百一話 困ったものだ
今彼女は膝の上に座っており、ギュッと抱き着いてきている。
俺が困惑している間にあれよあれよとこうなっており、栞を連れてくれば良かったと少々後悔している。
「んふふ♪お兄さん大好きです♪」
フニフニと柔らかいものが押し付けられており、結構ヤバい状態だ。なんとか引き剥がしたいが、抱きつかれているためどうにもならない。
割と強めの力で抱きつかれており、そう易々とは離せない。どーしよー?
「好きでいてくれるのは凄く嬉しいんだけど、なんでそんなに……?」
まるで独りごちるように、俺は言ってしまった。無意識である。
「前にお兄さんが助けてくれたからですよ♪」
「それは知ってるけどさ」
助けたというのは、俺たちが知り合う以前のこと。病弱だった舞幸ちゃんが俺の目の前で倒れ、すぐに救急車を呼んだ事で一命を取り留めたという話だ。
フラフラと道の端にうずくまり、ゆっくりと倒れた彼女を仰向けにして肩を叩き呼びかけて、何とか返事はしたもののそれも力無く、今にも意識を失いそうだった。
このままではいけないと俺はすぐにスマホを取り出して救急車を呼んだわけだが、どうやらその時に俺の事を見て、ずっと覚えていたらしい。
それが助けたということなのだが、とはいえ感謝されるのは分かるが、ここまで好かれるというのも分からん。
舞幸ちゃんだってそんなに他人に触れる性格じゃないというのは彼女のクラスメイトである衣織ちゃんからも聞いている。
つまるところ、その好きとはかなり特別なものであることは明白だが、既に二人相手のいる俺にとっては困る話なのだ。
そこまでの甲斐性など俺には無い。
「もちろん、助けられたのは大きいですけど、やっぱりお兄さんの雰囲気がやっぱり好きで……えへへ♪」
「そっか」
雰囲気ねぇ……俺のソレってそんなに良いもんなの?自分じゃわからん。
もっとヘラヘラしてたら良いのだろうか?
「そういうことなら、グイグイ行ってもいいんだな?ほら脱げよ」
「はい♪」
「待って待ってごめんなさい冗談です嘘なんです!」
ドン引きされる為に言ったのだが、舞幸ちゃんは喜んで服に手を掛けた。
さすがに予想してなかったのでその手を握って全力で止めたのだが、マジで勘弁してほしい。
「いいんですよお兄さん。私分かってますからね、女の子の身体大好きでしょ?」
「間違ってないけどさぁ!」
ペロリと舌なめずりをしている舞幸ちゃんはとても妖艶だった。ちょっとブラが見えてます水色です可愛いですね。
「私にその欲をぶつけてもいいんですよ!衣織ちゃんだけじゃなく私にも!初めて貰ってくださいお兄さん!」
「ひいい!」
変にグイグイしてしまったせいで彼女の火を完全に付けてしまったようだ。かなり後悔している。呼吸は荒く、頬も赤い。
膝の上に座っている彼女は腰をくねらせ、それはまるで誘惑のようだ。乗ってしまいそう。
「もうお兄さんったら真面目すぎます!」
「そうは言ったって……んむっ!」
抵抗を続ける俺に痺れを切らした舞幸ちゃんは俺の唇を塞いできた。
ねぶるように唇を少しだけ撫でてくる。
「……っぷは!えへへ、私のファーストキス……どうでした?」
離した唇から糸を引き、とてもエッチだった。
これはヤバい……飲まれてしまう。
「いやあの、凄く良かった……じゃなくてさ」
あまりにも唐突すぎる。こんなことになるなんて思わなくて、完全に固まってしまった。
どう反応せぇっちゅうねん。
「んふふ♪お兄さん顔赤いですよ♪」
「そっちだって赤いよ……っていうか栞になんて言えばいいんだ……」
「衣織ちゃんでよければ一言断り入れてますよ。まぁ返事はありませんでしたけど」
「ダメだろ」
まさかの事実である。というか話はしてあるんかい。
ということは間違いなく栞にも話は行っている。とはいえ俺からも言っとかないと……
「恋は競走です。私は引く気ないですからね!」
「なんてこった」
とんでもない決意を聞かされてしまった。かわいい女の子に迫られるのは嬉しいが、それでも困るものは困るのだ!
どうすればいいんですかー!
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