知らないけど、とっくの前にやっている事は共有しているので、お兄さんが浮気だと怒られることは無いと思う。


 というか私達が勝手に手を出してお兄さんが怒られるのはさすがに可哀想なので、こうしてお互いにしていることを共有しているのだ。


" まぁ小春も舞幸ちゃんも頑張ってね。好透はそこまで軽い男じゃないから "


" なんか余裕そうでムカつくー "


" これが強者の余裕ってやつですかうらやまです "


 栞お姉さんは寛大みたいなセリフを送ってくるけど、その本質は満ち満ちた自信から来るものであることを皆が知っている。

 それは衣織ちゃんもそう、お兄さんの彼女だからこそ、その隣を確固たるものとしている。


 その二人の場所を奪おうとは思わないけれど、せめてセフレにはさせて欲しいな。

 エッチくらいしたっていいでしょ!とは思うけど、お兄さんって我慢強いからなかなか上手くいかない。


" セフレくらいにはしてもいいよって好透くんに言っといてよ栞 "


" やだー "


 小春さんのアレなお願いも栞お姉さんに一蹴されている。普通に当たり前だね。

 でも、難しいから燃えるというのはある。


 なんだかんだと言いつつも、お兄さんってば絶対に突き放したりしないもん。期待しちゃうよ。

 もちろんそれは優しいだけじゃなくて、ちょっとくらいはよこしまな気持ちもあると思う。そうじゃなきゃ自信なくしちゃう。


 だから、それを利用してお兄さんの膝の上に座ったしキスもした。もっと先はダメだったけど、いつかはスポーツ的な意味合いでもそういう事をしたい。


 今はそれが、ちょっとしたお願いかな。

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